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桃太郎2

作者: キズミ


俺は今、市の図書館にいる。

なぜ、俺は今図書館にいるのか。

それは新人保育士である俺は

次回の読み聞かせの時間を

任されており、読み聞かせ用の

絵本を探しに来ているからである。

しかし、一向に絵本が決まらない‼︎


あの桃太郎のインパクトが強すぎて

他の絵本がつまらない、というより

内容が頭に入ってこないのだ。


あっ、この展開普通だ。とか、

当たり障りのない内容の本や

普通に喜びそうな本だなーと思うが満足できない。


なんだろう。

心がビビッと来ないのだ。

心がビビッときたがってるんだ。


もちろん、前回見つけた桃太郎は

保育園児向けではないのでNGだが。


もっとインパクトのある、

一度読んだら忘れられないそんな

絵本を俺は子供たちに

読み聞かせてやりたいのだ。


だから絵本探しにも妥協は許されない。

成し遂げてみせる。

子供の笑顔は俺の生きる活力となり

明日も頑張ろうと前向きに進んでいける

そんな力を俺に与えてくれる。

だからこそ、

俺は誠心誠意、子供と向き合い、

笑顔にしてみせる‼︎


と言ってもなかなかいい絵本が

見つからないのも事実。

さて。困ったものだな。


「何かお探しの本があるのですか?」


そう俺に声をかけてきたのは

この図書館に勤めている女性だった。

なかなか綺麗じゃないか。

結構好みだな。


「そうですね。あなたのような

女性を探していました」

「は?」

「すみません。間違えました。

実はかくかくしかじかで・・・・・・」


世の中このかくかくしかじかが

あることで面倒な説明を

二度もしなくてすむのだ。

なんて素晴らしい言葉なのだろう。


「なるほど、素晴らしいですね。

子供達のために一生懸命で、すごく

かっこいいと思います」

「じゃあ俺と付き合いましょう」

「は?」

「すみません。間違えました。

なにかいい絵本ありませんかね?

心にグッときて一度読んだら

忘れられないようなそんな素敵な絵本」

「そうですね。たくさんあるのですが、

私が紹介するよりもあちらにある検索機を

使用していただいたほうが効率的に

見つかると思いますよ。

あちらの検索機を

使用していただけますか?」


え、検索機だって。

たしかに効率的かもしれないが

この綺麗な女性との会話が

ここで終了してしまうのか?


それはいやだ‼︎


「いや、あのお手数だとは思うんですが、

できればあなたに紹介してほしいです。

やっぱり人と人とはつながりが大切で

まずはコミュニケーションをとることで

お互いの信頼関係がうまれ、親密度が

高まりそして恋に落ちると思うんですよ」

「は?」

「すみません。間違えました。もし、

迷惑でなければなのですが、

あなたに紹介してほしいなと思っています」

「あぁそうですかー。うーん。

遠慮していただけますか?」


ん?

今、なんていった?

遠慮していただけますか?

あれ?

