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第6話「スーパーボールの幽霊〜復讐の宴〜」

 カレンダー上の日付が一日変わった月曜日の午前二時。泉川学園の校舎前に二人分の人影があった。

 一人は鏡夜。何故か学校指定の紺のブレザーを着用している。

 もう一人は桜香。こちらは特殊部隊が着るような黒い服を着ていた。

 鏡夜は手ぶら。桜香は軍人が使っているような迷彩柄のバックを右肩から提げていた。

 おおよそ女の子には似つかわしくないごついバックである。

 中にはノートパソコンや一通りの工具。それに桜香の部屋に展示されていた物騒な物が詰め込まれていた。

 本当に特殊部隊員かと思わせる。

「で? 学校に来てどうすんの?」

「中には入れる場所がないか見て来て。わたしは別にすることあるから」

 暗闇に浮かぶ白い校舎を見上げていた鏡夜は桜香に視線を移し、頷く。

 言われた通りに小走りで学校の裏手に回り、窓ガラスの鍵が開いている場所を探す。

 念の為、裏口のドアの鍵が開いていないかも確認した。

 裏側からぐるっと一周して元の位置に戻って来たが鍵が開いている場所はなかった。やはり施錠は完全らしい。

「ん?」

 ふと空を仰ぐように見上げると校舎の四階から明かりがが漏れているのが見えた。恐らく懐中電灯だと思う。

「ぐぇ!?」

 いきなりブレザーの襟を掴まれ、木の影に連れ込まれる。

 喉が圧迫され苦しそうに顔を歪める鏡夜はその苦しみから解放されると同時に激しく咳込む。

「い、いきなり何すんだよ……!?」

 首元を手で摩りながら鏡夜は乱暴に連れ込んだ張本人。桜香を睨み付ける。

「学校の中に人が居る」

「……はぁ」

 真剣な表情で木影から校舎の様子を伺っている桜香を見ていると怒る気力も無くなってしまう。

「何で解るんだ? さっきの明かり?」

「それもあるけど。わたしの前に誰かが警備システムを切ったみたいなのよね」

 理解出来ない話になりそうなので鏡夜はそれ以上の追求をしなかった。

 代わりにこれからの予定を確かめる。

「正面玄関から校内に入る。さっき確認したら鍵が開いていたわよ」

「了解〜」

 軽い返事をしてから鏡夜は立ち上がり桜香の後ろに控える。

 桜香の髪からシャンプーの良い香りがして、意味もなくドキドキしていた。

 校舎の中の様子を伺っていた桜香は右手をさっと上げた。鏡夜はそれが合図だと感じ取り、一呼吸分の間を置いて、木影から飛び出す。

 鏡夜はほぼ全力で走り先に正面玄関にたどり着きドアを押し開ける、桜香も少し遅れて校内に飛び込む。

「はぁはぁ……どうして走ったんだ? しかも全力で」

 軽く息を整え下駄箱から上履きを取り出す。

「校舎の中にいる奴らに気付かれない為よ」

 何でもこういう場合は敵に存在を知られると不利になるらしい。

 話が解らない鏡夜は曖昧な返事をし、解ったふりをして先に歩き出した桜香に追い付き横に並んで歩く。

「さっきの明かりって、警備員の人だっだんじゃないか? 今、思ったんだけど」

「夜の学校を警備員が巡回するなんて都市伝説。実際は警備システムが取り付けられているだけ」

 懐中電灯で前方を照らしながら桜香がすらすら言う。

 気のない返事をしたが内心で鏡夜は感心していた。

 桜香は色々な雑学をよく知っているようだ。普通に生きる分にはあまり役に立ちそうもない知識ばかりだが。

「まぁ。わたしが勝手にそう思ってるだけだから、真実は解らないけど」

 やけに自信満々だと思ったらただの想像かよ!? 

