第138話 俺、デュアルと邂逅する
「このクソゴミやろー! 出てこい!」
画面上に映っている謎のモンスター、躰の半分が機械化され両翼には巨大なファンの様が付いている。記憶が正しければあれは恐らくエアレイドイーグルに違いない。
エアレイドイーグルはハガセン内では然程強くない雑魚モンスターの筈、それがいっちょ前にユニークモンスターみてぇに人語を喋ってやがる。
「おいおい冗談だろ。ちょっと話してみるか」
『なに言ってんだよ! とっとと殺したほうが良いって!』
「いや、興味がある」
『始まったー、けんちゃんの病気だー。俺行かないよ! 顔割れてるから!』
「あぁ、俺だけで話してみる」
俺は天高く跳躍し、外へ出るとゲキリンオーの腕に着地。そのまま腕の上を歩き、相手の前へと立つ。
「お前……インセクターか! お前が僕のおもちゃを壊したんだな!?」
「……」
「なんとか言ったらどうなんだよ!?」
黄色い生物の目と機械の赤く光る目が俺を睨みつけている。
こいつ今俺のことインセクターと呼んだな。俺が外格を着装した人間だとわからないのか。
まぁ陽炎は無駄にスピーシーだからな。
俺は右の下顎にあるつまみを左に回す。これは簡易的なボイスチェンジャーだ。何の役にも立たないネタ機能だと思っていたが、こんな所で活躍の場があるとはな。
「お前達は何者だ? おもちゃとは何の事を言っている?」
ボイスチェンジャーの影響で地声とは似ても似つかない低めの声が俺の口から発せられる。
「僕たちはデュアルだ! 俺が作ったオブジェクトナイツを壊しただろ!」
オブジェクトナイツ? 何を言ってるんだこいつは? それにこいつが両足で引っ掴んでる茶色いボロ雑巾はなんだ?
「何の話をしている?」
「とぼけるな! せっかく僕が上からゲームを楽しもうと見ていたのに! お前がそれを台無しにした! その為に港もぜーんぶ凍らせてやったんだ!」
「凍らせた? この大陸を一面銀世界に変えたのはお前か」
「面白かったぞ! あいつ泣いて頼んで来たんだ! 国を救ってくれってな! 僕があの街の人間を拐い、脳と躰を弄って兵士に変えてやったのさ! いざ、準備が整ってゲーム開始って時に! お前が現れたせいで台無しになった!」
なるほど、大体わかってきた。つまりこいつは戦争を仕掛ける為のマッチポンプを自分で演じた訳か。
「そんな事をして何のメリットがある?」
「メリット? 間抜けな昆虫野郎め! デュアル以外の生物を消す為に決まってるだろうが!」
「……話にならんな」
「じゃあ死ね!」
両翼のファンが急速回転し、突風が俺に向かって吹き荒れる。
「何故吹き飛ばない!?」
「エアレイドイーグルのそよ風如きで俺が吹っ飛ぶ訳ねぇだろ」
俺はインベントリからデザートイーグルを取り出し徐に構える。
「トリモチ弾」
両翼に1発ずつ白い粘着質な物体が相手のファンに付着。
風はあっという間に止んだ。
「な……!?」
「炸裂弾」
俺は相手の右足、両翼、左手に1発ずつ銃弾を放ち、小さな破裂音と共に撃った部位が破裂。赤黒く濁った血が流れ出ている。
「ギャアアアアア! キ……キサマアアアアア!!」
体制を崩し、俺を睨み付けながらその場に倒れ込むエアレイドイーグルの出来損ない。
「まさか痛覚があるのか? こんな中途半端なモンスターだかロボットだかわからんゴミ共に警戒してたとは……」
「キ……キサマ絶対殺してやる……殺してやるぞ!!」
「この状況でよく吠えるな。いや鳥だからさえずりか。殺ってもらおうじゃねぇか! デュアルのオルタナくんよぉ!」
「――そこまでにしていただきましょうか」
真後ろから声!?
俺は振り向きざまに銃を構える。
しかし、俺の手には構えていた筈の銃ではなく赤いユリの花が握られていた。
何!?
「大丈夫ですか、オルタナ」
「あぁ……魔……王様!」
今度は前!?
そんな馬鹿な!?
レーダーには何の反応もない……。それどころ俺に一切気取られずどうやって……。
再び声のした方へ向き直る。
眼前には綠色……いや蔦が躰にくい込んだ人の形をした物体がいた。
「私のかわいい子供をよくもこんな姿にしてくれましたね。それはユリと言って、花言葉は憎悪です。貴方に差し上げます」
「て……てめぇ!」
こちらを向いた魔王と呼称される敵は外格だった。左目にピンク色の花を咲かせ、蔦に覆われた異常な出で立ち。外格とわかったのはフェイスデザインに見覚えがあったからだ。
俺はインベントリを開き、ショットガンを取り出し、至近距離で発砲。しかし散弾は当たる前に、親指と人差し指で摘む様に全てガードされ、奴の手からその場に落下する。
「無駄です。貴方の行動は簡単に読める。この銃はお返しします」
奴の左手に俺の銃が握られていた。それを俺の方へと放り投げた。
「では、さようなら。人間」
魔王と呼ばれた植物と融合した外格は、鳥と融合したロボット抱き上げると天使に乗り込み機体が上昇しだした。
「チッ!」
俺はインベントリからスナイパーライフルを取り出し、機体に向けて一発発砲し着弾を確認。
天使は暗雲の中へ消えていった。
『けんちゃん大丈夫?』
「あぁ問題ねぇ」
『あの綠色の奴なんなの?』
「お前知ってんじゃないの?」
『いや知らないよ、あんなの』
「……Ⅹ式」
『え?』
「ありゃ幻の外格だ」
吹きすさぶ雪の中、いつの間にか落ちていた血のように赤いユリを踏みつけ、俺はただ暗雲を見つめていた。




