第63話 俺、vsロンメル
「知らんなぁ。恐らくオリジナルの魔法か、何かしらのパッシブスキルだろうが……」
「申し訳ありません。私もとっさの事でよく覚えていないのです」
「ネア、ここは危険だ。遠くへ避難して欲しい」
「わかりました。ご武運を」
ネアは俺達一人ひとりに礼をし、小走りで走り去っていった。
「一体、王女様とロンメルは何処に居るんだ?」
「僕が察知したのは謁見の間です。まだ恐らくそこに」
「そうか、じゃあとっと行っちまおう」
「うむ、王女様の身が心配である。某も急いだほうが良いだろう。皆の者、某に続け!」
アンドリューが走りだすと、エスカとファースも走りだした為、俺は置いてきぼりをくらうまいと
アーサーとエルを脇に抱えて走りだす。
先行した3人の後を追い、幾つかの長廊下を抜け、追いつくと3人は巨大な扉の前で待機していた。
「何で突入しないんだ?」
「今ファースがロンメルと王女様の状態を確認しています。お兄様それが済むまで――」
「ウルルァ! カチコミだ! オラァ!」
俺は、エスカの言葉を無視し、渾身のヤクザキックでドアを蹴破り中へと入っていく。
左右を見ると護衛の兵士や臣下もやはり石像と化していた。
「なにッ!? てめぇらは!! どうやってあの魔障防壁を破った!?」
俺は王座らしき豪華な椅子にもたれながら、狼狽えている紫フードの男の台詞を無視し、王女の状態を確認する。
猿ぐつわを噛まされ、手はロープで縛られているが命に別状はなさそうに見える。
俺はアーサーとエルを離し、腕を組みつつローブの男を真っ直ぐに見据えた。
二人を離したと同時に後ろから幾人かの足音が聞こえてきた。どうやら騎士団の面々が突入してきたようだ。
「人の名前尋ねる時はまず自分からって習わなかったのか? あ? 王様になろうって人間がそんな礼儀も知らないの?」
「反逆者め! この勇者アーサーが許さないぞ!」
「う……わ悪趣味なローブ、気持ち悪い……死ねばいいのに」
「ロンメル! 愚かな奴! 貴様であればそれなりの地位に就けたものを!」
「ロンメルさん……」
「なんと、なんと馬鹿な事を。ロンメル、某はお主を――」
俺達がロンメルに対し、言いたいことを言っていると、ワナワナと手を震わせながら裾からナイフを取り出し、王女様の喉元に押し付けた。
「黙れ黙れ黙れッ! 黙らなければ王女を殺すぞ!」
「ガイドウ流剣術奥義 後牙一閃」
俺はインベントリから刀を取り出し、その場で抜刀しすぐに鞘に戻す。
「馬鹿か? 俺とてめぇの距離がどれだけ離れてると――ぎゃああああああッ!!」
「誰でも良い! 王女様を連れてここから離れろ!」
「王女様! 失礼致します!」
王女様がファースにお姫様抱っこされながら、謁見の間から出て行くのを確認する。
目の前のロンメルはというと、椅子からずり落ち、前のめりになって背中を抑えようとしていた。
「ぐああああ!!!!」
「王女様を殺そうとするとか、もう色々と終わってんな。背中からドバドバ血出てるぞ? 止血しねぇと死ぬなこれは」
「クソ馬鹿が! ここでてめぇらを皆殺しにした後、ファースをぶっ殺せば……」
俺はかかとを地面を軽く叩くと、かかとから一匹の蜘蛛が出現し、俺の手のひらへ登ってくる。
俺はそれをロンメルのすぐ側へと放る。
「なん、だ? このちっせぇ蜘蛛みたいなモンスターは?」
「それさ、エキスパンションスパイダーっつってな。主の半径1キロ圏内の声を拡大するってジョークガジェットなんだけどさ。
俺はこいつを全ての住宅区や酒場、広場なんかにばら撒いてきたんだよね。何が言いたいかっつーとだな。
この謁見の間に入ってきた時点で拡張機能オンにしたから、お前との今までの会話ぜーんぶ筒抜けなんだよね」
「なん……だと?」
「もう二度と王様ごっこ出来ないねぇ?」
ロンメルは側にあるエキスパンションスパイダーを握りつぶした。
「クソッ! クソがあああああああッ!!」
ロンメルが雄叫びをあげた瞬間、ロンメルの影が突如巨大化し謁見の間全体が包み込まれた。
俺は一瞬あっけにとられたがなんともないことがわかり、確認のために後ろを振り向くと
アーサー以外の騎士団の面々とエルが完全に石化していた。
「なに? 一体なにが?」
「へへへへへ、ヒャーはハハハははは!!」
俺は笑い声に釣られて前を向くと、そこには致命傷であった筈のロンメルがケタケタと笑いながら立っていた。
自らの第六感が警鈴を鳴らしている気がした。
俺は足のミニマムブースターを起動させ、アーサーの側へとバックステップする。
「お師匠様! あれは一体!?」
「わからねぇ! 突然何が起こったんだ!? それよりアーサーお前なんともないのか!?」
「ハイ! お師匠様のくれた腕輪のおかげみたいです!」
「エルは……レジストできなかったか。失態だ! こんなことなら、エスカやエルに優秀なアクセサリーなり防具なり渡しておくべきだった!」
俺は後悔の念を抱きつつロンメルを注視する。
依然としてケタケタと首を前後に揺らし、笑い転げているロンメルに言いようのない不気味さを感じた。
俺はロンメルに鑑定スキルを無詠唱で掛け、出てきた文字に驚愕する。
すべての項目がUnknownで埋まっていたのだ。
「な、に?」
「どうなさったんですか? お師匠様?」
「ひとつ、わかった事がある。俺達の目の前にいるあれは生物じゃねぇって事だ……」
「そ、それってどういう――」
「今から俺とお前で相手すんのは正真正銘の化物って事だ! 気合入れろ! 下手打ったら俺もお前もここで死ぬぞ!」
俺は前に躍り出て、思いっきり腹の底から声を出す。
「外着ッ!」
俺の前に魔法陣が現れ、頭から順に出現し、外格がバキャッ!という音と共に外れ自動的に俺へと着装されていく。
「ゲイン様、ご機嫌麗しゅう」
「ネメシス! 悪いが反応している時間はない! ログを見てくれ!」
「全て未確認……ですか」
「そうだ! この世界に来て以来のガチエマージェンシーだ!」
「たとえ未確認でも、この地に足で立ってる。それは生物に他なりません」
「何言ってんだ! こんな時に! とんち聞くために外着したんじゃねーんだぞ!」
「元を断ってしまえば良いのでは? うってつけの武器があります。 【バースティック・マナ・ブレイカー 神威】の使用を提案致します」
「その手があったか! いやしかし、俺が撃つのか。それだと時間稼ぐのが――」
「撃つのはゲイン様ではございません。彼です」
「ええええええええええええ!?」
謎の未確認生命体となったロンメルを前に俺の絶叫が響き渡った。