 と鏡夜は突っ込みたかったし、言おうとしたのだが、鏡夜が声を発するよりも早く桜香の白い手が伸び鏡夜は口を塞がれる。

「ふぉ、ふぅんふふん!?(何、すんの!?)」

「静かに……何かが床を打つ音が聞こえる」

「ふふん?(なに?)」

 耳を澄まして前方の音を聞き取ることに集中した鏡夜にも確かに桜香が言った音が聞こえた。

 小さい何かが床を打つ音が反響しながら近付いて来ている。

 人の足音なのかもしれない。

 ゆっくりと桜香が空いている左手で左腰からハンドガンを引き抜く。

 無論エアガンだ。が。改造を施しているから威力は市販の物の三倍と桜香が嬉しそうに言っていたのを鏡夜は思い出す。

 そんな物騒な代物で撃たれたらかなり痛いに違いない。

 この瞬間から鏡夜は桜香には逆らわないでおこうと決めたのであった。

 鏡夜が考え事をしていても時間は進む訳で、物音の正体が暗闇の中から姿を現す。

「……ふご?(……あれ?)」

 予想もしていなかったそれの出現に鏡夜は目を丸くする。

「スーパーボール?」

 鏡夜に続いて桜香も疑問の声を出す。

 二人の反応は至極当然だろう。夜の学校の廊下をスーパーボールが跳ねて来たのだから普通ではない。

 赤いスーパーボールを桜香は右手で掴む。

 鏡夜はようやく口が自由になり二、三回ほど口を大きく開けたり閉じたりしていた。

「聞いたことがあるわ」

 やけに重々しい口取りで言った桜香に一抹の不安を鏡夜は感じた。

 一体、何を口走るつもりだろう。

「……何を?」

「スーパーボールの霊の話を」

「はい?」

 神妙な面持ちでスーパーボールを床に打ち付けながら桜香は語り出す。

 二十年前。文化祭を二日後に控えたある日のこと、一人の男子生徒が四階から転落するという事件があった。

 目撃者の話によるとその男子生徒は準備をサボりスーパーボールで遊んでいた。

 その態度に腹を立てた同じクラスの女子生徒がスーパーボールを取り上げて窓の外に放り投げた。多分、女子生徒はこれで真面目に作業をすると思ったのだと思う。

 しかし、次の瞬間。誰もが予想をしていなかった行動を男子生徒は取った。

 スーパーボールを取ろうとベランダの手摺りを足の踏み場にして跳んだの。そして……。

「いや、馬鹿だろ? むしろ……馬鹿だろ?」

「……この話にはまだ続きがあるんだから邪魔しないで」

「……はい……」

 そして……。スーパーボールは帰らぬ人となってしまった。

「いやいやいや! スーパーボールは人じゃないし!」

 それ以来、スーパーボールは持ち主を見つけようと夜の校内を徘徊するようになったと言う。

「っていうかスーパーボールが霊なのっ!? 人じゃないのっ!? どうしてボールが霊になるのっ!? ってかなれるの!?」

「あぁもう、いちいちうるさいのよさっきから。まだ続きがあるんだから少しは黙って聞きなさいよ。これで撃ち抜かれたいのっ!?」

 桜香(本性)は素早くハンドガンを鏡夜に向ける。

 アニメで有りがちなちゃき。という擬音が鏡夜の耳に入る。

「……すみません。どうぞ続けて下さい……」

 その反応に満足したのか不機嫌な表情から一変して満足そうな表情をする。

 えっと何処まで話したかしら……あぁ、そうそう。

 男子生徒は文化祭の為に地面に敷かれていたふかふかマットに落下して命は助かった。そして最後に、

「スーパーボール死すとも自由は永久に不滅でごわす。と言い残したことで有名な話よ」

 色々な名言が混ざって既に迷言と化していた。

 カオスと言う他ないわよねと桜香は頷きながら納得している。

 もはや突っ込む気力すらない鏡夜は前に向き直る。

 そして、気がついた。その違和感に。

「ん……?」

「どうしたのよ?」

 どうやら桜香(本性)は猫を被ることを完全に忘れているらしい。

 完全に素の口調で聞き返す。

 鏡夜は何も答えずに指だけを前方に向けた。

 それに釣られて桜香も前を向いた。

 まず。はっ? 何あれ? と言いたそうに目を細める。

 廊下の向こう側から尋常ではない数のスーパーボールが転がりながら向かって来ていた。

 転がるというよりもスーパーボールが川を作っているようにも見えるので流れると言っても過言ではないだろう。

 リノリウムの床が埋めつくされ、軽く千個以上あるんじゃないかと思わせる程だ。

「ちょ……これなによ!?」

 慌てた桜香はスーパーボールを踏んで足を滑らせ転倒してしまう。

「大丈夫かい……?」

 一歩も身動きをせずにやり過ごした鏡夜が横で尻餅をついている桜香に優しく声を掛けた。

「…………っ!」

 返事はないが、身体を震わせていた。無論、泣きそうになり震えているのではない。怒りで身体を震えているのだ。

「…………してやる!」

「……御自由に」

 鏡夜は涼しい顔をしながら窓から外を見る。

 月さえ出ていない真っ暗な闇を見つめながら一言だけ呟いた。

 昔のエロい人もとい偉い人は言いました。予定とは破る為にある。と。 頬を紅く染めながらキッと前を睨み付けた桜香は鞄からアサルトライフル(突撃銃)を取り出し、マガジンを取り付け、セレクターを連射に切り替える。

「スーパーボールで尻餅をつかされるなんて屈辱の極み。千倍にして復讐してやる。鏡夜!!」

「……あい?」

 あまりに凄い剣幕の前にたじろぐ鏡夜に桜香はライフルを投げ渡した。

「協力しなさい」

 ライフルを受け取った鏡夜は桜香と銃とを交互に見つめ苦笑いしながら、

「撃ち方を教えて」

 と言った。

どうも。ラノベな季節も早くも八回目(早くない? 申し訳ありません)え〜。同時連載中の軌跡が絶賛放置中な訳ですが。それはまぁ置いといてですね。今回の話で出てきたハンドガンとライフル及びアサルトライフルは手前からデザートイーグル。P90。M―16となっております。スペックや詳しい説明はまた後ほど。桜香さん辺りにでもしてもらいましょうか。ではでは、八回目もお読み下さりありがとうございました。

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