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第9話

どうもノリがよく第9話しあげれました!

珍しく早く仕上げれた感じです。

輝け、栄光の三つ鱗 第9話


---西暦1543年(天文12年))4月 小田原城 


だんだんと気候も温かくなってきた。


現代日本と比べて防寒具の種類が本当に少ないし冬場は本当に辛いんだよな。


ちょびヒゲの多目殿と根来金石斎殿の指導は毎日のようにあるが息がつまるってことで6日に1日は自由時間をもらうことにした。


現代日本の日曜日なイメージだな。


正直にいってウザい親父軍団だけど御蔭でこの時代の常識、北條家のおかれている状況、軍学や陣形といったものはちょっとずつ学んでいっている。


読み書きの練習についてもだ。


現代日本から時代は違えど同じ日本なんだから言葉は問題ねえだろとか余裕かましていたんだがえらい間違いだった。


この時代、全て筆と墨で和紙に書いていかないといけない。


前世で小学校の時に少しだけ習字やったっけかなあーとかいうレベルの俺には想像以上にハードルが高かった……。


いや、まぁ書くのが難しいのはしょうがないよ。


墨多くついて字が伸びちゃったりするし。


予想してなかった問題は、書状や書物が読めねえ。


なんなんだよ、この流麗すぎる文字はまた文字も旧字なのか字が上手すぎるだけなのか下手なだけなのかもまじでわかんねえ。


政治家の書いた書初めかよ!みたいな文字だらけだよ、まじで。


どっかで立ったまま書くとか絶望的だし、利便性も悪いし。


絶対どっかのタイミングで鉛筆開発してやる!


