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第九話 兄の独白と弟の言葉

優慈は聖慈が入ってきたので体を起こした。

何の話をするかはまだ優慈に伝えていない。

聖慈は優慈の近くに座って優慈の顔を見据えた。


「優慈、お前に話がある」

「何、兄貴」

「実はな・・・」


聖慈は迷った。

本当にこのタイミングで話していいのだろうか。

まだ優慈に話すのは早いのではないだろうか。

しかし、今日の優慈や雫との食事を取っていて聖慈は少し罪悪感を感じていた。

本当の兄貴ではないことを雫はともかく優慈には伝えておいたほうがいいのではないだろうか。

しかし…


「なんだよ、もったいぶって!」


聖慈が迷っていると優慈がせかしてきた。

聖慈は思い切って優慈に伝えることにした。


「あぁ、実は・・・俺とお前、そして雫は本当の兄弟じゃないらしいんだ」

「は?ちゃんと説明しろよ!」

「はっはっはっは!」

「なに笑ってんだよ!」


優慈のリアクションが自分が章吾から聞かされたときと同じなので聖慈はつい笑ってしまった。

こういうところで聖慈は優慈が義理でも自分の弟だと感じれたことが嬉しかった。


「いやな、俺が親父に聞いたときも同じ反応したからな、つい笑っちまった」

「で、どういうことか説明してもらおうか?」


聖慈は笑いを止めて真面目な顔をして説明を続けた。


「親父からの説明だと親父とお袋の間には10年間子供ができなかったらしいんだ。それで、託児所にいた子を一人ひきっとたらしいんだ」

「それが兄貴?」

「らしいんだけど、親父の話だからな詳しいことがわからないんだ。だから、お前と雫は兄弟だけど俺は違うんだ」

「だから?」

「え?」

「だからどうしたっていうんだ!」


優慈がいきなり叫んだので聖慈は驚いた。


「兄貴は本当の兄妹じゃなくても俺と雫の兄貴だよ、これからも」


聖慈は優慈のその言葉を聞いて本当にこいつの兄貴でよかったと思った。

心には感謝の気持ちで一杯になった。


「優慈・・・ありがとな。親父にも二人の兄貴でいてくれって頼まれたんだ」

「雫は知ってるのか?」

「まだ、伝えれる年じゃないだろ」

「まぁな」

「俺だって18になってから伝えられたんだぜ」


聖慈は雫の話になったので丁度気になってることを聞いた。

雫をどういう風に見てるのかをだ。

このタイミングを逃したら聞く機会はもうこないかもしれない。


「そういや雫から聞いたけど・・・」

「ん?なんて?」

「お前、雫のこといやらしい目で見てるらしいな?」

「は?違うし。ただ・・・」

「ただ?」

「ただ雫のことがまだ小さいから心配だったんだよ」


なるほどと聖慈は思った。

確かに雫はまだ10歳だ。

優慈も雫のれっきとした兄なので雫が気になっていたのだろう。

そういえば聖慈がいるときは優慈は雫のほうを見ていなかった気がする。

恐らく聖慈がいたので安心していたのだろう。


「へぇ〜。そういうわけか・・・」

「そういうこと。まぁ、雫にそういう風に見られてるとは思わなかったけどな」

「まぁ、兄貴なんてそんなもんだよな」

「そうだな。兄貴はそれに俺も迷惑かけてるしな」

「迷惑はかけられたほうが兄貴にとっては嬉しいけどな」

「まぁ、寂しいよな。妹や弟が独り立ちしていくと」

「そうだな・・・。とりあえず、雫ももうそろそろ家に帰すって親父にも伝えててくれ」


優慈は聖慈のその言葉に疑問を持った。

何故雫を帰す必要があるのだろうか。


「雫を家に帰すのか?」

「まぁな。もうそろそろ俺も妹に頼りっぱなしってわけにはいかんだろ。どうせこれからは受験勉強ばっかだから家事も余裕があるだろうし」

「受験勉強?」

「あぁ、俺大学に行こうと思ってんだ」

「そうか。分かった。親父にも伝えとくよ」

「頼むな。さ、そろそろ寝るか」

「そうだな、もう2時だしな」


聖慈は自分の部屋に戻っていった。

部屋に帰り優慈の言葉をもう一度思い出していた。

これからも兄として接してくれることの嬉しさで胸が一杯になった。



「じゃあ、兄貴。また今度な」

「あぁ、また遊びに来いよ」


次の日の朝優慈は聖慈の部屋を後にした。

聖慈は優慈の姿を見送って部屋に戻ると雫が待っていた。


「お兄ちゃん・・・」

「ん?雫、どうした?」


雫が聖慈に話しかけた。


「私も帰るよ」

「帰るって家にか?」

「うん。そろそろ私もお兄ちゃんに甘えてるわけにもいかないし」

「そうか・・・」

「また遊びに来てもいい?」

「あぁ。優慈と一緒に来いよ」

「え・・・」

「優慈はお前が思ってるよりもちゃんとした兄貴だよ。お前が心配だから見てただけだよ」


その言葉に雫は安心した顔を見せた。


「そうなの?」

「あぁ、家に帰ったら優慈に聞いてみな」

「うん。分かった」

「じゃあ気をつけてな」

「うん。じゃあね」


そうして雫も聖慈の部屋を後にした。

これからどうなるかは分からないが聖慈はこれからも優慈と雫のいい兄貴でいようと思い、とりあえず大学受験に向けての勉強を開始した。


                                 〜第一部完〜

あとがきはYAHOO!blogで書いております

興味があればお越しください

URL↓↓

http://blogs.yahoo.co.jp/in_this_sky

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