第146話 俺、ドワーフの谷で事後報告をする
エスカも落ち着いたみたいだし、そろそろ帰るか。
「エスカそろそろ蒸気都市に戻ろうか」
「ハイ、お兄様。あの……先程は申し訳ございませんでした」
「あ、あぁ。うん……また夜にね」
いやしかしエルフがここまでスケベ
だったとは……なんと恐ろしい種族なんだ。もし、こいつらが野に放たれていたら世界中パニックになっていただろう。
今思えば娼館で働かされていたのは理にかなっていたのではないかとも思う。もう過ぎた話か。エルフは何も好き好んで淫乱になっている訳ではないだろう。帝国のおっさん曰く、貿易できないから苦肉の策としてエルフを捕まえていた訳だしなぁ。
ビーディを見ると手に持った銃器を見つめてハンカチで拭いたりしている。
戻ったら皆にビーディを紹介しなきゃな。
「おいビーディその辺にしとけ。もう帰るぞ」
『へーいオッケイ』
俺達は3人揃って再びホスゲンの元を訪れる。
彼女は相変わらず寝そべりながらフルーツを口にしている。
「お帰りになられるのですね。口惜しいですが、これもユグドラシルの意思でしょう。どこに送ればよろしいのでしょう?」
「送る? 出口を教えてくれるんじゃないのか」
「私が出口です。さぁ私の腹に手を当ててみてください」
俺達は彼女の腹に手を当てる。すると手が腹の中へと徐々に吸い込まれていく。
「大丈夫です。怖がる必要はありません。私の腹部はいくつもの回廊と繋がっているのです。何処へでもお送り致しましょう。胎内回帰する様なものだと思って受け入れて頂ければ幸いです」
「できればドワーフの谷に頼みたいんだが」
「仰せのままに神よ。私の力が必要になった時は我が名を呼んでくださればいつでも御身の前に姿を晒しましょう」
「それと最後に大昔訪れた機械人についてどこかへ向かうと言っていなかったか!?」
腕が呑まれ肩の辺りまで差し掛かろうとしている。
「鋼鉄の旅人の事ですね……。確か……別れ際にこう仰っておりました。東へ、京国向かうと――」
その言葉を最後に俺の視界は突如として眩い光に包まれ、目を開けた時にはドワーフの谷の入口へ立っていた。
「凄まじい能力だな。恐らくあれが彼女のユニークスキルなんだろう」
『ワープの完全上位互換って感じだね〜』
「お兄様ここは一体……」
「あぁちょっと事後報告にな。元々は無理やりこいつ等に拉致られたのがことの発端なんだが、仕事を受けたからには完遂しなきゃならん」
俺はドワーフの谷の内部へ入っていき、あの時の面子と再開する。
「あんれ神様でねーか! そういや谷に変わった素材の木造建築が出てきただよ!」
「あれは俺の魔法で作り上げたものだ。それよりも喜べ。もうお前達を傷つけようとする者は二度と現れないだろう」
俺がそう言った瞬間、割れんばかりの歓声が谷に響いた。
「酒だ! 酒持ってこい!」
「いんやぁ、めでたいッペ! これでまた静かに暮らせるだなぁ! 神様のお連れ様も一緒に酒飲むッペ!」
どこに保存していたのか、酒樽がどんどん小さなゴーレム達によって運ばれていく。
「い、いや俺達はすぐに行くから……」
「酒1杯位いいでねぇですか!」
「いや……しかしだな」
そう言っているうちにどんどん酒が運ばれてくる。
「ほら皆様座ってくだせぇ!」
結局俺達は酒を頂くことに。
地べたにそのまま座り、木で出来た大ジョッキになみなみと注がれた黄金のビールを口に運ぶ。
苦味は殆どなくフルーティな甘さが感じられ、驚くべきはその喉越しの良さであろう。とんでもなく飲みやすいビールなのだ。大ジョッキに注がれているにも関わらず一気に入っていく。
「うっま! なんだこのビール!?」
「当然でさぁ。俺たちが心血を注いで作ってるビールですからねぇ」
「エスカも置かれているビールを次々飲んでいく」
「お、おいお前そんなに一気に飲んで大丈夫なのか?」
