第75話 俺、今後の予定を話す
俺はにっこりと笑う天使の様な悪魔を上から下まで見つめる。服は着ておらず、黒い下着姿から布を羽織っているだけの簡単な服装へ変わっていた。
「我が主? 如何いたしました?」
「いや、その、随分とイメチェンしたなと思ってね?」
「全ては我が主のお力の賜物であります! 親愛なる我が主の為、より一層の忠を尽くさんと――」
セーレ改めルシファーが高らかに俺への忠誠を宣言していたその時、催眠が切れたのか王女が微かに動いたのを俺は見逃さなかった。
「浅く掛けておいたから、そろそろ効果が切れるな。ルシファーお前の忠誠心はわかった。もう消えていいぞ」
「我が主、申し訳ありません。我はセーレ達と違い天使でもある為消える事ができません」
「は? 消える事ができない? あの炎になって消えるやつが?」
「はい、そうです」
「そんなの聞いてないぞ! ヤバイ! この状況を説明できる自信がない! 何とかできないのか!?」
ルシファーは少し考える素振りをみせ、口を開いた。
「では、さっきと同じ要領で回廊を作成し、我が主の肉体を依り代にさせて頂ければと」
「何だかよくわからんけどもうそれでいいわ! 早く! 起きてしまうぞ!」
「宜しいのですか! では、失礼致します」
ルシファーが俺に触れるとそのまま姿が掻き消えた。
それに一瞬遅れて王女がゆっくり目を開けこちらを見ている。
「う、う~ん、機甲騎士様? お父様お母様の容態は!?」
「安心していいッスよ。取り憑いてた悪魔は綺麗さっぱりいなくなりましたから」
「本当ですか!? ありがとうございます! 最高の誕生日プレゼントです!」
「は? 誕生日プレゼント?」
「はい! 正確には1週間後ですが、私19になるんです!」
「へぇ〜、そうなんすか? 王様達と一緒に誕生日迎えられそうで何よりッス。あ、揺すれば起きると思いますよ。じゃ、俺はこれで失礼させてもらいますね」
俺は踵を返し部屋から退室する為、ドアを開けた。
「うわあああ!」
外に出ると何故かアーサーが尻もちを付き、周りにはエルやエスカ、騎士団の面々がいた。
「……何してんのお前ら?」
「何もしてないのである! 断じて盗み聞きなどしてないのである!」
「うん、大体察した」
「あの、お師匠様……王様とお妃様は?」
「結論から言うと王様達には悪魔が取り憑いてた。だからずっと起きなかったんだ。ちょっと予定外のトラブルがあったがもう大丈夫だ」
「流石、お師匠様! 凄いです!」
アーサーは目をキラキラさせながら俺を見ている。
「アーサー、テンプレをありがとう」
「ところで聞きたいのであるが、王様やお妃様はいつ頃目覚めるのであるか?」
「ん? さぁな。まぁ、そのうち目覚めるだろ」
「であるか……」
「よし、アーサーの里帰りもエスカの後任の儀も全部終わった! 近々王都を出るとしようか」
「この国を出て次は何処へ往くのだ?」
「何だ? アンドリューも一緒に来るか?」
「フッ、我は王女様の騎士である。ここを離れる気は毛頭ない」
「だろうな、冗談だよ。あ、そういや王女様あと1週間で誕生日らしいじゃん」
「そうなのである! また一段と美しくなられて! しまった!? 忙しくて誕生日プレゼントを買うのを失念していた!? マズいのである!」
アンドリューは頭を抱え、廊下を行ったり来たりしだした。
「今から宝石商に……いや、それでは去年と丸かぶりである。うぅむ」
「おい、アンドリュー」
「花で良いだろうか? 普通過ぎるか……うーむ」
「おいって!」
「なんであるか!? 今とても大切な考え事をしているのである!」
「心の声ダダ漏れだから! 良いからちょっと付いてこい! 話がある」
俺はアンドリューを連れて皆から離れる。
「話とは?」
俺はインベントリから3つのネックレスを取り出しアンドリューへ手渡す。
手渡したのは蝶を模したデザインが特徴的な銀のネックレスだ。両翼に黄色く輝く小さな宝石が2つ付いている。
「これをお前にやる。誕生日プレゼントだって言って王女様に渡してやれ」
「――なんと美しいネックレスか。本当に貰ってよいのか?」
「良いんだよ。エスカが世話になった礼みたいなもんだ。残りの2つは王様と王女様の分な。お前からなら受け取るだろ」
「それはそうだが……何故王様とお妃様の分まで?」
「良いか? こいつはただの首飾りじゃない、お守りでもあるんだよ。また悪魔に取り憑かれて今度は永遠に目を覚ましませんなんて事になってみろ? 笑えんだろ? そういうトラブルを回避する為の物でもある。頼んだぞ?」
「うむ! 任された! 必ず渡すと約束しよう!」
俺はアンドリューから離れ、皆の所へ戻る。
「お兄様? アンドリューと何を話していたのですか? 何か凄くアンドリューが嬉しそうなのですが?」
「あー、何か誕生日プレゼントで迷ってたみたいなだからアドバイスをやったんだよ。 ネックレスなんてどうだ? てな具合にな」
「余程、迷っていたのですね」
「らしいな」
「お兄様、王都を出たあとの計画を聞いてもよろしいでしょうか?」
「ああ、お前達の修行に丁度いいダンジョンが王都から北西にあるらしい。そこへ行くつもりだ」
「噂だけは聞いた事があります。とても特殊なダンジョンだとか」
「特殊ねぇ……特殊っつーよりは特徴なんだけどな。まぁ、あと1週間位滞在したらそこへ行くぞ。お前も挨拶とか色々あるだろうから済ましとけ。俺はその辺ぶらつかせて貰うわ」
俺は城の出口へと1人で歩き出した。




