第三十一話 兄の告白と妹の返事
日本を発って数時間後両親が暮らしている国に到着した。
空港を出ると章吾と真美が聖慈を出迎えた。
「親父…。お袋…」
「聖慈、よく来たな」
「さ、帰りましょ」
章吾と真美は聖慈を車に乗せ家に向けて車を走らせた。
車の中は沈黙に包まれた。
聖慈は二人になんと言えばいいか分からなかった。
そんな沈黙を破ったのは章吾だった。
「聖慈」
「何?」
「電話で聞いたがもう一度聞く。お前は雫のことをどう思っているんだ?」
聖慈はミラー越しに見てくる章吾と目を合わせ自分の気持ちを伝えた。
「俺は雫のことが好きだ。もちろん妹しての気持ちもある。でも、それ以上に一人の女性として愛してる」
「そうか。じゃあ、雫に会ってどうする?」
「全部伝えるよ。俺の気持ちも俺が雫と本当の兄妹じゃないことも」
「雫が拒絶したら?」
「それでも俺は後悔しない。拒絶されたら拒絶されなくなるまで説得するさ」
聖慈の気持ちに章吾も真美も何も言わない。
そして、車は章吾と真美がこちら側で暮らす家に着いた。
今家には雫しかいない。
聖慈がインターホンを鳴らすと家の中からずっと聞きたかった雫の声が聞こえた。
ドアを開けると共に聖慈は無意識のうちに雫を腕の中に閉じ込めた。
「おい、もういいんじゃないか?雫も混乱してる」
章吾が言うまで雫に何も伝えていないことに気づいた。
そして、ゆっくりと雫が離れていくことに名残惜しさを感じながら腕の力を緩める。
雫が聖慈の顔を見て驚いたような顔をしている。
雫に向けて聖慈は声をかける。
「雫、久しぶり…」
聖慈が声をかけても雫はまだ呆然としている。
そして、まさかここまで呆気にとられるとは思っていなかった聖慈も困惑している。
そんな二人に真美が声をかけた。
「とりあえず二人とも家に入りなさい」
真美の言葉に雫がよろよろと家の中に入る。
その後ろに聖慈、そして章吾と真美が続けて入る。
リビングに入り4人は椅子に座った。
お茶を一口飲み章吾が聖慈に声をかける。
「聖慈、俺達は二階にいるから」
「あぁ」
そういって章吾と真美は二階に上がっていく。
したがって一階には聖慈と雫二人っきりになった。
「雫…、聞いて欲しいことがあるんだ」
「…なに?」
雫は聖慈と目もあわせないでうつむいている。
聖慈は雫に顔を上げるように言おうと思ったが雫も混乱してるのだろうと思い、そのまま続けることにした。
「雫を親父達のところに行かせたのは理由があるんだ」
「…お父さん達が呼んだからでしょ」
「それは…俺が考えた嘘なんだ」
雫はその言葉に顔を上げた。
「う…そ…」
「あぁ、ちゃんとした理由があるんだ。でもそれを雫に言うのは俺が臆病だったからあんな嘘をついたんだ」
「じゃあ、ちゃんとした理由って何?」
「そのまえにもっと大事な話があるんだ」
「それよりも大事な話?」
「あぁ、その話をする前にこっちの話を聞いて欲しいんだ」
「じゃあ何?その大事な話って」
聖慈の手の平には汗が滲んでいる。
それほど緊張しているのだ。
だが、聖慈は決心して自分の気持ちを伝えた。
「雫…。俺はお前が好きだ。妹としてではなく一人の女性としてお前を愛している」
「え?」
「ずっと好きだったんだと思う。でも、俺が自覚していなかったからお前を傷つけてしまったかもしれない。でもこれからは、俺は雫の傍でお前を守りたい…」
雫は何が起こってるかわからないようだ。
まさか聖慈が自分のことを好きだと言っているのだ。
「雫…?やっぱ迷惑か?」
雫は聖慈の声ではっとして、雫は自分の気持ちを伝えてきた。
「私も!私もお兄ちゃんのこと好きだよ!ずっと前から一人の男の人として好きだった…」
雫は涙を流しながら叫ぶように言った。
聖慈は立って雫を抱きしめた。
「ごめんな。今まで気づかなくて」
「ううん…」
聖慈は雫が泣き止むまで抱きしめて頭を撫でていた。
雫が泣き止んだのを確認して聖慈は自分のことを話すことにした。
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