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アーマード勇者育成記 最強強化外骨格チートで異世界蹂躙! 男の娘勇者を育てて神をぶっ殺す件  作者: からくり8


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第102話 俺、魔王とお話する

「驚いたかい? 気持ちはわかるよ。僕も最初はそうだったからね」

「あのクソでっかい目ん玉が魔王だと?」

「ん? 違うよ、あれはただの目玉さ。ちゃんと人間みたいに口もあれば耳もあるよ」


 俺は周りを見渡すが特に変わった様子はなく、一切の暗闇が周りを支配している。上空をチラ見すると相変わらず血走った瞳は俺を捉えている様だ。


「何も……見当たらんが? あれ以外は」

「彼は規格外だからね。何せ魔王だし今この空間は言うなれば魔王のお膝元ならぬ膝の上だから」

「何……? うおッ!?」


 急に地面が揺れたかと思うと暗闇が一気に晴れた。

 巨大な真っ青な手が何処からか現れ、暗闇を上へと押し上げていく。


 暗闇の正体は異常に長く太い黒髪だと気付いたのは数秒経ってからだ。


 前髪がかき上げられ魔王の全貌が明らかになった。


 真っ青な肌に黄色く輝く瞳、頭から前に2本の赤い角が突き出ている。

 そして何より巨大で全裸であるという事。見えてはいけないものをフルオープン状態であぐらをかいている。俺達はその太股辺りにいるようだ。


 つーか、完全に女じゃん。性別ないって話じゃなかったのか。乳房とかギャランドゥ丸見えなんですけど。あと魔王の顔すげー既視感あるんだけど。


「彼が魔王ヴァジュラだよ。どうだい? ものすごく大きいだろ?」

「おっそうだな。あのさぁ、ちょっと聞きたいんだけど」

「何かな?」

「あいつの顔って一時期有名だったVRネットアイドルの狸寝入り豚汁じゃね?」


 俺がそう言うとアルジャは俺の肩を掴んで来た。


「たぬタンを知ってるのかい? 生みの親として有り難いね。もう少し流行ってくれればwebを掌握できたんだけどね〜。あれは惜しかった」


 狸寝入り豚汁とは一世を風靡したアングラ系VRネットアイドルの名である。彼女の声には大変中毒性があり、その独自の歌声を聴くと病気が治っただの、頭が異様に冴えるだのとネットで話題になり、その可愛げな歌声と清楚な容姿も相まって信者の数を増やしていった。アングラ系ネットアイドルにも関わらず雑誌、アニメ、小説あらゆるポップカルチャーに顔出しし、街を出歩けば必ず彼女の声を耳にする程に。しかしある時彼女の歌声から一種の催眠音波が発せられている事がリークされ、国が重い腰を上げる事態に。徹底的に調べ上げられた結果、彼女の歌声は軍事用に開発された催眠兵器のそれと周波数が全く同じである事が判明し、大騒ぎとなった。彼女の存在は世界中を混乱に貶めた真のアンダーグラウンドとして今も伝説となっている。


 閑話休題。


「狸寝入り豚汁ってお前が製作者だったのか」

「実は催眠による人間の洗脳方法を模索するという依頼が某国からあってね、効率重視で良いと言われたからとりあえずプログラムを組んでみたはいいものの、実に味気ない代物になっちゃって、そこでネット繋げた状態でちょっと情報収集してたら、いい素材を見つけてね? それがVRネットアイドルだったんだ。何となく遊びで内蔵してみたらバグがあったみたいで、ネットアイドルを模倣させる為に組み込んだディーヴァプロトコルとAIが独りでに動き出し、僕の知らぬ間に自らをネットに流しちゃってたんだよね。事の顛末はわかってるだろ? 見てる分には大変面白かったよ。いいデータもいっぱい取れたしね。君も彼女の歌声聞いてくれてたかい?」

「いいや。俺はVRネットアイドルには興味なかったんでな。最寄りのコンビニ寄った時に耳にする程度だ。VRはMMOに躍起になってた。騒ぎ自体はネットのニュースで知った。それはともかくわかったけど、何故に全裸なの」

