第34話 予選 sideゲイン & ちょっとだけエル
「ワッペンを寄越せーい!」
俺は逃げ惑う参加者達を追い詰めながら、せっせとワッペンの回収作業をしていた。今、49枚目の獲物を壁に追い詰めたところだ。
「ば、化けモンだ! どんなに魔法撃ち込んでも傷ひとつ付かねぇどころか、怯みもしないないて!」
「化けモンとは失礼な奴だな。俺は大会で優勝する為の下地を作ってるだけだ」
「こんな化けモンがいるなら、最初から参加しなかった! クッソ! 苦労してルギームに入国したってのに!」
「はい、お疲れ」
俺は男の下顎にデコピンをかますと、男は糸が切れた人形の様に崩れ落ちた。
「ま、5年後また挑戦するんだな」
俺は男からワッペンを頂戴する。
「アルテミス、現在残っている冒険者の分布を作ってくれ」
「わかったわ。ちょっと待ってくれるかしら」
10分程経ち、冒険者達の分布が完成した。赤い斑点がそこかしこに表示される。
「まだこんなにいるのかよ、はぁ~面倒くせぇマジで。“あいつら“に頼むとするか」
俺は右の太ももの辺りを叩く。すると、太ももがパックリと割れ中からホルダーが出てくる。中には、色とりどりの小さな歯車が入っている。俺はホルダーの口を開けると、紫と青の歯車を取り出し近くへ放り投げる。
「マシン・ギア蒼穹&マシン・ギア紫炎龍ウェイクアップ」
俺がそう言うと歯車が次々と分裂しだし、あっという間に人型ロボットへと変態した。
マシン・ギアはロボットのみが使う事が出来る最小6メートルから最大90メートル程の即席お供ロボットであり、簡単な命令を下す事で、何かを集めたり戦闘のサポートをさせるにはお誂え向きなのだ。蒼穹はバイクへ、紫炎龍は戦闘機へ変形する事が出来る。乗ることも勿論可能である。紫炎龍は紫のカラーリング蒼穹は青いカラーリングのマシン・ギアであり、この2機は機動力に優れているのが特徴だ。
「マスターご命令を」
「……」
「2つある。俺のローブに付いているワッペンが見えるか? これと同じ者をしてる奴等がそこら中にいる。お前等2機で俺の元に持ってこい。爆発物とレーザー系の武器の使用を禁ずる。抵抗されたら物理で殴れ。半殺しまでなら許可する。あと、一般人に手を出すなよ。んで、もう一つの命令だが、俺と同じ色をしたワッペンを持つエルメンテって名前の少女がこの街の何処かにいる。見つけたら俺の元へ運べ。以上だ」
「任務了解。状況開始」
「……」
そう言って紫炎龍と蒼穹は戦闘機とバイクに変型し、俺の元から去っていった。
ちなみに喋ってた方が紫炎龍で、無口な方が蒼穹である。変形する時に蒼穹には何か景気のいい掛け声みたいなの欲しいなと常々思っているが、現実は非情である。
「はぁ~あ。楽ちんでいいわぁ」
3時間後……。
「良いねぇ良いねぇ、紫炎龍! グッジョブ!」
「引き続き行いますか?」
「いや、一時待機しろ」
「了解しました」
紫炎龍の働きにより、350個程集まっていた。
「蒼穹が来てないな。どこでまで行ってるんだ?」
◆◆◆
私は未だにゲインを見つけられないでいた。ふと私は気付く、周りが静か過ぎ事に。これはどういう事だろう? さっきまで参加者の声が聞こえていたのに、一切何の音も聞こえないのだ。私は用心の為にAEWを発動させたまま歩く事にした。
「……AEW」
暫く歩いていると横の道から爆発音様なものが聞こえ、私は大鎌を構えながら音のした方へ恐る恐る近づく。見ると、見たこともない青い鉄の固まりが尻尾の穴から煙を出しながらゆっくりと移動していた。私はその見慣れぬモンスターに向かって大鎌を振り上げると、急にぐるりと回りこちらを向き喋りだした。
「対象者ヲ発見。第一任務ヲ破棄。第二任務遂行へ移行。エルメンテ様デスネ。マスターノ使イノモノデス。私ノ名ハ蒼穹。乗ッテ下サイ」
「マ……スター? ゲイ……ンの事? 乗れってどこ……に?」
「跨ガッテクダサイ。ソシテ、黒イ取ッ手ヲシッカリ掴ンデ下サイ」
私は蒼穹というこの鉄で出来た何かの言う通りに跨いで黒い棒の様なものを掴むと、私の体を眩い青い光が囲む。目を開けると丸い変な被り物をしていた。いつの間にか服装も変わっている。
「スキャン開始。エルメンテサマ専用ノ、ライダースーツトヘルメットヲ作成完了。姿勢ヲ低クシテ下サイ」
「こ…こう?」
「ハイ。デハ、シートベルトヲ付ケサセテ頂キマス。」
私の身体に黒い帯の様なものが巻き付き、蒼穹は動き出した。凄まじいスピードで。
「きゃあああああああああ!!!」