「はひ、おにいしゃま。だいじょうぶれふ」
絶対大丈夫じゃない。
っていうかビーディはあいつ口ないぞ。どうやってこの場を凌ぐつもりなんだ。
反対方向を見ると両手にジョッキを持ち、フリーズするあいつの姿。そりゃあそうだ。大人しくしているしか――。
両手てに持つジョッキを天高く掲げるとそのまま顔面に向かってビールをぶちまけ始めた。
「あ、あれは――ッ!」
騒いでたドワーフ達の視線がビーディに注がれる。
うっわやっちゃったよ〜。この空気やべぇよやべぇよ……。
「い、今のは……」
「すまんこいつは口がな――」
「今のは伝説の必殺技! ドラゴン・スクリュー・ツヴァイだっぺ!!」
周りのドワーフ達が一斉に拍手しだした。
酒の飲み方に必殺技ってなんだよ……。これもうわかんねぇな。
つーか飲むっていうか全身で浴びてるだけなんですけど。あいつの周りビールでびっちょびっちょなんですけど。
『ビールも滴るいいロボット』
「うるせーバカ」
加熱したドワーフ達のバイブスは危険な領域へと達する。
ビーディに感化されたドワーフ達が次々立ち上がり酒瓶を頭で割る者、彼の
真似をしてドラゴンうんたらかんたらをして気絶する者が続出そして更に厄介なのが……。
「おにいしゃま〜、あいしていましゅ〜。ずっとずっとあいしていましゅ〜」
俺に対する求愛をただひたすら連呼しながら酒を呷る、ダークエルフならぬショッキングピンクエルフと化したエスカである。出来上がった彼女が俺にひっついて離れない。
『仲いいねぇ。良かったねぇ出会えて』
「まぁな。しかし何故エスカは俺の事ここまで気に入ってるんだろうか」
『え、知らんの? 作った本人なのに?』
「性格や趣味嗜好までは設定できんからな。完全なマスクデータになってて表示すらないし」
『つーかさ彼女どうすんの?』
「どうするもこうするも……」
エスカは俺に抱きついたまま眠りについていた。
「ハァ……マジで帰らなきゃ皆が心配する」
『皆? そんなに仲間いるんだ。流石だねぇ』
「なんとしても今発生した問題を解決するぞ。その為に協力してもらうからな」
「そりゃあ勿論だけどさ。その子どうすんの?」
「そりゃあ担いで行くしかなるまい」
『お姫様抱っことかじゃないのか……』
「それをやると視界が確保できなくなくなるだろ」
『あぁ、なるほど……。そのバストは豊満であった』
「豊満で済めばまだいいけどな。こいつ着痩せするタイプなんだよ」
『これで……?』
「これで」
俺はエスカを担ぎ上げ、宴会をあとにすると谷の出入りから筋骨隆々のドワーフが近づいてきた。
「おぉヒヒイロカネの
じゃねぇか。遂に終わったんだな」
「あぁもうだいじょうぶだ」
「そうかい、奴等の酔いが覚めたら俺から言っとくからよ」
「悪いな、いつか武器屋また寄らせてもらうからよ」
「あぁ、じゃあなヒヒイロカネの。いや神様よ」
そうしてオールドドワーフのおっさんは俺に別れを告げ、横を通り過ぎていった。
『さっきのヤバそうなドワーフなに?』
「俺がこの世界に来て初めて出会ったドワーフだよ」
『ふーん』
俺達はドワーフの谷をあとに雪原に降り立つ。
「悪いけどお前のパワードギア貸してくれ」
『オッケイ』
彼腿を叩き出てきたケースから2つ歯車を頬ると、一体はチョッパータイプの赤いバイクにもう一体は緑のバギーが出現した。
『おはよう御座いますビーディ様』
『はいおはよー。けんちゃんはいバギーに乗りなよ』
「おう、わりぃな」
俺はバギーの助手席にエスカを乗せ、運転席ヘ座る。
「頼む」
『グリーンボルケーノと申します。よろしくお願い致します。ゲイン様』
『目的地ってどこなの?』
「言いながら指示する」
『よっしゃ! お前らエンジン全開!』
ビーディがそう言うとエンジンを唸らせバギーと彼が跨がるチョッパーが雪原の中を走り出すのだった。




