表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/15

003 僕は独り

普段観る事も無い、昼間のTVに飽き…、

「点滴のチュウブが邪魔だな」と思いながら僕は、

携帯電話に手を伸ばした……。これは、個室を使っている特権だ!

病室の中でも、個室だけは携帯の利用がある程度は許されている。

って、事で…僕は携帯を…、

スマホを包帯の巻かれた動かしにくい手で持ち直し…、

面白そうな、遊べそうなアプリがないか?と物色した……。


暫くして、

点滴に繋がった輸液ポンプの黄緑色の点滅を横目に、溜息が零れ出す。

『つまんねぇ~』色々あってでの…1週間程度の入院3日目…、

僕は、本気で病院が嫌いになった……。


『看護婦さん…ナースキャップしてねぇ~し…、

それ以前に、TVとかみたくなナース服じゃねぇ~んだよなぁ……。』

心の底から湧きあがる無念さが、呟きとなって零れてしまう。


実質「看護師」が定着した「この御時世」。


昔、存在していたナースってヤツは…、

医院長の趣味嗜好が出せる「個人経営の小さな病院」と、

漫画・アニメ・ドラマ…後、

18禁の世界に生き残ってくれているくらいだったりする……。

もしかしたら…僕等の思い描くナースは、

その内…、「雇用の分野における男女の均等な機会、

及び待遇の確保等に関する法律」の煽りを受けて、

「絶滅危惧種になるかもしれない」と、僕は危惧していたりする。


取敢えず今日、何度目かの溜息を吐いた所で…、

携帯に乾電池使用の充電器を接続し、部屋を見回した……。

TVカードを使って…、

24時間150円で使える冷蔵庫の中には飲みかけのコーラがあった筈だが…、

今、飲みたい気分じゃない……。

平日の午後、おやつ時…TVの番組は面白くない……。

荷物を入れて置く為のロッカーの中には…、

着替えくらいしか入っていない……。


『携帯ゲーム機が使用禁止なのが痛いなぁ…』

僕の携帯ゲームは既に、

看護師達からの注意を幾度か受けて、没収されてしまった後だった。


「入院のご案内」に記載された諸規則、「電化製品持ち込み原則禁止」。

本当は入院患者の携帯も禁止らしいってヤツの為に、

持ち込んだ「ゲーム機&ノートパソコン」は、

着払いで自宅に送り返される運命を辿る事となっていた。

個室にコンセントは沢山あるが…、

患者が勝手に使用してはイケナイって事での処置らしい……。


まぁ…、最近の電化製品は、電気食うから乾電池じゃ長持ちしないし…、

内臓バッテリーも…、コンセントで充電できなきゃ意味を成さない……。

違反者続出での、この処置は仕方が無いのかもしれないが…、

『暇すぎて、脳が腐りだしそうだ…』

枕の下に携帯と充電器を隠し…僕は、財布片手に病室を出た……。

病院内には医療売店、コンビニと喫茶店、理容店くらいしかないが…、

病室に居るよりは暇がつぶせるのだ……。


病棟を出る時に声を掛けて行きさえすれば、

ある程度の時間、病院内での御出掛けが許されている。

僕は名前だけが残った「ナースステーション」に立ち寄り。

看護師のおねぇさんに声を掛け、病棟を後にした。


僕は誰かの御見舞に来たのであろう、学生さん達を横目に、

出入り口近くにあるエレベーターのボタンを押して来るのを暫し待つ。

「僕にも誰か見舞いに来てくれねぇかなぁ~」

不意に浮かんだ「顔」と「孤独」な感情に顔を顰め…頭を振る……。

「いやいや、来たら来たで…絶望の淵に突き落とされるだけだな」

思い浮かんでしまった入院する原因を作った「大切だった者達」、

それ等を頭の中から追い出し、

僕は到着したエレベーターに乗り込み1階のボタンを押した。


視界の端に…、病院が貸し出す「水色のパジャマ」を着た少女が、

病棟から出てくるのが見えた……。

閉まりゆく扉の向こうで、少女は嬉しそうに笑い友人等と騒いでいる。

「羨ましいな…」僕はエレベーターの壁に寄りかかり、

点滴スタンドに映る自分の姿を目にした。

そして、母親が持ってきた趣味の悪いパジャマ姿に絶望する。

『もう、ヤダ!これ!!早く家に帰りてぇ…』

僕は一人、人知れず涙が滲んだのだった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