プロローグ
本作品ですが、昔からあっためるだけあっためていたネタを書かないままでいたのを突如思い立って勢いで書いています。クオリティには期待ができませんが、勢いでどうにか書いていきたいなーと思ってます(苦笑)温かく見守って頂ければ幸いです。
---西暦2010年(平成22年) 夏 JR小田原駅
「いやぁ、久しぶりだな」
夏の日差しがさんさんと照りつける中、俺は小田原駅前ロータリーに降り立った。
「おっと、偉大な戦国時代の魁に拝礼だ」
小田原駅西口前ロータリーの中央には北条早雲こと伊勢宗瑞(新九郎盛時)の像がある。
実は伊勢宗瑞は自分では北条早雲とは名乗っていない。
息子の氏綱の代から北条を名乗り始めてるんだよな。
ついでに当時は北条ではなく北條と書いたらしい。
そんなことを思い返しながら早雲像にお辞儀をした。
「そうだそうだ、小田原に来たんだから……」
つぶやきつつ、俺は回れ右して駅の方に戻る。
目につくのはパン屋さん。
箱根ベーカリー小田原駅店である。
「やっぱ、小田原に来たら食べておかないとな」
買ったのはご当地メニューの小田原サンド。
海産物の豊富な小田原ならではのアジフライサンドだ。
小田原サンドには洋風と和風の二種類がある。
小田原サンドはカラリと上がったアジフライにウスターソースで味付けした文句無しな鉄板の味付けな洋風版。
梅・紫蘇・ワサビ・海苔とかが入って思いっきり和風ながら意外にパンにあう和風版だ。
毎回どっちを買うか悩むところだが今回は和風にした。
まず、最初に感じるのは爽やかな梅の風味。
続いて紫蘇の香りが口の中に広がってくる。
その後にしっかりしたアジフライの存在感が楽しませてくれる。
揚げ物ではあるものの、あまりそう感じさせないさっぱり感はまさに和風サンドイッチという感じで素晴らしい。
「うん……、美味いっ」
小田原サンドを堪能した俺は小田原の街を歩き今回の旅行のメイン目的の小田原城に向かって歩きだす。
今さらだが、俺の名前は垪和太郎。
三重県四日市市出身の大学生だ。
ちなみに二回生で年齢=彼女いない歴を更新し続けたまま6月にハタチになっちまいました。
絶賛彼女募集中です!……言っててむなしくなってきた。
……やめよう。
昔から日本史、それも戦国時代が好きで色々小説も読んだし城や史跡も行ってきた。
高校の頃に自分の変わった名字のルーツが気になって調べてみたら戦国時代の頃には北条家の家臣で北条家滅亡後には尾張藩に子孫は仕えていたらしい。
そういえば爺ちゃんの頃までは名古屋に住んでて親父の転勤で四日市に移ったとか聞いたな。
それで俺の昔から好きな戦国時代のうちの先祖は北条家の中でもわりと上の方にいたらしい。
中でも一族の垪和氏続って人はあの武田信玄の撃退に成功してるとか。
それを知ってから段々北条家を調べ続けていた。
武田の赤備えは有名だけど、北条家にも白・黒・青・赤・黄で構成された五色備えっていうのがあったらしい。
すごく有名になりえる要素あるのにメジャーじゃないよなあ。
あ、でもその中の黄色担当の北条綱成は地黄八幡としてや河越夜戦の功績で比較的有名かな。
他にも上杉謙信を撃退してる松田康郷なんて人がいるのも知った。
時間に余裕のある大学生になってからはバイトで金稼いで夏前には北条家の本拠地だった小田原に遊びに来た。
初めて来て以来この街と小田原城がめっきり気に入って長期の休みの度に遊びに来てるわけだ。
何回来ても飽きない小田原の街を見物しながら小田原城に向かって歩く。
昔は小田原の街のほとんどの範囲が城壁の内側だったんだよなぁ、なんて考えつつ街を歩く。
カマボコ屋とか土産物屋を通りすぎる。
小田原のカマボコはそのへんのスーパーで売ってるようなのと比べると違う次元の旨さだ。
ご当地名物なんだなと思う。小田原にはかまぼこ博物館があるくらいだし。
そんなことを考えてるうちに小田原城に着く。
敷地内を登っていくと城内部になぜかあるミニ動物園を眺めて更に上へ進む。
天守閣に登る前に茶店、その名も本丸茶屋に寄ってそばを頼む。
ご当地らしく早雲そばである。北條うどんなんてのもある。
とろろ昆布の乗ったそばを食べ終え腹も膨らみ、食後の茶を飲み干すとようやく天守へ向かい出した。
天守閣の入場券を買い場内へと入っていく。
歴史見聞館もあるけど何回か来てるし今回は無しだ。
最上階まで上がり展望台から小田原の街を見降ろす。
ここからの景色が一番好きで毎回展望台まで来ている。
小田原城の展望台からは相模湾が一望できる。
なかなか城の展望台から海が見渡せるようなところは無いよな。
違う側から見れば箱根の山も見える。
あの山を越えて秀吉の大軍団が押し寄せて来たのかと当時を想像してみる。
展望台がここまで絶景な城ってのもなかなか無いと思う。
展望台からの景色を十分に堪能した俺は小田原の街に寄って相模湾の新鮮な海鮮でも食いに行くかねと天守閣の階段を降り始めた。
海鮮が良いか天ぷらが良いかとか考えてたせいだろうか。
……俺は階段を踏み外した。
右足が空を切ったと思ったら一瞬、目の前が真っ暗になり、そこからは覚えてない。