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第2話 俺、状況を確認する

 「なるほどなぁ」


 俺は腕を組み、ある意味で感心していた。あの、喋るLED電球による嫌がらせを転生して1秒で受けているからだ。


 躰に受ける風圧は相当のものだ。お気に入りのチュニックがバサバサと揺れているのが実に鬱陶しい。至極(しごく)当然であろう。今俺は上空3000メートル辺りを(ちょく)で下降している。このままでは間違いなく、地面に頭から激突するだろう。


「あの喋る電球……。覚えとけよ」


 俺は目を閉じ、小さく息を吸ってから目を見開く。


 俺は心の中で強化外骨格(きょうかがいこっかく)を思い浮かべる。すると俺の眼前に白い幾何学的模様で形成された魔法陣が発生し、その中から、全身が黒で統一された人型のそれ(・・)は俺と重なり合い、意識を同調させると、眼前が色々なインジケーターやユーザーインターフェースが目まぐるしく動いている事で、無事着装が完了したのを自覚した。


 そのまま地表まで2メートルを迫る。赤い英語表記で、ワーニングとビービーと鳴る音と無機質な機械音声で警告がなされた所で俺は躰を回転させ、脚部のブースターを軽く吹かし地面へ華麗に着地した。


 鳥のさえずりが聞こえ鬱蒼(うっそう)とまでは行かないものの、青々とした森に俺は立っていた。尻目で左右を確認しつつ、間近にあった泉を覗き込み、自らの姿を確かめる。


 そこには真っ黒な鋼鉄に身を包み、ズタボロで大きめの紅いマフラーを首に巻いた自分がいた。


「うおーッ! マジでゲインだこれー! 待て、落ち着け俺」


 確かに見た目だけは、ハガセンで使っていた最強装備のヤルダバオトⅧ式であった。ハガセンでのアバターは課金アイテムを使うことにより、顔面のみだが自由に作成することが出来る。ヤルダバオトⅧの見た目は全身黒で統一された騎士の様なデザインだが、顔面だけは俺が幼少の頃から大好きだった、特撮ヒーローのマスクドブレイバーに似せて作られている。


 単純に自分が覚えているスキルは、状態異常全耐性、HPMP自動回復5000/秒、全格闘スキル対応、全武器スキル対応、全魔法スキル対応、全料理スキル対応、全鍛冶スキル対応、位だ。


 この他にも数え切れないほどスキルを習得したが、一々覚えていない。

 ハガセンでは、覚えられるスキルは当然ジョブ毎に違うのだが、レベルが1000を超えると、MPの下に熟練度ゲージが追加され、この熟練度を最後まで育てきると運営からスキルの制限突破ができるアイテムが貰えるのだ。


 勿論、ゲージMAXで対応できるスキルは1つずつ解禁していかなくてはならず、覚える為には特定のNPCに師事しなければならない。


 初めてこの情報が某大型掲示版にアップされた時は、鯖が1週間は死んだままだったのを覚えている。


「よし、いっちょ試しに使ってみるか」


 周りに誰もいない事を確認し構える。


炎呀烈掌えんがれっしょう!」


 格闘スキルにおける3番目位に覚える攻撃スキルを、木に向かって放つ。――パァーンッ! という風船が弾ける様な轟音と共に、木が跡形もなく消し飛んだ。


「えぇ……マジか、あんまし強くないスキル選んだつもりなんだけど」


 あまりの威力に俺はぼう然としたが、スキルが無事に発動するとわかると、ふと思い出す。


「スキルが使えるという事はあいつも使えるのか? おい、ネメシスいるか?」

「はい、ゲイン様ご機嫌麗しゅう」


 頭の中に女性の姿が浮かび上がった。


 絹のような白い肌、薄い碧眼、髪は目の色と同じく薄碧色で超ロングだが、うなじの辺りで折り返し髪留めでまとめられている様だ。服装は白いワンピースを着用。少女の容姿が完全に表示され一瞬微笑んだかと思うと、うやうやしく俺にお辞儀をした。


 彼女がヤルダバオトⅧ式に搭載されている、超高性能自立型AIネメシスである。


「こいつまで使えるのか、こりゃいよいよチートだな」

「ゲイン様どうなさいました? 何かトラブルでしょうか?」

「ネメシスこの辺り一帯をスキャンニングして、簡易マップを作ってくれ」

「承知いたしました。マッピングを開始します」


 待つこと3秒後……。


「マッピング完了しました」

「おう、サンキュー!」


 画面上にマップが表示される。


 見ると、どうやら北西辺りに村らしきものがあるのがわかった。


「ゲイン様、この世界は何なのでしょうか? 私のデータベースには存在しません」

「聞いて驚くなよ、どうやら神様が異世界へ転移させてくれたらしい。いや違うな、転生か」

「……理解不能です」

「ですよね! 俺もよくわかりません! まぁ、とりあえずなんだ村とやらに行ってみよう」

「承知いたしました。ゲイン様。しかし、どうやらお客様の様です」


 右を見ると巨大なオークと4匹の狼が俺の方へと向かってきた。


「ビッゲストオークとバンデッドウルフが群れてるぞ」

「明らかな敵性信号をキャッチ。如何致しますか?」

「かかる火の粉は振り払うしかねぇだろ。デモンストレーションには良い相手かもな。折角のラブコールを無視するのも悪い」


 俺はインベントリと呼ばれる、白い正四角形の物体を無詠唱で呼び出し、そこに入っていた。ショットガンを取り出す。


「さぁ畜生共、俺の栄えある転生1発目の実験台となれ」


 銃口を狼に向けて次々撃ち、シェルに込められた散弾で4匹の内3匹が挽き肉になる。

 最後の1匹が俺の腕に噛み付いてきたが、ヒヒイロカネ合金で形成された、ヤルダバオトⅧ式に傷が付く筈もない。噛み付いている狼の腹にショットガンの銃口を押し当て、零距離から射撃。内蔵と肉と血液を飛び散らせながら、狼はだらりと腕から口を離した。


「待たせたなオーク君」

「フガッブヒイイイイ!!」


 耳障りな叫び声と共に踵を返し、俺からの逃走を図ろうとしている様だ。


「おいおいマジか。てめぇから喧嘩売っといて逃げようってのか。そうは問屋が卸さんぞ」


 俺はショットガンをインベントリに戻し、銀のデザートイーグルを取り出し、逃げる豚に銃口を向ける。


「俺の愛銃、最悪な1日(バッド・デイズ)だ。冥土の土産に1発くれてやる。内蔵破裂弾(ないぞうはれつだん)


 そう言ってから放った銃弾は豚に命中し、ボンッという破裂音が聞こえたかと思うと、オークはそのまま倒れ伏した。


「まぁ、こんなものか。スキル、武器、武器に備えた要素、UIユーザーインターフェースそしてAI(ネメシス)いずれも問題なく使える事がわかった。これは色々と楽しめそうだな」

「では参りましょうゲイン様」

「あぁ、ネメシスこれからもよろしく頼む」


 とりあえず今は第2の人生を謳歌させて貰うとするか。


 そして、颯爽と俺は脳内彼女ネメシスと共に歩きだしたのである。

容姿の元ネタは覚悟のス○メに出てくる強○外骨格零です。

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