第9話 俺、ホームで休む
ギルドを出ると既に外は暗くなっていた。
「先ずは、ひと目のない所へ行くか」
俺は人気のない裏路地へ入る。
そこでふと思い出すことがあった。
「ギルドルームの扉は無駄に光るから、悪目立ちするのがなぁ」
俺はインベントリから緑色に輝く大きなエメラルドの様な宝石が付いた金の鍵を取り出し、何もない空間へ向かってキーを回す。すると突如として白い扉の様なものが現れ、俺は中へと入っていく。
この金の鍵はギルドを設立すると強制的に手に入るアイテムであり、ルームキーやホームキーと呼称される必須アイテムのひとつである。
「おかえりなさいませ。ゲイン様」
メイドが俺に頭を垂れ挨拶してくる。
「あ、やっぱホームNPCも機能してるんだ」
このギルドにいるメイド達はNPCであり、一定のコミュニケーションしか取れない。瞳にも生気は感じられず、ただ黙々と自分に与えられた仕事をこなしている。
「それなりにメンバーいたのになぁ。皆ハガセンやってるんだろうなぁ。俺腐っても創設者兼リーダーだったから、大騒ぎになってるのかなぁ」
俺は少し黄昏る。最大で20人程の決して大きくないギルドではあったが、皆廃人と呼ばれる人種であり、一人で1000人近くのハガセンプレイヤーを相手取っても気後れしなかった。そんな仲間達がいたホームも今は俺一人となってしまった。このホームも仲間との大切な思い出の1つであり、ある日無駄に素材が余り、どうせならと無駄に豪華な内装にし皆でどんちゃん騒ぎしながら改造していた記憶が蘇る。
俺は螺旋階段を昇り、適当な部屋に入るとヤルダバオトⅧ式をキャストオフする。
「ネメシス、外格をオールキャストオフしてくれ」
「承知しました。オールキャストオフ開始」
バキャッ! という音と共に全外格が外れ、俺の目の前で再び組み上がっていく。
「ゲイン様、ギルドマスターの依頼のサモナーは元ハガセンプレイヤーである可能性が高いと思われます」
組み上がったヤルダバオトⅧ式からネメシスの声が聞こえてくる。
高性能なAIを積んでいる外格はAIの完全制御により、自律して動いたり会話したりするのだ。
ちなみに今の俺の普段着もしっかりそのままだ。
上半身は白のチュニックに下半身は上質な革の長パン。靴も革でできた茶色の長靴を着用という実に地味な出で立ち。
普通の職業からしたら無課金ユーザーと思われるだろうがこれで良いのだ。眼の前に突っ立っている漆黒のパワードスーツこそ俺の一張羅なのだから。
「ああ、そうだな。俺以外にもやっぱいるんだな、この世界にハガセンプレイヤーが。おまけに人型をサモンしてるときてる。こりゃ、本気でいく必要ありそうだな」
そいつがどの程度ハガセンでやってきたかは知らんが、雑魚ではないのは確かだ。
ハガセンの人型モンスターは皆ユニークと呼称され、強力なモンスターばかりだ。
「おまけに完璧に使役してる臭いな。その女のレベル自体も相当あると見ていいだろう。今日はもう遅い。明日になったらその森へ向かうぞ」
「承知しました。ゲイン様」