おかしいな。俺の聞き間違いだよな。

普通ここは


『遠慮しなくてもいいんですよ。

迷惑だなんてそんなこと思いませんよ。

気にしないでください』


とか、そういう流れがテンプレだよな。

よし、俺の聞き間違いだ。大丈夫。

彼女は優しい人だ。


「それじゃお言葉に甘えて遠慮なく」

「いや、遠慮なくって。

厚かましいにもほどがありますね。

私は遠慮してくださいと言ったのですが」

「まさかの聞き間違いじゃなかった‼︎」


え⁉︎

リアル遠慮してくださいだった⁉︎

日本語って難しいね‼︎

少し言い回し変えるだけで

意味が全く変わっちゃうのね‼︎

聞き間違いひとつで命とり‼︎


「一人一人に本なんて紹介していたら

私疲れますよ。検索機があるのですから

それ使ってください。無駄に

働きたくありません。

少ない給料なんです。それなら

私は給料分しか働きません」

「もう少しやる気見せようか‼︎」

「あなたになんと言われようとわたしの

意思は変わりません。公務員舐めるなよ‼︎」

「舐めてないよ⁉︎」


舐めるなよ‼︎

とシャウトした彼女は休憩室へと

スタスタと足早に

一度も振り向くこともなく歩いて行った。

そうか。休憩時間だったのか。



自身の意思を貫き通す。

その漢のような生き様を

まじかで見ることができた。

俺も彼女を見習っていい本を

見つけようと改めて決心した。


検索機でね。



検索機を使用し絵本を探すことにした俺。

さて。

キーワード、どうしようかな。

とりあえず、『面白い絵本』と調べて見た。

おぉ。でるでる。たくさんでるな。

ズラ〜と。これじゃあ多すぎてわからないから

キーワードを変えてみよう。

『心に残る絵本』で検索をかけてみる。

すると、なにやらおかしい

タイトルのものがいくつか出てきた。


あかずきん、にんぎょひめ、おやゆびひめ、

ながぐつをはいたねこ、ピーターパン、

ジャックとまめのき、

つるのおんがえしなどなど、

数々の名作がでてきた。


だが、それだけでなく、

なにやら名作を冒涜するかのような

絵本もたくさんでてきた。


『赤ず筋』

「筋肉じゃねぇか‼︎」


『垢ずきん』

「汚い‼︎」


『垢を落とすスキンケア』

「大切だね‼︎ だからどうした⁉︎」


『あかず菌』

「さじ加減か‼︎」


『赤ずきん、青ずきん、黄ずきん』

「早口言葉か‼︎ 」


『金魚姫』

「そんな姫願い下げだわ‼︎」


『出目金』

「ただの金魚じゃねぇか‼︎」


『木魚姫』

「尼さんか⁉︎ 尼さんなのか⁉︎」


『魚魚魚‼︎』

「さかなクンか‼︎」


『親指のない姫』

「怖いわ‼︎」


『親指の太い姫』

「ただの親指の太い姫じゃねぇか‼︎」


『結婚指輪をはめようとしたが左手の薬指が

親指並みに太くてはまらなかった姫』

「指太いだけか‼︎」


『長靴を履いた作業員』

「ただのおっさんじゃねぇか‼︎」


『最近の長靴っておしゃれなやつあるよね』

「原型長靴しかねぇ‼︎」


『俺の長靴、最近湿ってる』

「しらねぇよ‼︎」


『長靴を配達した黒猫』

「ヤマトか‼︎」


『長靴を吐いた猫』

「大事件じゃねぇか‼︎」


『ピーターパンツ』

「どんなパンツだ‼︎」


『皮蛋』

「中華料理‼︎」


『ピーターパンツを履いた猫』

「まさかの複合⁉︎」


『パンツを履いたおっさん』

「だからただのおっさんじゃねぇか‼︎」


『ジャックの肉刺がつぶれた』

「痛そうだけどそれがどうした⁉︎」


『ジャックとスパロウ』

「それ同一人物‼︎」


『農家の豆まき』

「畑仕事‼︎」


『鶴の燕返し』

「どっちだよ‼︎」


『鶴の鸚鵡返し』

「だからどっちだよ‼︎」


『鶴の折り返し』

「折り紙か‼︎」


『ツルツル頭の恩返し』

「結局おっさんじゃねぇかぁぁぁああ‼︎」



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。


なんだろう。激しく疲れた。

なんで検索機に俺はこんな全力で

ツッコミしてるんだろう。

周囲からも変な目で見られているし。


俺は何も悪くないはずだ。

なのになんか図書館の従業員に怒られた。

先ほどの女性ではないぞ。

彼女は昼休憩。きっちり1時間とるはずだ。


数ある絵本の中で

俺はひとつどうしてもきになって

気になって仕方のないものを見つけた。


『桃太郎 2』


これはまさか。

あの桃太郎の続編ではないだろか。

もしもそうだとしたら。

癪ではあるが見たい。

