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アーマード勇者育成記 最強強化外骨格チートで異世界蹂躙! 男の娘勇者を育てて神をぶっ殺す件  作者: からくり8


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第157話 俺、パルチに魚をやる

 まさか古巣で荷物扱いされるとは夢にも思わなかった。

 俺達は今はカビ臭い通路を進み錆だらけのエレベーターに乗る。ガタガタと揺れるとゆっくりと降下し始めた。


 狭苦しいエレベーターにエスカは俺の向かいに立つ。パルチは俺の横のスペースに座り青い顔をしながらカタカタと小さく震えている。


「申し訳ございません。お兄様……」

「うん? 別にいいよ。しょうがないよね。こればかりはどうにもならないからさ」


 そもそも人が乗るエレベーターじゃないしな。


 バツが悪そうな彼女の反応には訳がある。彼女の豊満なバストの影響で俺の可動域が制限されてしまっているのだ。例えるならイキってデカ盛りの牛丼を2つ頼んだら、想像の10倍近いどんぶりにこんもりと盛られた実に肉肉しいウェルダンの超巨大なステーキ肉が鎮座する丼が2つ目の前に置かれた。そんな感じであろうか。形状というか質感的にはステーキというよりはチョコのプリンと言っても良いかもしれない。


 しかし、見慣れてはいるのだが、ここまで至近距離で見るとほんと迫力が凄い。


 彼女には失礼極まりないがそういう連想を抱かざるを得ない。不肖な兄を許してほしい。


 ふと横に目線をずらすと、青い顔をしながらうつむくパルチに目が入った。俺が彼の肩に手をやると彼の全身の毛が一気に逆立った。


「にゃにゃにゃに!? 敵!? もう駄目だにゃー! 死ぬんだにゃーッ!」

「ちょっと落ち着けよ……」


 どんだけ戦うの嫌なんだよ。戦う根性ないくせに人質とる根性あるのこれもうわかんねぇな。


 そうだ、事を始める前にこの外格の対策を施しておこう。また昔みたいになるのは避けたい。あとエスカに与えた剣の使い方を軽くレクチャーもしとかなくては。


「おいパルチ、こっち向け」


 俺は彼の頭をわし掴みし、頭を俺の方向に向かせ空いた方の手の小指を口に突っ込んだ。


「うニャ!?(にが)いにゃー! くるしいにゃー!」


 ピーチクパーチクうるせー奴だなこいつ。


「ちょっと待ってろ」


 俺はインベントリからエルから貰っておいたチョコレートを手渡す。


「これ食って苦味を消せ」


 ちょっと待てよ? 猫にチョコレートって良かったんだっけ?


 むちゃくちゃ嫌な予感がする。やっぱやめとこ。


 パルチの手からチョコを取り上げ、クッキングスキルを起動させる。手をかざし、彼の目の前に1匹のししゃもが現れた。


「美味そうな魚だにゃー! 食べていいのかにゃ?」

「いいから早く食えよ」


 彼はあっという間に子持ちししゃもを平らげた。


「美味いにゃー! 兄貴ありがとにゃ!」

「はいはいお粗末様」


次はエスカの口に小指を突っ込み、液体を飲ませる。


「うっ……」

「苦いだろ。無影するな。チョコ食って苦味を消せ」


パルチにやろうと思っていたチョコをエスカに手渡しすと、彼女はすぐに口へ運んだ。


 まだ着かないのか。しかしこのエレベーター曲がりなりにも動いているということは通電する発電システムは生きている様だ。シークレットベースの全てのシステムは専用のAIによって管理されると、前世(・・)ではそういう設定になっていた筈だ。この闘技場と化してしまった古巣にある管理端末まで辿り着き、ログを調べる事ができればこの都市の全容解明、ヤルダバオトⅧ式が機能不全に陥った理由がわかる可能性はある。


 管理AIは確か普通のプレイヤーにアクセス権限はない。アドミニストレータ権限を持つGM(ゲームマスター)か、プログラマーでないと動かなかった筈。端末を見つけ、アルジャ・岩本に調べてもらえばきっと解決の糸口になる。


 そんな事を考えていると終着点へ着いたのかエレベーターの動きが一層遅くなりやがて止まった。


 薄暗い通路が続いている。あの奥は確か搬入した物資を置いておく倉庫だったか。


 俺はエレベーターから出て通路を行く。

 少し歩いた所でエスカが俺の横に連なる。


「お兄様少しよろしいでしょうか?」

「ん? なんだ?」

「この剣の扱い方を教えて頂きたいのです」

「今ここでか」

「はい」


 俺は立ち止まり、彼女の鞘に収まった剣を抜き、数歩歩き、彼女の前できびすを返す。


 彼女の真剣な表情。眼に俺の姿が写っているのが見える。


「お前この剣を抜いて振ったことはあるか?」

「はい」

「違和感覚えただろ」

「違和感……といいますか……その――」

「振っても刀身が伸びなかった。って感じか」


 彼女は黙って頷く。


「この剣は何度も言っているが魔法剣、扱う者の魔力をコストにする事で真価を発揮する。逆に言えばそれをしなければなまくらもいいとこなんだ」

「私は剣士です。彼女達の様な魔力は……」

「いいか、名称に惑わされるな。そんな大袈裟なもんじゃないんだ。いいだろう、軽くレクチャーしてやる」


 俺はエスカの腰にある剣の柄に手をかけそのまま鞘から引き抜いた。


 柄を強く握り振りかぶると刀身が伸び一瞬で剣へと元に戻る。


「疾い……」

「気付いたか。こいつの第1の特徴に。魔力を流すと刀身が伸びる。そしてこの供給を断つと一瞬で元の剣に戻せるんだ。流す魔力の量でこいつは色々面白い事ができる」


 魔力を流し続けながら壁に向かい剣を振るうと刀身の色が青から赤から紫へと変わり、それと連動する様に刀身と刀身を繋いでいる魔力でできた揺らぐ鎖も緑からピンク、ピンクから青に変わる。


「綺麗……」


 一頻(ひとしき)り壁に傷を付け満足した俺は剣が元に戻り色も青くなったのを確認し、エスカの腰に付けた鞘に剣を戻した。


「デモンストレーションはこれで終いだ。こいつには隠された形態があるんだが……見つける事ができるかは、お前の腕次第だな。まぁ習うより慣れろって言葉もあるし、ニーベルングスレイヤを使い続けたお前なら使えるようになる。俺が保証する」

「わかりました。精進致します!」

「期待してるぞ。さぁ行くか」


 そういや猫にチョコ結局食わせなかったけど、一応有識者に聞いて裏付けしとこう。


 俺はチャットを起動させ、ある人物を呼び出す。


『ゲインさんどうしたんですか?』

『あの~お世話になっております。ゲインですけどもぉ』

『ゲインさんなんで敬語なんですか……』

『実は確認というか、是非教えてもらいたい事があるんですが』

『確認? なんですか?』

『猫にチョコって食べさせて良かったんだっけ?』


 このあとむちゃくちゃ怒られた。

 すごい怖かった。

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