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プロローグ「ラノベな季節!?」

 当然の事ながら明日に何が起こるかは解らないし解るはずもない。

 もし、本当に未来を予知出来る人がいるのなら、きっとその人はつまらない人生を送るに決まっている。

 先が解らないからこそ面白いこと。嬉しい出来事で心から笑えるのだから。

 朝から哲学的な思考をしている少年は天河鏡夜あまかわきょうや。この春に私立、泉川学園いずみがわがくえんに入学した高校一年生。

 制服を着て身支度を済ませると部屋から廊下に出てドアを閉め鍵をかける。

「よっすぃ〜」

「よぉ。おはようさん」

 軽い口調で挨拶をしながら鏡夜の肩を叩いたのは隣の部屋の相田光輝あいだこうき。中学は違うが鏡夜の前の席だからか自然と話すようになっていた。

 光輝と鏡夜は同じ寮生で部屋が隣というのも関係があるかもしれない。

 光輝は何時ものように学校は面倒臭いとぼやき、鏡夜はそれに表面だけで同意する。

 結局、人付合いなんて他人の話に合わせて頷いてでもいればいいのだと鏡夜は思う。

 そうすれば向こうは勝手に気が合うと勘違いして仲良くしようとする。

 相手の考えに合わせるのは鏡夜なりの処世術と言えよう。

 食堂に入り最初に目についたのは朝から馬鹿みたいな量を平らげている女子生徒の姿だった。

「一年五組の谷原藍たにはらあい。愛らしい童顔と破壊力満点の豊満なバストを持ち、無邪気な笑顔で男子の心をガッチリ掴んでる」

 頼んでもいないのに鏡夜の隣で光輝が女子生徒について解説を行い始める。

 というかよくもまあ知っているものだ。

 ある意味関心できる事だ。あくまである意味。

「よく知ってるな。入学してからまだ二ヶ月だろうに」

「ふっ。俺にかかればこれしきの情報……リアルギャルゲーマスターとは俺のことよ。だーはっはっはっ」

 その発言は主人公ではなく主人公の友達が発言する内容だろう。

 何気ない朝の風景をギャルゲー風に置き換えるならこの後に主人公が女子生徒に何の躊躇いもなく話し掛けるだろう。

 ────よく食べるなぁ。

 ────朝はしっかり食べないとね!

 とか何とかのやり取りがあるに違いない。

 しかしながら現実ではありえることではない。

「ほらほら。そんなとこに突っ立ってないで早く朝ご飯食べちゃいな!」

 寮母のおばさんが明らかに鏡夜と光輝に向けて放った言葉に二人はカウンターに歩み寄り朝食が乗ったトレイを受け取り椅子に座る。

「あれはないよなぁ」

 味噌汁を啜りながら光輝が呟く。

「何が?」

 漬け物をポリボリかみ砕き口を覆いながら鏡夜は聞き返す。

「寮母だよ寮母! 普通はもっと美人で若くて気立ての良いお姉さんだろう!? 未亡人とかなったらもうスッタライだっ!」

 スッタライの意味がよく分からないが。

「光輝。現実を見ろ。見ていいのは幻想じゃなくて現実だ」

「くそぅ……イケメンは余裕でいいよなぁ!」

 がつがつと白米を食べる光輝に鏡夜は奇異の視線を向ける。

「なんだよ?」

「いや……俺ってイケメンなのか?」

 うわっ。こいつ天性のアホだと光輝が顔で訴えてくる。

「お前今までに何回告られた?」

 納豆を混ぜながら過去を思い出す。

「小学生の時に一回と中学生の時に一回」

「そんだけ告られてんならモテるってことだろうがぁ! いいか! 俺なんか一回たりとも告られたことなんかないんだぞ!? それをお前はヌケヌケと!!」

 よくもまあそんなに機関銃のように連射が効く舌だ。世間一般的にはそれをよく回る舌と言う。

 納豆を白いホカホカご飯の上にかけながら鏡夜は周りを見渡しながら冷静に口を開く。

「かなり注目を集めているぞ」

 清々しい朝食の場を騒がしくしてしまったことを心の片隅で反省しつつ静かに食べ続けた。

 寮から学校の校舎までは歩いて五分。かなり近いだろう。というか寮があるのは学校の敷地内なのだから近くて当然だ。

 鏡夜も光輝も高校生の伝家の宝刀、置き勉をしている為に二人の鞄はかなり軽い。

 ちなみに置き勉とは教科書やノート。筆記用具など勉強に必要な道具をロッカーや机に置き去りにしている事を指す。現代高校生の実に八十九パーセントは置き勉をしていると言えるだろう。多分。

 窓からグランドが見える校舎の四階に一学年の教室があり、その中の一クラス。一年三組が二人の学び屋である。

 後ろのドアから入り数人の男子生徒とよぉとかやぁとかよっすぃ〜とかおっほほ〜い等のやり取りをして席に座る。

 鏡夜は窓側の席で前から三番目。光輝は鏡夜の一つ前の席だ。

 席に座り二人で話していると鏡夜の後ろの席の男子生徒と光輝の中学時代の知り合いの二人も混ざり四人で談笑する。

 休み時間は大体この四人でいることが多い。所謂仲良しグループだ。

 チャイムと共に担任の教師が教室に入ってくる。朝の短いホームルームが終わると一日の授業が始まる。

 比較的真面目に授業を受けて何の問題もなく順当に昼休みになった。

「うちのクラスで誰が一番可愛いと思う?」

「いきなり何だよ?」

 購買で買ってきたカレーパンの袋を開けようとしていると椅子に身体だけ後ろに向けて鏡夜の方を見ている光輝が尋ねてきた。

「だからさ。誰が一番好みかって聞いてんの」

「光輝から言えば答えてやるよ」

 綺麗に開けるのが面倒になった鏡夜は力任せで袋を引きちぎる。

「俺は佐藤梓さとうあずさだな。ぶっちゃけ良くね?」

 確かに悪くはないと鏡夜も思うが、鏡夜は苦手だった。なんて言うかこう、

「ケバくね?」

 バッサリと一言で切り捨てる。

「じゃあ、天河は誰がいいんだよ?」

「そうだな。箭内……いや、御舩桜香みふねおうか

「御船か〜。まぁその気持ちも解らんでもないがな。うちの高校の制服だと解りづらいが隠れ巨乳にあのお嬢様を思わせる清楚な外見。確かに良いと思うが……いや。天河が良いならそれで良いだろう」