絶対に見たい。

そうと決まれば、探すしかない。


俺は桃太郎2を探すため

絵本コーナーの本棚へと足早に

向かっていった。

ひとつだけわかるのは

絶対読み聞かせには向かないこと。

だが、それでもどうしても気になって

しまうのだ。

時間の無駄になるとわかっていも

あれを読んでみたい。


これこそが。

心に残るというやつなのではないだろうか。






図書館の検索機で検索してみた結果、

『桃太郎2』なるものがでてきた。

これはおそらくあの桃太郎の続編だ。

問題作だったあの桃太郎の。

俺はすぐさまその本のある本棚に向かい

2を探した。


世間ではよく2などの続編はすべるというが

もともとがあれな作品なのでさして

問題はないと思う。だってあれだし。

前作。ひどいし。気になる人は

ぜひ読んでみてくれ。


数分後、見つけた。見つけてしまった。

その絵本を手に取り、タイトルを確認する。


『桃太郎2』


これだ。間違いなくこれだ。

本当に見つけてしまった。


さて、どうしようか。


1、読む

2、読む


そんなもの、読むに決まっている‼︎


俺はその絵本、『桃太郎2』

を開いた。さぁ、冒険の始まりだ‼︎



『おじいさんは死んだ。だが、それで

この物語が幕を閉じることはなかった。

おじいさんの死など誰一人として

気にはしない。世界のどこかで

見知らぬおじいさんが死んでしまっても

それに気づくことはできない。

つまりはそういうことだ。桃太郎と

おじいさんは無関係なのだから』


じゃあ、なんで前作におじいさん登場したの⁉︎

いやそもそも前作桃太郎でてねぇ‼︎


『世界は人の死など関係なく1日、1日が

過ぎてゆく。そんな世界の中で

桃太郎は生きている。いや、

桃太郎だけではない。

皆そうやって生きているのだ。

周囲に無関心にただ自分のことだけ

考えて生きている』


なんだか、絵本らしくないよこれ。

まったくもって子供らしくないよ。


『ここは、鬼ヶ島。桃太郎の生まれ故郷』


「いきなりはちゃめちゃだ‼︎」


桃太郎は桃から生まれたから桃太郎

なんだよね⁉︎

え、なに⁉︎ 鬼ヶ島で生まれ育っちゃったの⁉︎

それもう、ただの鬼だよね⁉︎


『鬼ヶ島で生まれ育っちゃった桃太郎は

残忍で凶悪、冷徹無慈悲、もはや彼は

人としての心を失った鬼と化していた』


「怖いわ‼︎」


『桃太郎の願望、それは人間に仇名す

鬼畜生どもの駆逐。それが人類の望みであり

そうあるべきと身体に心に遺伝子に

すり込まれて生まれてきた。

それがあるべき姿、あるべきはずの

桃太郎なのだ』


「たしかに本当の桃太郎ってのは

鬼退治する話だから間違ってはいない気も

するがそんな話だったか?」


『しかしこの桃太郎は

鬼ヶ島で生まれ育ってしまった。

凶悪な鬼たちに育てられたのだ。

鬼への復讐心を持ち合わせた桃太郎。

だからこそだろうか。

桃太郎は日々、ある二つの感情に

苦しんできた』


「桃太郎らしくないよ」

俺の知ってる桃太郎は影も形もない。


『桃太郎にとって鬼とは敵だ。

もちろん、鬼に復讐する理由はない。

ただ、そういうものなのだ。

それが世界のルールなのだ。

だが、桃太郎にとって鬼たちは家族だ。

育て親なのだ。

そんな鬼たちを退治するのは

桃太郎でも心苦しかった』


「なんだよ、桃太郎のやつ、

まだいいところあるじゃねぇか」


『殺したい衝動と殺したくないという理性

彼の中で矛盾を生じていた』


なるほど。

ジレンマだな。

それともアンビバレンスのほうが

適切か。

同一の対象に対して、愛と憎しみのように

相反する感情を同時に持つ。

衝動と想いがぶつかりあって

自分でもどうしていいかわからなく

なっているようだ。

大丈夫。信じてる。桃太郎は

ちゃんと帰ってくる。


『桃太郎としての義務、世界の願望、それを

叶えるためには今まで自分を育ててくれた

鬼たちを裏切るしかない。退治するしかない。

苦しい、辛い、こんなこと考えなければ

ならないのならもういっそ考えるのを

やめて衝動に身を任せよう。そう何度も

何度も桃太郎は思った』


桃太郎よ。負けるな。自分の衝動に負けるな。

気持ちを強く持て‼︎


『悩んで、悩んで、悩んで。

桃太郎は悩み続けた。そして円形脱毛が

できてしまった』


「ハゲちゃった‼︎」


『円形脱毛の大きさはなんと1000冊なみの

大きさだった』


「それもう円形どころじゃないよね⁉︎

長方形だよね⁉︎ どんなハゲ方したの⁉︎」


『彼の頭皮はとてもデリケートだった。

