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第18話「大富豪大会」

 風情ぶち壊しの馬鹿。もとい満面の笑みを浮かべた桜香が机にトランプを叩き付けるように置いた。

「大貧民は大富豪に夕ご飯のおかずを一品献上!! 良いわね!?」

「それだけは嫌」

 マジシャンがやるようにトランプを切りながら桜香が言うが、藍が即答で拒否した。

 気分が悪いせいか藍にしては珍しく刺々しい言い方である。

 それよりも車酔いで気分が悪くてもご飯を大切にする根性は称賛に値する。

「だ〜いじょうぶよっ! 負けなきゃいいんだから。他のみんなはどうっ?」

 一応他の人達の意見を聞く気はあるみたいだ。

「私は構わないぞ?」

 茶菓子を食べ終わったユキナが最初に答える。

「まっ。暇だからな、俺も参加してやるよ」

 移動中に大敗していた光輝も懲りずに乗った。

「……じゃあ、私も参加するよ。うぅ〜ご飯〜」

 こうなると藍も折れざるを得なくなるのだろう。恨めしい声を出しながら参加を決意した。

「後の三人は?」

 取り敢えず聞いてあげる的な口調だった。

「僕もやるよ。面白そうだしね」

 当然のように智希が言い、鏡夜の顔を伺う。

「アキは?」

 何も答えずに副会長は本を閉じ、その行為を参加する。という解釈を桜香はしたらしく、残りは一人と言わんばかりの笑みで鏡夜を見た。

 雰囲気的に参加しなければならないのは鏡夜も解る。しかし、大切なのは周囲に流されない強い意志である。

「だが、こ――――」

「断るなんて言ったら解るわよねぇ?」

 ちらっと物騒な代物を見せる桜香。それは桜色の鞘。護身刀『桜花』である。

 銃刀法違反だろうとか楽しい旅行に何もって来てんだよとか銃刀法違反だろうと突っ込みたい気持ちを抑え桜香の前に鏡夜は頭を深々と下げた。

 どうやら鏡夜もまだ人生を辞めたくはないらしい。

 というか銃刀法違反二回言ってると心の中でツッコミを入れておく。

「すみません。参加させてください」

「よ〜し。おかず争奪大富豪大会開始っ!!」

 という訳で七人でのおかず争奪大富豪大会は開催された。

 鏡夜に配られたトランプは八枚。ジョーカーが一枚あるものの平均で見ると有利とは言えそうもない。

 ジャック。クイーン。キングが無い上にジョーカーを抜かして一番強いのはエースだ。

 3が無駄に三枚もあるし。残りの三枚は8のダイヤ、10のダイヤ、5のダイヤである。

 誰か革命でもしてくれないかな。

 開始前から他力本願な鏡夜は既におかずが奪われるのを覚悟していた。

「ルールは一般的で良いわよね?」

 桜香の言う一般的なルールとは柄縛り、四枚からの階段(階段の際は五枚で革命)。3、4と来れば5以外は出せない階段。後は5飛びに8切りというルールだ。

 ジャンケンで順番を決め、ゲームは開始だ。

 ちなみに副会長、光輝、藍、ユキナ、智希、鏡夜、桜香の順番である。

 一番手の副会長は4のハートを出し、次の光輝は順当に5のスペードを出した。

 藍は順番を飛ばされユキナは6が無いらしくパス。智希が6のハートを出して鏡夜の番になる。

 手札を見た鏡夜の選択肢は、

「パス……」

 しかないだろう。大体7は一枚も無い。

 次の桜香もパスをして副会長に戻る。

 7のハートを副会長が出し全員がパスを選択する。

 一度今までのトランプを横に切り、副会長が3のハートを出したその瞬間、光輝がニヤリと笑った。

「俺のターン! 8切りぃ!」

 意気揚々と流れを断ち切る。

「そして俺のターン! いでよ革命っ!」

 ジャックが三枚にジョーカーが一枚。見事な革命である。

 誰もが予想していなかった事態に副会長を除いて全員がどよめいた。

「イ、イカサマしたんじゃないでしょうね!?」

 桜香でさえも驚きを隠せないようでカードを配った本人が驚愕の声を上げる。

 しかし、鏡夜にとっては今の光輝はとても輝いて見えた。後光が注していると錯覚するほどに。

「更に俺のターン!! リバースカードオープン!」

 光輝が意味もなくゲーム開始と同時に一枚だけ机に伏せていたカードをひっくり返す。

「2のクローパー?」

 光輝の向かい側に座っている藍が言うと光輝は含み笑いをしながら手札から2のダイヤを出し、二枚を同時に出す。

 残りの光輝の手札は一枚。もはや楽勝ムードと言う感じか。

 藍は10のスペード、クローバーを出し次のユキナはペアがないようでパス。続く智希が4のペアを出す。

 さて、まだ一枚も出していない鏡夜の手札は八枚。この場合は三枚ある3を二枚だけ出すしかないだろう。

 いや、待てよ。3を三枚所持している以上、他の奴らはパスをするしかない。ここで無理をしなくても労せず順番はすぐに回ってくる。

 3の二枚を掴み引き抜こうとするが、思い止まり、パスを選択した。

「姉ちゃんは?」

「パスよパスっ! あぁもう、あたしまだ一枚も出していないのよ!? 腹立つわね〜」

 桜香は不機嫌そうに言い、ユキナは出されたトランプを横に寄せる。

「鏡夜さん」

 鏡夜の左隣りに座っている智希は他の者に聞こえないように小声で言った。

「なんだ?」

「革命出来ますか?」

 手札にジョーカと3が三枚ある。出来なくはない。

「できるが?」

「僕と手を組みませんか?」

 意外な申し出に鏡夜は問い返す。

「このまま順当にいくと相田さんが優勝でしょ? 相田さんの手札は残り一枚。恐らく4とか5とか今の状態では強い数字。でも革命をもう一度だけして元に戻せば……解りますよね?」

 悪戯っ子風に言う智希から桜香に視線を移す。

 相変わらず面白くなさそうに拗ねていた。

 変な姉を持つと弟は苦労するなとしみじみ鏡夜は思う。

「姉思いだな」

「いえ。すんなり決まると面白くないですから。少し面白くしようかと」

「……そういうことか」

 別に姉思いでも無かった智希であった。

 遅いと怪しまれると思ったのか智希がジャックを一枚出す。

「で、どうします鏡夜さん?」

「……そうだな〜」

 わざと全員に聞こえるように鏡夜は言った。

 鏡鏡と智希以外の者達に次に出すのを悩んでいると印象づける為だ。

 これで少しの時間は稼げるだろう。

 智希が出したのはジャックのダイヤ。出せるのはジャックより小さい数か。

 ふと手札とジャックを交互に見つめた鏡夜は思わず笑い出したくなってしまう。

「どうした? ニヤけた顔をして?」

 どうやら笑ってしまっていたらしい不審に思ったユキナが怪訝そうに見つめてくる。

「思い出し笑いですよ。ふふっ」

 鏡夜にははっきりと見えた勝利への道。名付けてビクトリーロード(命名鏡夜)が。

「智希君。君、2は何枚ある?」

「……幸運なことに二枚あります」

 とすれば光輝が二枚出したので、2は智希以外は持っていない。

 条件はクリア。これでおかずは安泰だ。

「智希君。協力してもいいが……条件がある」

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