そう、心に強く近いつつもどちらにせよ対外文書なども含めて考えると必須なので頑張って筆で書きとりの練習をする日々だった。


今日は俺の中では休みの日なんだけどね。


なにぶん読み書きのスキルの向上が急務だと思い知って自習中なのである。


なお、今日は休日の自主勉強ということもあり新九郎兄上も一緒に書きとりの練習をしている。


こういう時は何を書きとるのかというと書物の写本作業かなんかお経の写経なんかになるわけだな。


今日のお題は般若心経である。


般若心経って浄土宗系や法華経系では基本的には使われて無いんだよな。


ちなみに北條家では多くの戦国大名同様に臨済宗を保護している。


なんたって初代伊勢早雲公の祭られている早雲寺だって臨済宗だしね。


早雲公に限らず代々の北條家当主は祭られている北條家にとっては非常に大事な寺院である。


般若心経の解釈は多岐に渡るようだけど、俺の理解では世の中ってのはその人によって理解や解釈も違うもんだからものごとにとらわれずに生きなさい。


ただ、悲観するのではなく慈悲の心をもって明るく今日を精一杯生きなさいとそういう解釈をしている。


これは俺の勝手な解釈なんで異論は認める。


というか、人によって解釈が違って当たり前のような経典だからそれはそれで正しいんじゃないかなって思ってる。


懐の深い経典だと思うね。


「松千代丸よ、なにやら先ほどから筆が止まっておるし一人で頷いておるがどうかしたのか?」


おっと、一人で般若心経について考えてうんうんと頷いていたら新九郎兄上から心配そうな目で見られてた。


優しい兄上だからこうだが現代社会ならそれこそ気味悪がられるパターンだよな、気をつけないと。


「いえ、兄上。般若心経を写経していて本当に良いことが書かれているなぁと自分なりに勝手に納得していた次第でございます」


「そうか、当家は菩提寺の早雲寺が臨済宗だからな。般若心経は日用の経として珍重されている。自分なりに解釈しておくのは必要なことだと思うぞ。ただ、今の松千代丸に

必要なのはたくさん写経して文字の書き方や読み方を習っていくことだ。だから考えるのが悪いとは言わないが手は止めないようにな」


優しくも厳しい兄上である。


転球などで遊んでいる時は無邪気な感じは残しているものの爺ちゃんが亡くなってからは必死に長男たろうと努力されている。


非常に立派です。


「はっ、文字の読み書きをしっかりやらねば将来父上や兄上のお役にたてそうにも御座いません。松千代丸、一生懸命に努めまする!」


大変だけど、本当に必須なんで文字の読み書きは必死にやらないとね。


何分、書物すら満足に読めないと娯楽が満足に無い時代だから時間を持て余すこと請け合いだよ。


「うん、松千代丸は賢しいな。今は私もおぬしも目の前の学問に励むしかない。退屈な時もあるだろうが励むしかないぞ」


新九郎兄上はそう言うとまた自分の文机に向かい写経を始めていた。


せっせと写経を続けること半刻ほど(1時間くらい)たった時に部屋の外から声が聞こえてきた。


「失礼致す! 新九郎様、松千代丸様、富永直勝で御座る。お部屋に入らせて頂いてよろしいでしょうか?」


おっと、五色備え・青の富永直勝殿だ。


うちの傅役のちょびヒゲ殿と違い丁寧な御仁だ。


「富永殿、どうぞお入りください」


余計なことを考えている間に兄上が返事をしていた。


「では、失礼致しまする」


律儀に返事をして富永直勝殿が部屋に入ってきた。


相変わらず身体がゴツい!


体格だけ見るとどこのプロレスラーだという富永殿だが、いつもニコニコしていて非常に優しい御仁だ。


なにやら包みを持って来られていた。


「新九郎様、松千代丸様学問に励まれていたところお邪魔いたして申し訳御座いません」


うちの黒の人と違い青の人は実に丁寧である。


いや、黒の人も普段は家中では丁寧らしいが……。


「大丈夫だ、そろそろ休憩しようと思っていた頃合いですしね。それで要件はなんでしょうか?」


新九郎兄上は実に落ち着いた対応をされている。


年上だからか、家督継承者として受けている教育の賜物だろうか?


「いや、そうでござったか。ならば、ちょうどようございました。ここらで菓子でもいかがですかな?今日実は城下にて宇野殿のところを訪れて参ったところ良い手土産を頂 きましてな。せっかくならお二方に召し上がって頂ければと思いまして持参した次第にござる」


そういって富永殿が開いた包みの中にあったものは……



「外郎家の菓子のういろうでござる」


お菓子きました。


え、ういろうって名古屋名物なんじゃねえの?と思いがちだがういろうって菓子は中国から渡ってきた外郎家の人間が薬の製造販売を始めて薬の口直し用に用意したのが最

初になるらしい。


起源で言えば京都の外郎家で、小田原には早雲公の要請で外郎家が分家として小田原に来て北條家の被官として薬の製造販売と振る舞い用の菓子製造を続けている。


だからこの時代に『ういろう』を作っているのは京都と小田原の二か所だけだ。


ちなみに前世の現代日本では京都の外郎家は途中で衰亡して外郎家の一族として残っているのは小田原の外郎家だけになっている。


『薬のういろう』と『お菓子のういろう』を現代でも製造販売しているので機会があれば是非見にいって欲しい。


なお、世間で有名な名古屋の場合は名古屋の有名店が駅の構内でういろう販売開始したのがきっかけで全国的に名古屋名物として広まったみたいだ。


誰に向かって言っているか分からない独白はさておき、ういろうを頂きましょう。


兄上が静かだなと思いきや目をものすっごいキラキラさせてういろうを見ていた。


「……ういろうはほんっとうに久しぶりです!富永殿、我々が頂いて本当によいのですか!?」


ようやく再起動したかと思うと物凄い勢いで富永殿に一瞬で詰め寄っていた。


日頃、蹴鞠や転球の練習に武術稽古とかなり動いている兄上はその成果がこのような形で出ていたみたいだ。


「ええ、その為にお持ちしたのですから皆で頂きましょう。すぐ白湯を用意させますゆえ」


新九郎兄上のテンションにも全く動じず、五色備え・青の富永殿は小姓に段取りをああだこうだと命じていた。


しかし、兄上は食べたことがあるのか『ういろう』……。


この時代で生活を始めてから全くスイーツ的なものを食べてない俺からすると羨ましい限り。


これが嫡男と次男の差か……。


まぁ、生まれた年の差だよね多分。


この後、富永殿から頂いた『ういろう』は松千代丸としての人生で初めて食べる甘味だけあって本当に美味しかったです。


いや、人間食事で感動して涙出るもんなんですね……。


なお『ういろう』を涙流しつつ食べる俺を見た富永殿から、今度外郎家の宇野殿を紹介いたしますよと聞いて新九郎兄上も俺もテンション全開で大喜びでしたよ。




日常パートが続いてますが、このペースで進めてたら初陣とか何話あたりになるんでしょうね?(笑)

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