彼のストレスに簡単に作用されてしまう

そんな頭皮だ。そして自分がハゲて

しまったことに気づいた桃太郎は

深く傷ついた』


誰だってハゲたいとは思わないよな。


『そしてひとつの答えにたどり着いた。

自分がハゲた理由。それは

自分が人間で周りには鬼しか

いないこと。その異種族の中で生きることの

辛さ、生きにくさが原因だと。

桃太郎は思った。こんな生きにくい世界の

せいで俺の頭皮は死んだ。毛根も死んだ。

ならそんな俺の頭皮に、毛根に

優しくない世界は俺がぶっ潰す‼︎

そう桃太郎は決心した』


「桃太郎はどこに向かってしまうんだ‼︎」


『こうして桃太郎は復讐者となった』


「なんの⁉︎ え⁉︎ まさかの頭皮と毛根の⁉︎」

話がよくわからない方向に進んでない⁉︎


『まず桃太郎は鬼たちを容赦なく殺した』


「おい、ちょっといきなりすぎるだろ」


『なにも殺したというのはなにも命を

奪ったのではない。殺したのは

鬼の頭皮と毛根のすべてだ。

手始めに育て親達の頭皮、毛根を狙った』


「そっちかい‼︎」


『やめろ、桃太郎。落ち着け、落ち着くんだ。

今の時代ハゲてしまってもそれを改善する

方法はいくらでもある。昔のように

カツラだけではないんだ‼︎ だから落ち着け‼︎

やめろ‼︎ そのバリカンをこっちに向けるんじゃない‼︎』

『父さん、だめだよ。もうだめなんだ。俺の

頭皮は毛根は。みてよこの部分ハゲ。

1000札くらいの大きさだよ。

なんならここほら、

野口英世の顔になってるだろ?』


「大きさどころの話じゃねぇ‼︎」

奇跡か‼︎ 頭に完全な野口あるのか‼︎

むしろ芸術的ハゲ方だよ‼︎


『大丈夫だ。その大きさでもきっと

元に戻る。信じろ、現代の育毛技術を、

だからそのバリカn』

『刈り取りやがれ‼︎ バリカンよ‼︎』


ヴィィィィィィいいいいいいいいんんん‼︎

ガガガガガガガガガガガガガガガガ‼︎


『ぎゃあああああああああああああ‼︎』


『父さん。これでも俺はまだ優しいよ。

父さんには感謝してる。だからバリカンで

済ましてあげたんだ。バリカンは刈るだけ。

頭皮、毛根を殺すわけじゃない。だから

きっとまた生える』


『そう言い残して桃太郎は育て親の

母方である鬼の美しい黒髪さえも

容赦なく刈り取った』


『桃太郎、なぜこんなことを。

あなたはとても優しい心をもっていたはずよ』

『そんな心、とうの昔に無くしたよ。

母さん。俺は鬼に育てられたんだ。

もう、人間らしさなんてないよ。

さようなら、母さん』

『待ちなさい‼︎ 桃太郎‼︎ お願い‼︎

待って‼︎ 早まらないで‼︎ 桃t』

『え? なに? 聞こえなぁ〜い』

ヴィィィィィィいいいいいいいいんんん‼︎

ガガガガガガガガガガガガガガガガ‼︎

『イヤァァァぁぁぁぁああああああああ‼︎』


「鬼畜か‼︎」

桃太郎のほうがよっぽど鬼だわ‼︎


『こうして彼はすべての鬼の

毛を刈り取った。そして見せしめとして

鬼ヶ島の頭領である赤鬼の頭皮に

脱毛剤を容赦なくぶっかけ、すべてを

引き抜いた』

『これが俺の復讐だ‼︎』


「髪の毛への怒り強すぎるだろ‼︎

元々の鬼への復讐心はどこに行ったし‼︎」


『俺の・・・・・・。髪が。

俺の頭領の証であったたった1本の

髪の毛ガァァァァアアアアア⁉︎⁉︎⁉︎』


「すべてを引き抜いたって1本しか

なかったんかい‼︎」

ほぼすでにハゲじゃん‼︎

桃太郎よりハゲてんじゃん‼︎ 頭領‼︎


『ハハハハハ‼︎

これで鬼どもの頭皮は髪の毛は

一掃した。鬼への復讐はこれで終わりだ。

さぁもう一つのメインイベントを始めようか』


一体何を始める気だ? この桃太郎は。


『駆逐してやる。一人残らず。

人間どもの頭皮を‼︎』


今度は人間かーい‼︎

もうとどまることを知らないな‼︎

こいつは‼︎


『待て、桃太郎よ』

『貴様は⁉︎』

『今の堕ちてしまった君とは初めましてかな。それとも久しぶりでいいのかな?』

『そのめんどくさい性格は

変わらないようだな。犬‼︎』


「なんか新キャラ出てきた‼︎」

たしかに桃太郎に犬はでてくるけど

こっからどうなるの⁉︎


『桃太郎。僕は忘れないよ。

君が僕たちを裏切って鬼と共に

暮らしてきたことを。でもね。

それ自体はいいと思っていたんだ。

君は鬼たちと共に平和に暮らすことが

できていたんだから。

僕はこの世の理通りに、物語のように

君に鬼を退治なんてしてほしくなかった

からね。このままでいいって思った』

『くだらないな。平和な暮らし?