 言いかけた言葉を切って購買で買ってきたカツ丼を頬張る光輝に鏡夜はそれ以上追求はしない。

「そういやさ」

 昼食を食べ終わり、昼休みも残りわずかとなった時に光輝が携帯ゲーム機をいじくりながら聞いて来た。

「何だ?」

「帰りのホームルームでのあれ。今日は天河だろ?」

 あぁそういえば。

 担任教師のアホな発案のせいで始まってしまった帰りのホームルームの時間の拷問の二分。二分間スピーチ。

 内容は何でもいいから二分間喋り続けろという意味の解らないイベントである。

「なぁ、光輝。今日が何の日か解るか?」

「あぁ? 六月二十四日か……あぁ!? そうか!! あの日か!」

 携帯ゲーム機を放り投げて興奮気味に鏡夜に顔をずずいと近づけ、鏡夜は露骨に嫌そうな顔をするのと同時に内心驚いていた。

 まさか光輝が六月二十四日が何の日か知っているとは。少し見直したともいえるだろう。

「今日はKISS★SUMMERの発売日だったぁ!!」

「……えっ?」

 これは予想外だったな。やっぱり光輝は愛すべき馬鹿野郎らしい。

「おい。そこの毎日パラダイスの馬鹿野郎二人」

 このパラダイス野郎とひとくくりにされたくはないのだが。凛とした声の持ち主の方を見るとそこには携帯ゲーム機を左手に右手は腰に当てた御船桜香が立っていた。

 今日は髪の両サイドをリボンでまとめたツインの方かと鏡夜は思う。

「これはどっちの所有物?」

 携帯ゲーム機をひらひら動かしながら上目線で尋ねてきた。

「あ、俺のっす」

 何故か敬語で右手を挙げながら答える光輝。

「そうか。ゲーム機は大事に扱いなさいよ」

「了解っす」

 どうして敬語なのかは解らないが。光輝が受け取ろうとすると桜香は携帯ゲーム機を自分の方に引き寄せ、画面を覗き込む。

「死んだよ。残念だったな」

「あ? あ〜!? 俺の労働時間がぁ〜!?」

 光輝の悲痛な叫びと共にチャイムが鳴り響く。

 午後の授業も比較的真面目に受け、時間は流れ二分間スピーチの時間がやってきた。

「頑張れよ」

 ささやかなエールが光輝から送られるが鏡夜は昨日行われた光輝のスピーチを思い出して笑いそうになる。

 悪い光輝。お前のスピーチは軽く引かれていたぞ。

 クラスメイトの視線を集めながら檀上に立つ。

「え〜。今日が何の日か解る人は挙手」

 例によって勘違いした人物が手を挙げる。

 光輝に遅れてもう一人、桜香も手を挙げた。

「二人か。大多数の人は知らないようですので答えを言いますと」

 鏡夜はわざとらしくためを作った。

「UFOの日」

 二人分の声が重なる。一人は鏡夜。もう一人は桜香。

 教室が軽くざわつき、クラスメイトは鏡夜にどうしてUFOの日なのかを問い掛ける。

 問われた鏡夜はその事実を答えながら桜香を盗み見た。

 桜香は笑顔でその笑顔は自分に向けられているような錯覚を鏡夜は覚えた。

 無事にスピーチが終わり、全員に放課後が訪れる。

「帰って。早くKISS★SUMMERを買いに行こうぜ」

「一人で行けよ」

「ちょっと待った天河君っ!!」

 教室を出ていこうとしていた鏡夜と光輝は立ち止まり教室の中を振り返った。

 声の持ち主は自信に溢れた表情をし、黒い澄んだ双眸で鏡夜を見つめている。

 見つめられた鏡夜は昼休みに光輝から聞いた隠れ巨乳の話を思い出してしまい自然と視線が下がり気味になってしまう。

「天河君。明日暇かしら?」

 明日は土曜日で学校は休みとなれば必然的に鏡夜の答えは、

「暇だ。暇過ぎて死にそうだ」

 となる。

 桜香はリボンで結んだ両サイドのツインテールと長い後ろ髪を揺らしながら鏡夜に近付く。

「明日、わたしに付き合ってよ」

 ずずいと顔を近付けられ、思わずドキドキしてしまう。

 ふと横を見ると光輝が、

「この裏切り者!」

 と眼で訴えていた。

 すまん光輝。俺はタイプの女の子からの誘いを断れるほど満ち足りた生活は送っていない。

 心の中で精一杯の謝罪を鏡夜はした。

「うん。いいよ」

「よかった。じゃあ駅前で九時ね」

「解ったよ」

 明日は何があるのか解らない。本当にその通りだ。

 これから先。もしかしたら桜香と仲良くなれるかもしれない。この時の鏡夜はそう感じていた。

この物語はフィクションです。実際の人物。その他とは関わりがありません。どうも作者です。え〜面白い時間を提供できればと思っています。あ、あと同時連載中の軌跡も宜しくお願いします。

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