「裸が彼のデフォだから」

「えっ、狸寝入り豚汁って裸がデフォなの?」

「いや違う違う。魔王の方だよ」

「フフフフ……」


 うわ、魔王が笑ってる。青い躰揺らして魔王が何かニヤつきながら俺の方見てる。全裸で。


「面白い奴だ。貴様何故我を見ても発狂せぬのだ? それにそのデタラメな魔力はなんだ?」

「うぉぉ……角が生えた豚汁に話かけられてる。違和感パねぇ」

「我の名は魔王ヴァジュラである」

「散々聞いていますはい。何故ってよくわからん。何か皆めっちゃ怖がってた」

「マナの根源たる我と対峙するのだ。矮小な者では正気を保ってはおれぬだろう」

「ハァ、左様でございますか。魔王って人間嫌いなんじゃ? 忌むべき2本足! 人間不要! って感じじゃないの?」

「何故我が人を恨まねばならぬのだ? 生きとし生けるもの全ては我が子ぞ。人が減ると我のマナ供給量も減ってしまうではないか」


 え、思ってたのとだいぶ違う。ハガセンの魔王はすごいテンプレだったんだけどなぁ。世界を半分やろうとか言ってくるタイプだったんだけど。


「時に貴様、何故貴様の体内から魔の波動を時より感じる。これはどういった事か?」

「魔の波動? いやよくわからん」

「ふぅむ……この者の中に混在している魔よ。姿を見せよ」


 魔王の人差し指と親指が俺の中へと入っていき、ひと呼吸おいて出てきた。指にはピンク色の玉が摘まれている。


「ビビったぁ。刺殺されるのかと」


 見上げると玉を凝視したまま魔王何やら呟いている。


「このマナの流れはゼーレか? 姿が変わっている。ゼーレ起きよ」

「……んぁ? そのお姿は元我が主! おぉ! 我が主の姿もあるではないですか!」

「何? 貴様人間に真名を知られたのか? どうやって人間が……」

「あぁ、それなら――」


 俺はインベントリから悪魔辞典ネクロノミコンを取り出す。


「その本は……」

「彼にアイテムを渡しちゃダメだよ!」

「え?」


 気付いた時にはネクロノミコンは俺の手から離れており、魔王の眼前でふわふわと浮いていた。


 魔王が人差し指を動かすとそれに連動するかの様にページがめくれていく。


「ほう、これは面白い。魔族の真名や分布、弱点や素性が事細かく書かれている」

「あーあ、僕はもう知らないぞ」

「何が?」

「彼は一度気になったりした物や現象は自分が満足しない限りずっとイジり続けるよ」

「え? 俺のネクロノミコンはどうなるんだよ!」

「無駄だと思うけど返してって言ってみたら? すぐにわかるよ」

「おい! 俺のネクロノミコン返してくれ!」


 魔王は一瞬俺の方をチラ見しすぐに本へ視線を戻した。


「拒否する。今4ページのフェネクスの欄を閲覧中だ。なるほど、実に興味深い。これを使いゼーレの真名を知ったのか。急にマナの流れが変わったため、反応を消していたがお前の様な人間がいたとは……フフフフますます面白い。ゼーレよ、何故貴様は姿が変わっているのだ? しかも奴の依り代となっておきながら何故何もせぬ?」

「元主、今の我が名はルシファーだ。我が主のゲイン様の中がとてつもなく居心地が良いのだ。入った瞬間の快楽たるや、それはもう表現し尽し難く」

「ほう……それ程か」


 何の話してんのこいつ等? いやそれよりも反応がどうとかかなり気になる事言ってたな。


「おい、反応を消したってどういうことだ?」

「知りたいか? 知りたくば貴様のマナを頂こう」

「俺のマナ? 魔力をやれば良いのか?」


 俺は魔王の腹に手を当て、ルシファーに魔力をやった要領を思い出し手に力を込めるとみるみるMP減っていくのがわかる。


「まさかこれ程とは……なんという強烈なマナか。よく躰を維持できているものだ。通常であれば強烈過ぎるマナの流れに躰が耐えきれず逆流を起こし、自壊していてもおかしくない。奇跡的なマナの流れにより強大な力をその身に宿すに至っているのか」

「なぁ、そろそろ反応を消したって所の詳細を――」

「気に入った! 気に入ったぞ人間! 貴様名をなのれ!」

「いや、さっきルシファーが言ってたじゃんか。まぁいいや。……ゲインだけど」

「ゲイン、我と同化せよ! 貴様にはその価値がある! いやもう決めた!」

「――は?」


 魔王の体から青い霧が発せられると外格の隙間から入りこんで来た。

 眼の前が蒼く煌めく蒸気の様なもので埋め尽くされていく。


「ちょちょ待て待て! いきなり何いってんだ!」

「ほう、頭の中に幾つもの回廊があるとは……やはり貴様は普通ではない。ちょうど今繋がっている回廊に我を同化させている所ぞ。良い感じだ」

「頭の中!? お前一体何やってんだ?」


 俺が騒いでいると脳裏に浮かぶイザナミの隣に魔王が出現した。イザナミが口をあんぐり開けて停止している。


「ほう、こうなっているのか。貴様の姿が見えるぞ。謎の文字が沢山並んでいる。フフフフ……面白いな」

「ななな、なんじゃあああああああ!? お主はああああああああ!!?!」

「お前がこの回廊の主か。騒ぐな、別に占領しようと言うのではない。気になったから入ってみたまでの事」

「真っ青な肌の痴女がアジュラスの中にぃぃぃぃ!? どうなっておるんじゃあああああ!??」

「うるさい奴だ。出ていけば良いのだろう。フフフフ」


 脳裏から魔王が消え去ると俺の隣に人間と同じサイズの魔王が浮いていた。


「え!? おま……あれ!?」


 俺の眼の前には相も変わらずニヤつきながら俺を見下ろす巨大魔王がいる。


「我はマナそのものぞ。分裂など造作もない事」

「反応を消した理由を教えろって」

「ふむ、簡単なことよ。ゼーレの反応が急に消えたから全ての魔を我の元へ返しただけの事。さぁ、行こうぞ」

「やっぱアーサーの分布が消えた件って俺のせいだったかぁ。ちょっと待て、マジで付いてくるってのか」

「あの――僕は?」

「アルジャ今まで世話になったな。何処えでも好きな所ヘ行くがいい」


 余程ショックだったのかアルジャは目を伏せ、ぷるぷると小刻みに震え出した。それはそうだろう。ずっと一緒にいたにも関わらず興味なくしたからさよならとはあまりも薄情に思える。


「お、おいアルジャ・岩本大丈夫か?」

「――じ」

「じ?」

「自由だあああああああああああああああああああああああああああああああああ!! ウヒョヒョヒョヒョ!!」


 アルジャは奇声を発しながら俺を跳ねのけ扉を開けると走り去っていった。


「えぇ……」

「さぁ、我らも行こうぞ」

「ちょっと何が起こっているのかわかんない。つーか、ネクロノミコン返して。あとルシファー戻って」

「御意」


 ルシファーの姿が小さな光となって消え去る。


「本なら我が預かる。全部読み終えたら返してやっても良いぞ。ほれさっさと歩かぬか」


 俺は魔王に催促されながら半開きになった扉を引き、魔王の空間から退出した。

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