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アーマード勇者育成記 最強強化外骨格チートで異世界蹂躙! 男の娘勇者を育てて神をぶっ殺す件  作者: からくり8


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第78話 俺、王女様にお別れの挨拶をする

「さぁて、王様達への挨拶も済ませた。後はあいつ等が何処に居るかだが」


 俺がそう言うと画面下部のミニマップに青い斑点が3つ表示された。


「どうやらアーサー様達は王女の部屋に居るようです」

「王女の自室ね。了解」


 謁見の間を退室した俺は真っ直ぐ王女の部屋へと向かう。無駄に長い廊下や階段を幾つも昇り降りして王女の部屋の前にたどり着いた。

 俺はノックしてから反応を待つ。


「誰です?」

「ゲインです。失礼します」


 俺は王女の返答を待たず、扉を開け部屋の中へ入っていく。

 王女の部屋には王女、アーサー、エル、エスカの他に見覚えのあるメイドがいた。どピンクの髪に前髪が青いメッシュが派手な、俺に退任の儀の場所を教えてくれたあのメイドだ。部屋の隅に陣取り、直立不動で王女を見据えている。


 王女は俺と目が合うと持っていたティーカップを机に置き、早歩きで近づいてきた。


「お父様とお母様を救って頂き感謝の言葉もございません。何から何まで貴方様のおかげです! 本当にありがとうございます!」


 王女は目に涙を溜めながら俺の手を両手で包み込みように握っている。


「いや、良いんすよ。これも従者の務めと言いますか、それよりもちゃんと首飾り付けてくれていますか?」

「首飾りですか? アンドリューから渡された物があります。彼はいつも誕生日の日に必ずプレゼントを私にくれるんです。えっと、ああ! あそこに――」


 王女の指さす方を見ると小さな本棚があり、その上に立てかけるように長細い箱が置いてあった。


「あのネックレスは機甲騎士様が? わたくしてっきりアンドリューがくれたのかと思いましたが」

「俺はアドバイスしただけですよ。そのネックレスは【慈愛の蝶】というネックレスでしてね? 大変面白い効果が幾つも宿ってるんです。ずっと身につけているときっといい事がありますよ」

「本当ですか? では、早速つけさせて頂きます」


 王女は本棚へ近付き箱からネックレスを取り出す。


「王女様、私が」

「ありがとう、エスカ」


 エスカが王女からネックレスを受け取り、王女の後ろへと周り込むとネックレスを首に巻いた。


「エスカ、どうですか?」

「大変お似合いです。王女様」

「ふふふ、ありがとう」


 エスカと王女は向かい合いニッコリ微笑んでいる。


「ちょっといいすかね? 仲睦まじいとこ申し訳ないんすけど、実は今日中に王都を出ようかと思いまして」

「え? 1週間滞在するんじゃないんですか?」


 アーサーが首を傾げながら俺の方を見ていた。


「そのつもりだったんだが、ちょっと予定を変更せざるを得ない状況になってしまってな。だから王女様の自室に来たのは別れの挨拶の為だ」

「そうだったのですか。貴方様の事は決して忘れません。また近くを通った時は必ず王都に寄ってくださいね。約束ですよ?」

「ええ、勿論です。俺の妹を大切にして頂きありがとうございました」


 俺は王女様に向かい深々と礼をする。



「エスカ、今まで本当にご苦労様でした。これからは一人の女の子として生きてください」

「王女様……エスカ、行って参ります!」

「僕も勇者として頑張ります!」

「あり……がとうござい……ました」


 俺達は王女の部屋を出ると城の出入り口へと歩き出す。


「女の子として生きろ……か」

「ん? 何か言ったか?」

「いえ、なんでも!」

「ほーん。うっし、王都を出たら北西へ向かうぞー!」

「北西には……うわぁ、すっごいでかい塔みたいなものがあります!」

「――ほう、塔の形をしているのか。それはそれは」


 俺がこの後どうしようか考えにふけっているとエルが俺のマフラーを引っ張るっているのに気が付いた。


「話聞くからマフラー引っ張るのやめて。取れたら俺泣いちゃうから」

「王女様が……付けてたネックレスの効……果教えて。あれ聖典で見た記憶……ある」

「【慈愛の蝶】の効果か? 1日毎に防弾、防毒、防刃のパッシブスキルと死亡判定予防の効果が付いたアクセサリーだ」

「な……んで、そんな代……物を?」

「なんとなく」

「な……んとな……く?」

「ああ、こまけぇこたぁ気にすんな。あった方がいいと思ってあげただけ。ただ、それだけだ」


 ハガセンにおいて、死亡というステータスは最も厄介なバッドステータスである。なってしまった場合の回避方法は30秒以内に超希少アイテムであるハイエリクサーを誰かに使用させるか、マッドネス級装備であるゴッドオブスタッフを持つ魔術師を連れてくるかの2つのみ。手遅れの場合はキャラクターのロストかリアルマネーを消費しての復活どちらかの選択を迫られる。