そんなものはない‼︎

俺と鬼は違う生き物だ‼︎ 違うんだよ‼︎

そんな板挟みの環境の中で暮らして

ストレスが蓄積し、頭皮が耐えきれなく

なって俺はハゲてしまった‼︎』

『そうだね。今の君はハゲだ。

ただのハゲだよ。どうしようもない。

救いようもないハゲ野郎だ』

『ハゲハゲ言うな‼︎

お前も俺のようにしてやろう。

全身のあらゆる毛を刈り取ってやろう。

冬は寒いぞ? 犬』

『戦う前に一つだけ確認させてくれ。

君はなぜあの時、裏切った?』

『裏切ったとは?』

『キジを丸焼きにしてクリスマスに

猿と2人で食べたことだ‼︎』


またとんでもない話になったな‼︎

もう終わりが見えない‼︎


『そんなもの決まっている。

おいしそうだった。ただ、それだけだ』

『仲間を裏切って食べるキジの丸焼きが

そんなに美味しかったか? 桃太郎』

『あぁ。塩気も抜群だった。猿は

料理の天才だな。今はフランスで

修業中だったか?』

『ああ。一流のフレンチをつくるために

本場に学びに行ったよ。猿の飯は

本当に美味かった。本当に。うまいんだ。

なんで、なんで、なんで‼︎

俺も誘ってくれなかった‼︎

俺もキジの丸焼き食べたかったんだぞ‼︎』


裏切ったってお前のことか‼︎

仲間を食べることは許されちゃうんだ⁉︎


『それこそ、愚問だな。お前のご飯の

食べ方が汚いからだ‼︎』

『桃太郎ぉぉぉおお‼︎』

『犬ぅぅぅううう‼︎』

『『ウォォォォオオオオオオオオオオ‼︎‼︎』』


『戦いの火蓋が切って落とされた』


戦いの火蓋が切って落とされた。

じゃねぇよぉぉぉおおぉぉぉおお‼︎‼︎‼︎

なんなんだよこれはぁぁぁぁああ‼︎‼︎‼︎

ひどすぎる‼︎

内容が意味分からなすぎる‼︎

暴走しすぎだ‼︎ どこに向かっていってんだ‼︎

こんな絵本読み聞かせで読めるか‼︎

いや、答えはわかってたけどな‼︎

使えないって‼︎

一応まだ続きがあるから読んでみるか。

でももうお腹いっぱいだよ。

満腹だよ。十分すぎるくらい

ぶっとんでたわ。しかし、

このまできたら最後まで読みたい

気持ちもある。

胸焼け覚悟で読もうか。

俺は続きを読むため、ページをめくった。



『これが堕天した桃太郎の力か‼︎』

『フハハハハハハ‼︎ どうした犬‼︎

貴様の肉球はその程度か‼︎』


「武器、爪とか歯じゃないの⁉︎」

肉球でどう戦うんだよ⁉︎

プニプニ〜‼︎


『だめだ。このままでは刈られる‼︎』

『さっさと諦めよ。犬』


逃げろ犬‼︎

毛のない犬なんて見たくない‼︎


『これが俺の最後の技になるだろう』

『なん、だと?』

『俺の、桃太郎としての唯一の

最初で最後の技だ。それを見れる

犬は幸運だな』

『くっ、俺にはもう、戦う力はない。殺せ‼︎』

『安心しろ。犬。言われなくても

すぐに楽にしてやる。

一瞬だ。これは絶対にかわすことはできない』


一体、どんな技だ?

つーか、この言い回しどっかで

聞いた記憶あるけど思い出すのは

やめておこう。色々、謝罪しないと

いけなくなると思うから。


『さて。ご希望通り再現しよう。

犬の死に様を』

『くそ。俺の肉球じゃどうすることも

できない‼︎』


肉球以外を使ってみようよ。犬。

かなり効果あると思うぜ?


