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嘘つきルージュ  作者: 月影輝
3/9

そんな弱気な直子が、何故いきなりこんなブティックに入ろうとしているのか。


それは、10日前に亜希子に連れられて行ったパーティーやせいだった。


直子は、亜希子に誘われた時、一旦断ってしまった。


「何言ってんの。この間も断ったじゃないの。『次は行くから。』って言ったよね?」

「でも…」


どうせ壁の華にしかならないから、行っても楽しめない。


「ダーメ。引きずってでも行くからね。あなたもうちに閉じ籠ってばかりいないで、外に出て、彼氏でも作って遊びなさいよ」


直子は、高校を卒業して家業のコンビニの手伝いをしている。姉と妹の三姉妹なので、いずれどちらかが家業を継ぐのだろうと思ってたし、それなりの歳になれば、両親が縁談を持ってきて、その人と結婚するのだろう。


だからという訳ではないが、直子は何かにつけて受け身であった。恋と言える程の恋をしたこともない。クラスメイトが、次々と恋人を作って、楽しげに話す様を、彼女はただ黙って聞くだけだった。


羨ましいと思わなかった訳ではない。けれど、直子は自分とは別世界の事ではないか、と友人達の話を聞く度に思った。


「私も最初はそうだったけど、そんなことない。私だって、こんなに幸せになれるんだって思ったわ。」


一人の友人が、顔を赤くしながら力説したが、直子にはピンとこなかった。


二十歳になった今でも、それは変わらなかった。テレビや小説の名かで繰り広げられる恋の世界とは無縁の生活を、淡々と続けていた。


せめて、可愛い奥さんになれればいいという小さい頃からの夢ぐらいは叶ってくれればいいなぁと思っているのだがーこういう事を考えている内は、まだまだ子供ではないか、と自分でも感じていた。


高校時代からの親友である亜希子は、そんな彼女を心配して、いろいろと連れ出そうと誘ってくれたが、なかなか直子は出ていかなかった。彼女が、連れていってくれるようなところでは、自分が浮いているのがわかる。疲れてしまうので、つい家にいて本を読んだり、音楽を聴いたり、DVDを観たりする方を選んでしまう。


だから、互いの家を行き来して他愛のたいお喋りをする方が、直子は好きだった。


亜希子も、大学の友人達と一緒にいるより、直子と一緒にいる方が落ち着くらしい。美人で服や男あしらいも洗練された亜希子と直子では正反対だったが、何故か気が合うのだ。


その亜希子に「どうしても、今回は行ってもらうわよっ!」と半ば脅すように言われれば、直子も断る事は出来ず、渋々頷くが、


「でも、パーティーに着ていく服がないわよ」


と言った。


「じゃ、私の貸してあげるわ」


淡いピンクに白いレースの可愛い襟の付いたドレスとアクセサリーを借りて、直子は亜希子と一緒にパーティーに出た。亜希子は、薄紫のパンツスーツで、ピシッと決めている。


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