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第186話 俺、銃口を向ける

 「で、その愛しのママってのは、いつここに来るんだ?」

 俺の質問に浮き足立っていたゴリラの表情は、次第に曇っていき、目を伏せた。

「わかりません。しかし私は信じています。必ずママはここに戻ってくる」

「たらればの話に興味ないんがな」

「先輩、さっきからこのスーツ着たゴリラさんと何ウホウホ言い合ってるんスか?」

「誰もウホウホなんて言っとらんだろうが。ん?」


 鈍い機械の駆動音が耳に入り、振り返ると出入り口替わりのエレベーターが突如動き出した。


「俺達の他に誰か呼んだのか?」

「ママだ……間違いない! このエレベーターを使えるのは私以外には私と他にママのみ。遂に……遂に会える!」


 喜んでいるゴリラを無視し俺はビーディに目配る。小さく頷いたのと同時にビーディは手のひらを鉄製の扉に向けた。


 ポーンという音と扉が口を開けたと同時にビーディの手からマズルフラッシュが光り薬莢が次々床に落ちる。


「な、何を!? や、やめてください!」

「黙れ、敵かも知れんだろうが。招かれざる客には銃弾をくれてやる」

『まぁ一発だけなら誤射かもしれないしね。数百発撃ってるけど』


 俺が右手を上げるとビーディの手から光が途絶え、眼前は白い煙で覆われている。

 画面上のインジケーターには特に異常は見当たらない。


「全く……このポイントにようやっと復帰できたと思ったら、蜂のお姉ちゃんは刺殺しようと向かってくるわ。ケージに戻ったら銃弾をお見舞いされるわで、手厚い歓迎じゃわい」


 煙の中現れたのは腕が7本ある真紅のボディを持った骸骨だった。


「間違いない敵だ! まともな奴とは思えん! ビーディ攻撃を続行しろ!」

『せっかく髑髏(ドクロ)仲間にあったのに?』

「どこにシンパシー感じてんだ馬鹿! どっからどう見てもやべーやつだろうが!」

『いや、撃てって言われて撃ったけど1発も当たってないんだけど。あと、けんちゃんがやべーやつって言っても説得力皆無じゃね』


 いつもの如くインベントリから、銃を取り出してビーディの頭に向けて一発撃ち込む。


「お前一言いっつも余計なんだよマジで」

「んー、アジー中々個性的な連中じゃのう」

「その声……本当に大ちゃんなのか!?」


 大ちゃんて。


「ゲイン君ストップ! 攻撃しないで! 味方だから!」

「アルジャ・岩本お前この千手観音と知り合いなのか?」

「見た目は違うけど、彼が探してた黒澤大五郎だよ! 言っただろ? ロボットになって生きている可能性が高いって!」

「こいつが!?」


 目の前にいるのは、どう見ても千手観音の生皮剥がしました的な見た目のスケルトンにしか見えん。ハックアンドスラッシュ系のゲームだったら間違いなくユニーク枠だ。仮にハガセンで例えるなら、倒したら絶対マッドネス級のアイテム低確率でドロップするタイプに違いない。

 いや、そんな事よりも……。確かアルジャ・岩本の話によると故意に自殺して、ロボットに転生したという話だったか。しかし俺はほぼ全てのロボットの、フレーム、パーツ、武器を所有しているが一切見たこともないデザインだ。ロボットの癖に黒澤大五郎を名乗っているが、その証拠だって一切ない……。


 俺はおもむろに千手観音へ銃口を向ける。


「やめて下さい! 何故ママに向かって銃を向けているんです!? 間違いなく私のママです!」

「それがそもそもおかしいんだ。ニュースなんて、てんで見なかったが、そんな俺でさえ黒澤大五郎がどんな見た目なのかは知ってるぜ。白髪生やして髪の毛ボーボーのしわくちゃの爺だ。こんなホラーゲームにでてくる様な見た目じゃねぇ!」

「マシーナなんじゃから人間の姿をしとる訳ないじゃろ。お主アジーの連れの割にはインテリジェンス低そうじゃのう」

「うるせー転生ロボット爺が」

「やれやれ、蜂の嬢ちゃんにも言ったがわしに──なッ!?」


 急に奴が俺の方に向かって歩き出した。俺はトリガーに指をかける。


「止まれ! 止まらんと撃つぞ!」

「そこをどいちょくれ! 頼む!」

「てめぇ!」


 俺は銃のトリガーを引く。銃弾が真っ直ぐやつへと向かっていき、着弾寸前で弾が逸れ側に生えていた大きな木へ当たった。


「馬鹿な……あの距離で外した? 俺が?」

『けんちゃんエイム力低いからなぁ』


 俺は復活していた阿保の顔面に向かって再び1発見舞って、半分顔面が砕け散ったのを確認する。


『もーすぐ怒るんだから』


 銃に問題はみられない。あのグロテスク千手観音絶対に何かしてやがる。


 アーサーに抱きつきながら、頭皮の匂いを嗅ぎ続けている変態に向かっていく奴を追う。


「凛ちゃん! 本当に凛ちゃんなのか」

「んほー堪んないッス。アーサーきゅんのナイススメル──怪人ッス! 先輩! 特撮ヒーロー物で言うところの大体35話辺りからでてくるっぽい見た目の秘密結社の幹部的なサムシングがいるッス!」

「微妙にわかりやすい例えやめろ」

「何故……何故凛ちゃんが……。凛ちゃんわしじゃ! じーじじゃ!」

「じーちゃん!? その見た目!? 秘密結社に改造でもされたんすか!?」

「凛ちゃんこそ……どうしてここにおるんじゃ!?」

「本当にじーちゃんなんすか?」

「無論じゃ! 凛ちゃんの事で知らん事などないぞ!」 

「じゃあ2歳の頃の誕生日プレゼントは?」

「2歳の頃の誕生日にはプライベートジェットプレゼントしたのぉ! あの時の屈託のない笑顔は今でもメモリーに焼き付いておるよ!」

「間違いないッス! じーちゃんッス!」


 それでいいのかお前は。赤ん坊なんだから屈託のない笑顔なのは当たり前なんじゃね?

 10秒前怪人扱いしてたのに速攻で手のひら返しやがった。


「100歩譲ってこいつがお前の祖父だとして、おかしいと思わんのか! 人間じゃなくてロボットなんだぞ!」

『そんな事言い出したら俺はどうなの?』


 銃口を顔面半分になったアホに向けて3発撃ち込み、完全に破壊する。

 首なしになったアホは、その場に体育座りしてすねだした。


「騒がしい奴じゃな本当に。お前はわしがわざと自死してこの場におると思っておるのじゃな?」

「違う! お前はただの死にかけの老いぼれでハガセンプレイヤーではない筈だ! それが何故この場にいる!」


 俺の質問にアルジャ・岩本と凛の2人が奴に視線を向ける。


「お主は大きな勘違いをしておる。わしがお主達と同じ様に転生した。と考えておるのじゃな? それは違うぞ。わしは元々こちら(・・・)側の住人じゃ」

「それはどういう……事だ?」

「わしはこの世界からお主達の世界に転移した、来訪者という事じゃ。お主の世界で言うところの帰還者と言ったところかの」


 凛の祖父、黒澤大五郎を名乗るこいつは一体何者なんだ……?


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