第159話 俺、パルチに戦いの作法を教える
『一体何が起こったのか! 突如として壁から刃物にプレデーションの1人が運悪くその餌食となってしまったぁーッ!』
あの慌てよう、どうやら本当にここがどういう場所か知らなかった様だ。
「あり得ねぇ、ビッツは俺達の中じゃ1番の健脚の持ち主だ。脚を滑らせるなんて……。妙だ……それにこの臭いは……」
「ほう、流石だな。姿が見えなくても臭いで察知するとは」
俺の声にビビったのか虎は後ろヘジャンプし距離をとった。
あぁ、運の悪い奴だなあいつー。
「俺の臭いを嗅いで、距離をとったのはいいんだが位置が悪いな」
「うるせぇ! 姿を見せろ卑怯者が!」
「そこから……もういいや手遅れだし。お前が突っ立ってるそこシュレッダーの真上だぞ」
虎の足元が開き、高速回転する円筒形ローターに足が挟み込まれた様だ。血しぶきをあげながらどんどん下半身が飲み込まれていく
「ぎゃあああ! 何だこれは!?」
「……」
俺はパルチから粉砕機の前まで歩いていき、粉砕機の前までいくと虎の腕を掴みシュレッダーから出す。
両足の第1関節まで綺麗になくなっている。
俺はインベントリからエルフの里で貰っておいた黒のデザートイーグルを取り出し、両肩に向かって2発撃つ。
衝撃で肩ごと虎の両腕は吹き飛び、達磨の様になった虎が痛みに悶ている。
「すっげ、マジでアンチリコイルじゃん。こんなん赤ん坊でもビリー・ザ・キッドになれるぞ。っと感動してる場合じゃねぇ早く始めなきゃ。おいパルチこっち来い!」
「わ、わかったニャ!」
おっかなびっくりパルチは小走りで俺の元へとやってきた。
「お前戦ったことある?」
「な、ないニャ」
「じゃあ殺したこともないって事だな。よし、お前の為に出来たてホヤホヤの教材を用意してやったゾ! さぁ思う存分殺せ」
「えっ? えっ??」
「だから早くスチームギアとかいうお前の爪で好きなだけ刺していいぞ。ほら早く」
「で、でもそんな……」
「なるほど、どこが急所かわからないんだな。よし教えてやる。やっぱり比較的オーソドックスなのは顔だな。目を刺せば視界を奪える。首には動脈っていう太い血管があるし、鼻や耳を削ぎ落とすのもいいぞ。本来あるべき躰のパーツが切り離されたというのは脳に多大なストレスを与える。耳をちょっと切り落としただけでも動揺を誘える。さっどうぞ」
「お、おれっち……そ、そのこ、こんな残酷な事は……」
「お前……まさか今更日和ってんのか? 殺すのは嫌だとかそんなクソみてぇな戯言言うんじゃないだろうな? 俺にここまでお膳立てさせておいて、やっぱり無理ですごめんなさいっていうつもりか? てっぺんとるんじゃねぇのか? あ?」
「お、おれっちそんな事一度も言って」
俺はしゃがみ込みパルチの首を掴む。
「お前さ、エレベーターで子持ちししゃも美味そうに食ってたよな。あのししゃも食うとき一度でも躊躇したか? しなかったよなぁ? 自分はいいけど相手をやるのは嫌だって言うのか!? ダブスタ猫かてめぇ!!」
「兄貴……苦しいニャ」
俺はパルチの首から手を離した。
「悪かった。そうだよな急にやれって言ってもできないのが普通なんだ。俺の弟子みたいな感じで教えようとしたのが間違いだった」
「わかってくれたんだニャ。兄貴」
「ああ、わかったよ。だから俺が直々に教えてやる。ハイ、まずは爪を出してー」
「わ、わかったニャ。」
パルチの躰が蒸気で包まれ、収まると緑の電気を纏ったナイフの様な爪が指の間から出ている。
俺は彼の後ろに立ち両手を引っ掴み、勢いよく虎の右目に突き刺し、そのまま左目に向かって一閃。
「目、目がああああああ!」
「そんニャ! そんニャアアアアア!」
「これぞ攻撃だ。両眼を一気に潰す事でこいつはもう再起不能だ。 わかったかパルチ」
「う、うえぇぇぇえ!」
ゲロ吐くパルチを見届け。俺は本題へ入ることにする。
「よし、じゃあお前にもお誂え向きの急所を教えてやろう! 一度に色々教えても覚えられんだろうからな」
俺は再びパルチの手を掴む。
「も、もうやめて、ニャんてことを……」
「えっやだ。いいか生き物において最も重要なのは血だ。血を運ぶのはなんだ? 血管だな? さっき教えたが哺乳類は太ももにも大腿動脈とかいうクッソ太い動脈がちょうど両方の太ももの内側にあるんだ。今から斬る場所だ。首よりずっと簡単だろ? よく頭に叩き込めよ」
鋭い刃を太ももの内側に深々と刺し引き裂く。血液が噴水の様に吹き出しパルチ真っ黒な躰全身が血液で真紅に染まる。
「お前に教えた。処理方法だ。ちゃんと覚えとけよ。じゃあ俺、妹の方に行くから。あぁそうだ、コインはお前の自由にしていいぞ。じゃ、俺もう一匹処理して帰るから」
「ニャー……」
俺は呆けている彼を無視し、戦闘中のエスカの方へ歩をすすめた。




