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第17話 俺、勇者の修行への前準備をする

 アーサーと供に歩き続けていると潮の匂いがし、俺は一瞬立ち止まる。


「おッ、もうそろそろって所か。アーサー、クルードへ入ったら一度飯でも喰って休憩しよう」


 長い事歩きづめであった為、俺はそう提案した。


 俺はステータスのお陰かは不明だが、空腹が全くと言っていいほど感じない様で、今も特に身体に不調は見られない。しかしアーサーはそうはいかない。自分があまりにも強靭なステの為、一般人における休憩の必要性を俺は失念しかけていた。


「はい! 実はお腹ぺこぺこだったんです」


 アーサーがにっこり笑いながら語りかけてくる。

 やはり、休憩を挟まなかったのは不味かったようで、俺は申し訳ない気持ちになった。


「本当に悪かった。今までずっと一人で旅をしていたからな」


 俺が非礼を詫びると同時に港町クルードへ到着する。

 俺はすぐそばにいた筋骨隆々(きんこつりゅうりゅう)で、タンクトップが異様に似合う漁師に食事処が何処か尋ねる事にした。


「すいません、この町へ今来た所なんですが、食事が取れる場所教えくれませんか?」


 漁師はニカッと笑うと俺を見据える。


「おう、騎士の兄ちゃん。飯ならこの道をずっとまっすぐ行った『鳥の宿り木』って名前の宿屋がオススメだ」

「ありがとうございます」


 俺は漁師に礼を言いその宿屋へと向かう。


「らっしゃい! お客さん、飯かい? それとも泊まりかい?」


 恰幅の良い女将さんがカウンター越しから、俺達に聞いてくる。 


「2人分食事を頼みます」

「今日のオススメはダガーヘッドフィッシュの照り焼きだよ! どうする?」


 女将さんのオススメなら間違いないだろうと思い、俺は頷いた。


「あいよ! 適当な所で、座って待ってておくれ」


 俺とアーサーはカウンターの端の方へ座る。俺がこの後どうするか考えていると、ネメシスが聴力拡張をひとりでに行い、周りの冒険者、漁師、旅人の話が俺の耳へと届く。


「おい、知ってるか? 例の海岸に出来たダンジョンあるだろ? まだ、攻略した奴いないんだとよ」

「マジか? ならポイント稼ぐチャンスだな。」

「いや、かなりヤバいらしい。A級のモンスターが出るって噂がある」


 俺はそこで聴覚拡張を切る。


「おい、アーサー。お前の旅って期限みたいなものはあるのか?」


 俺の質問にニッコリしながらアーサーは答える。


「いえ、特にありませんが何か?」


 俺はアーサーの肩に手を置き、キリッとした声で宣言する。


「いいか、アーサーお前は勇者だ。勇者なんだが正直弱い」


 アーサーはしょぼんとする。


「だから、俺がお前を鍛えてやる。元々そのつもりだったんだろ? 任せておけ! 俺並みに強くしてやる」


 俺がそう言うとしょんぼりしていたアーサーは目をキラキラさせながらパァーと明るくなった。

 それと同時に飯が運ばれてきた為、会話を中断し飯を喰う事にする。


「ん、飯が来たな、先ずは腹ごしらえだ」


 俺は飯を喰う為、外格のヘッドを外し膝の上に置く。外す際内部の圧縮された空気が外に排出される為、なかなか煩い排出音が食堂に響くと共に排出された白い煙が眼前を包む。


 照り焼きをほうばっていたアーサーの口が止まっていた。


「なんだ? どうした?」

「い、いえ何でも」


 アーサーは再びほおばり始めた。

 後ろも少し騒がしいが、努めて俺は無視した。


 食事が終わり、再び俺はアーサーと会話を始める


「――でだな。この港町の海岸にダンジョンがあるらしいんだ、そこでお前を鍛えるつもりだ」

「いつの間にそんな情報を!? 流石、お師匠様! 必ず、ご期待に応えてみせます! あ! でも僕剣が――」


 俺はインベントリから1本の赤と青が入り混じった刀身に、鞘は女性の悲痛な叫びを体現する様に涙を流す、目玉の様なものが施されている剣とハチマキを取り出す。


「これがお前にやる魔剣だ。大事にしろよ。いいか、よく聞け? その魔剣の名前は【魔剣キクリヒメの慟哭どうこく】だ。それとハチマキは【友情と努力のハチマキ】っていうアイテムだ。ハチマキの方はお前に言ったところで、理解出来んだろうが、パワーレベリングを可能にするアイテムだ。大事なのは魔剣の方だ。その魔剣の効果は物質を攻撃すればする程、お前の体力が回復する」


 見ると俺の話を聞いた、アーサーの剣を持つ手が震えていた。


「ま……まままままま魔剣!? この世にあるかどうかもわからないと言われている、レレレ……レジェンダリー級のアイテム」

「落ち着け、魔剣とは言っても別に呪われてるとかそんなんじゃない。見た目は無駄に禍々しいけどな。特殊なスキルを持ったただの剣だ。話の続きはダンジョンでする。出るぞ」

「ひゃ、ひゃい!」


 緊張の余り舌を噛んだアーサーを連れて、俺は店を出る事にした。

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