 しかし、死亡を予防・・する事は可能である。俺が渡した【慈愛の蝶】というアクセサリーはこの予防において最高の代物である。


 閑話休題


「お、出入り口に到着したな」


 俺達はそのまま城を出て門を潜る。


「門番君、世話になったな。それじゃ」

「立たれるのですね。道中お気を付けて!」


 門番君の声を背中で聞きながら俺達は北の門へと歩を進める。そのまま暫く歩き続け、北の門へ到着すると金の甲冑を着た兵士が仁王立ちしていた。その横にはメイドが立っている。


「ネア!? こんな所で一体何を!?」

「エスカ様水臭いじゃないですか! 私に一言もなく出て行かれるなんて!」

「すまん。私もそう思ったが、お前の顔を見てしまうと辛くなってしまうのではないかと思ってな」


 エスカがネアをハグしているのが目に入る。


「行かれるのであるな。武運を祈っているのである」

「おう、お前にも世話になったなアンドリュー。王女様の事諦めんなよ」

「な、なな何の事だかさささっぱりわわからなないであるなな」

「動揺し過ぎだろ……。まぁ、達者でな」


 俺が手を差し出すと、カチャカチャと兜を脱ぎ小脇に抱え、無駄にイケメンな顔を晒すとガッと力強く握手してきた。


「このイケメン金ピカゴリラめ」

「イケメン金ピカゴリラ!?」

「じゃあな。っとそうだ、餞別代わりにお前にもやる。王女とおそろいのネックレス」


 俺はインベントリから【慈愛の蝶】を取り出しアンドリューへ手渡す。


「おお! これはかたじけない! 一生の宝にするのである」

「良いから首に掛けとけ。その方がずっといい」

「うむ! 承知したのである。ガハハハハ!!」

「よし! いざ、ゆかん! 前人未到のグランドデザイアへイクゾー!」

「「「「「オー!」」」」」


 俺達は門を出て颯爽と歩き出した。



 ◆◆◆◆◆◆


 ゲインが王都を出たその晩、王女サンティーヌは夜空に向かって祈りを捧げていた。


「神よ、どうか機甲騎士様達の旅路に安寧があらん事を」


 サンティーヌが空に向かいそう祈っていると目の前に小さな羽根を生やした白い球体が姿を現した。


「こ、ここは!?」

「あぁ、神様! 私めの願いを聞き届けてくださるのですね!」

「また君か壊れるなぁ。いいかい? 王女様? 前にも言ったけど僕は色々と忙しい身なんだよ。君のユニークスキル神への謁見だっけ? 全く困ったもんだよ。僕の力すら及ばないんだから」

「申し訳ございません! 神様が仰った通り私の目の前に黒き騎士が現れたのです! そしてこの王都の危機を2度も救い、お父様とお母様の昏睡まで治療してくださったのです! どうしてもご報告したくて!」

「あ〜! 彼ね! 彼面白い人間だよねー! 彼の行動は突拍子なさ過ぎて、この神である僕にも予測不能なんだよね! 面白いのなんのって! いやぁ、愉快愉快! あ、でもあれはちょっといけなかったね。あの蜘蛛の声拡張する奴ね。都合が悪かったから記憶を改竄させてもらったよ。奴に勘付かれる可能性あるかもだし」

「記憶を改竄!? 私もですか!? 奴とは!?」

「君には関係ないさ。う~ん、ちょっとお喋りが過ぎたな。この会話が終わったら僕についての記憶は消させて貰うからね」

「……」


 王女が一方的に話を進める神を名乗る球体の話を聞いているとドアのノックが部屋に響いた。


「こ、こんな夜更けに誰でしょう?」

「さぁ? 開けてみたら?」


 王女は立ち上がりドアを開けると、そこにはピンクの髪に青いメッシュの前髪が特徴のメイドが立っていた。このメイドは最近配属された新人であり、サンティーヌの身の回りの世話を担当している。


「王女様? どなたかいらっしゃるのですか?」

「えぇ、今そこに――? いえ、ずっと私は1人だった筈、おかしいですわね。どうして勘違いしたのかしら。ところで用件は?」

「就寝前のティータイムの時間なので、ティーセットをお持ち致しました」

「あら、もうそんな時間に? 入ってください。貴方も良かったら一緒にどうです?」

「い、いえ恐れ多い」

「そう? 残念です」


 メイドが王女の部屋へ入ると蝋燭を机に置きポットを傾けカップにお茶を注ぐ。


「あら、いつもは茶葉を別々にしているのに今日は違うんですね」

「え、えぇ。今日は特別・・なんです。どうぞ」

「ありがとう」


 メイドからカップを受け取り、王女はお茶をすすった。


「いつもと違う味ですがこれも中々美味しいです。どうしました?」


 メイドはわなわなと震え、王女を見据えている。


「そんな……そんな馬鹿な!? あのカップには致死量の毒が塗ってあった筈なのに!? な、なぜ、何故死なない!?」

「毒!? 貴女は一体何者!?」

「クソ!」


 王女の声を無視して窓から身を投げ出し、メイドが暗闇の中へと消えていく。


「誰かー!」


 王女の悲鳴が城中に響き渡った。

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