第142話 俺、エルフの里に到着する
「そ、そこの奇怪生物止まれ! その先一寸でも進んだら次は当てる!」
木の上に立つエルフが狙撃銃を構え、俺を狙っているようだ。
矢じゃなくて鉄砲持って出張ってくるエルフとか何の冗談だよ。
少し大人しくするか。
俺は無抵抗の印としてハンズアップする。
まぁエルフにハンズアップの意味が通るのは置いといて。
サーモグラフィモードに切り替え、オレンジ色の人体が木の上にそれぞれ6体程確認できた。
皆俺に銃を突きつけている正面のエルフの様に弓ではなく銃を所持している様だ。銃の形はそれぞれ違うが、スコープ付きのスナイパーライフルである事、そして木々に足を掛け上体を木に擦り付ける様な形であることがわかった。
「俺達はこの森に用があって来ただけの事――」
「黙れ奇っ怪姿のモンスターめ」
埒が明かんな。
『ねぇ〜、いつまで話してんの』
「ひっ!? 近寄るな鬼の化け物!」
別のエルフから叫び声が聞こえ、一瞬光ったかと思うと弾丸が俺の隣にいたビーディの顔面にヒットし粉々に砕け散り、その場に大の字になってぶっ倒れた。
あ~もうめちゃくちゃだよ。
そう思っていると、俺の後ろからエルフが近づいてきて声を張る。
「聞いてくれ! この人達は決して怪しい者ではない! それどころ帝国から我々を助け出してくれたんだ!」
「なに……それは本当か!?」
「あぁ本当だとも」
「そ、そうなのか……」
どうやら誤解は解けたようだ。
SVDを構えていたエルフが跳躍し、俺の目の前で着地した。
綺羅びやかな金色の長髪をポニーテールにし、躰中宝飾が施されたアクセサリーをこれでもかと身につけている。両腕両足、大きな首飾りに、腰にも金の腰ミノと表現すればよいのか。下着の類はどうやら着けていない様だ。
どうでもいい事ではあるが、エスカ程ではないがかなりのバストを持っている様だ。
彼女は銃を肩に担いだまま、青い顔をして俺を見つめる。
「異邦――いやお客人、先程は大変失礼な事をした。そしてその……友人を殺してしまって……」
「あぁ、いいのいいの。あいつ不死身だから」
実際は不死身じゃないが、対して意味は変わらんので適当に流しとこう。
「いつまで寝てんだよ! 起きろオラァン!」
俺がそう言うと彼の躰が起き上がり、両手で頭の辺りを触ると肩を落とした。
俺の方まで来た彼は俺の肩を左手で叩き、右手の人差し指で自分の首元をつつく。
「えっやだ。だってあの時は緊急時だったからMP分けて強制リスポーンしてやったけど今は別にいいじゃん」
俺がそう言うと彼はその場に屈込み、人差し指で雪に『ケチ』の文字を書いた。
俺はすかさず彼の背中に右足でスタンプ攻撃を見舞った。
「あ……あの我らの里に行きませんか……」
「アッハイ、今すぐ」
俺は彼から足をどかし彼女の後についていく。
しばらく彼女についていき、遠くからでもわかる。他の木と一線を画する超巨大な一本の木があり、彼女はそれに近づいていき手を触れると、木の中心に穴が空いたかたと思うと躰が中に浮き、木の中に吸い込まれていく。
黒い空間の中に入ってなお、躰は何かに向かって勝手に進んでいき、光が見えた。眩い光に周りが包まれその光が収まったかと思うと、俺は知らずうちに突っ立っていた。エルフ達の歓声で我に返る。
「ここは?」
「ここが我らエルフの里だ。ようこそお客人。すぐに長にお前達の事を報告しよう。その辺でくつろいで待っていてくれ」
「あ、あぁ」
中々に異様な光景だ椅子や机があるにはあるがどれも木の根でできている。上を見ると空洞化した木の根の集合体でできた一種のとてつもなく広いホールと言えばよいのか……。そこにエルフ達が暮らしている。木に掛けられた銃器の数々。エルフ達は金色に輝く鉱物を削り、銃弾をハンドメイドしている様だ。
「あれ程の銃器の数尋常じゃない。一体誰が……」
そんな事を考えていると、例のエルフが戻ってきた。
「紅のお客人。長が貴方に興味があるとの事。こちらへ」
「俺だけ?」
「はい、お連れお客人は気に入らないとの事です」
「そう……ですか」
俺は彼女の後についていき、木の根でできたベッドの様な横長の玉座に横たわる奇妙な肌色をした細身のエルフの元へと案内してくれた。
彼女と同じ様な絢爛豪華なブレスレットや首飾りをしている。ちなみに何故か下半身は丸出しだ。両足に金のブレスレットをはめているくらいか。
「長、お連れいたしました。この紅のお客人が話した者にございます」
「うむ、そうか! 行ってよいぞ。クリーレ・エムロ」
「ハ、では」
そうして寝そべりながらぶどうの様な果物を食べる、灰色の肌をした黒髪ボブカットのエルフが俺を見る。
首に掛けられたアクセサリーが盛り上がりってないところをみるに、エスカと比べるとだいぶ貧乳だな……。
「おい人間。近う寄れ」
こいつ俺が人だとわかるのか。
「はよう来い」
「えっとハイ」
俺は言われた通り彼女に近づくと、顔を俺の至近距離まで寄り付き、鼻を動かし始めた。
なんだ? 匂いを嗅いでいるのか。
「よくわからんな。これか」
そう言うと彼女は、俺の外格の胴体中心にある黄緑のポッチを押した。
なっ緊急キャストオフ用のボタンを!?
外格が全て糸の切れた人形の様に外れてしまった。
そして再び彼女は顔を俺に近づけ、目を閉じ鼻を動かすと閉じていた目を見開いた。
「なんとなんと! なんと甘美なる匂い! それでいてなんとも言えぬ切なさを感じる! この様なダークエルフがまだ存在しているとは……!?」
「ダークエルフ? 何の話を――」
彼女は俺のパーカーを両手で引っ掴み、いきなり接吻をかましてきた。
いやいやいや!? なんだこのエルフ!? なんで俺いきなり初対面のエルフにフレンチキスされてんの!?
「――ハァッ!」
やっと口を離してくれた。
「おい人間!」
「あの……いきなりなんなんスか……」
「私と子づくりしろ!」
誰か……丁度いい人いないの……。
「ちょっろまっれもらっへいいれふか。あれ〜?」
なんか目の前がすごいキラキラしてる〜。
俺は目の前がぐわりと歪み、謎の幸福感に包まれそのまま気を失った。