『技の名は桃』


「びっくりするくらいそのまんまだ‼︎」


『甘い果肉、甘い果汁、桃独特の豊潤な

味わいとともに散れ』


『そういった瞬間、桃太郎の手のひらから

桃が出現した。そう、桃太郎の技とは

どんな桃でも一度みた桃ならば

瞬時に育てることができるのだ』


「それただのものすごい桃農家‼︎」


『グワァァァアアアアアアアアアアアア‼︎‼︎‼︎』


「なんで桃だけでそんなになるの⁉︎ 犬‼︎」


『この桃はまだ未成熟。そうだよ犬。

未成熟な実や種にはアミグダリンという

青酸配糖体が含まれている。

体内で分解されると青酸毒を発生し中毒症状や死ぬこともあるんだよ。お前は一度

これを知らずに俺が出した桃を

間違って食べてしまったな。それから

お前にとって桃はただの恐怖の対象だ。

桃をみるだけで蘇ってくるだろう。

あの恐怖を。死の恐怖を』

『桃は・・・・・・。桃だけは

勘弁してくれ・・・・・・。桃太郎』


「それ桃太郎に頼むのなんかおかしくない⁉︎

違和感しかないな‼︎」


『ふ、それならば貴様には成熟した

桃をくれてやろう。ほら、未成熟の

桃が完全に成熟した。食べごろだぞ』

『まじで‼︎ いっただきまーす‼︎』


「犬はただのバカなの⁉︎

すごいの⁉︎ 一瞬で死の恐怖乗り越えちゃったよ‼︎」


『犬は成熟した桃をムシャムシャと

平らげた。種一つ残さず食べた』


『俺はお前のその食べ方が嫌い

だったんだよ。桃なんだからフォーク

くらい使えよ‼︎』


「プニプニの肉球でどう使えと⁉︎

許してやれよ‼︎ それくらい‼︎」


『桃太郎よ。俺は桃の恐怖を

乗り越えてしまったぞ?

どうする? これで終わりか?』

『だから貴様はバカなんだ。犬。

果物やその種を犬が飲み込んでしまい、

消化管の中で詰まることは犬には

多くある。例えば、リンゴを塊のまま飲み込んで喉に詰まるとかな。腹も同様だよ。

果物を切らずにそのまま与えるのは

危険なんだ。お前は桃をそのまま食べた。

さぁどうなるかな?』

『う、う、ウァァああああああ‼︎

お腹が‼︎ お腹が‼︎ お腹が‼︎』

『ハハハハハハハハハハ‼︎‼︎

これが俺の最高の技である桃の力だ‼︎

犬ごときには太刀打ちすることなど

できはしない‼︎ ほら、胃薬やるから

あとは獣医に診てもらえ』

『俺、保険証持ってない・・・・・・』

『心配するな。俺のペットという扱いで

すでに保険には入ってる。ソニーなソンポだ。

そもそもな。犬よ。

公的な健康保険は犬にはない。

診療費は自己負担なんだよ。理解したか?犬』

『そんな、ばかな・・・・・・』

『いつからお前は健康保険に加入できると

錯覚した?』


『こうして犬と桃太郎の壮絶な

戦いは幕を閉じた。この先の物語は

今は誰一人として知る者はいない。

しかし、もし、語り継がれることが

あるのなら・・・・・・。

その時はまた、彼らのいく末を見守るとしよう』


「中途半端に幕閉じたー‼︎」

え?

これで終わりなの⁉︎

終わっちゃったの⁉︎

保険とかどうでもいいよ⁉︎

いや、豆知識にはなったけども‼︎

本当にグダクダだなぁ‼︎



俺は思ったよ。

この本は本当にダメだ。

読み聞かせになんてむかないなんて

もんじゃない。駄作もいいところ。

だが、俺にとってこいつは

やっぱり心に残る本なんだよな。

インパクトが他とは比べ物にならない。

よし、決めた。決めたぞ。


家に帰ったらペット保険のこと詳しく調べよ。


なぜなら。

俺には大切な愛犬がいるのだから。


きっと、生き物を大切にするってことを

この本は言いたかったんだ。

そうだと思いたい。

そう、信じたい。


くだらない作品となりましたが読んでいただけたら

幸いです。そして笑っていただけたらもっと幸いです。短編に桃太郎前作があります。

よろしければそちらも読んでいただきたいです。

ただくだらなさ、しょうもないものを追求して

書きました。あまり考えずにサラサラと

読んでいただけたらなと思います。

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