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第三話 兄の部屋

雫が食事の仕度をしてる間聖慈は居間に寝転がってTVを見ている。

その姿はすでにおっさんである。

するとTVの音とは違う唸る音がテーブルから聞こえた。

テーブルの方を見ると雫の携帯が震えていた。

ディスプレイには『優慈兄ちゃん』と書いてあるので掛けてきた相手はどうやら優慈らしい。 


「雫、携帯がなってるぞ。優慈から」

「え、いま手が離せないからお兄ちゃんでて〜」


雫のほうをみるとそんなに忙しい風には見えないので忙しいというよりも出たくないというのが正解のようだ。

先ほどのやりとりを見ても雫が今優慈と関わりたくないのが分かる。

仕方なく聖慈は電話に出ることにした。


「やれやれ、もしもし」

「え、兄貴・・・なんで雫の携帯から兄貴が?」

「あ?雫が俺んちで泊まるっていうからいま飯作ってもらってるんだよ」

「え・・・そう、わかった」


そういうと優慈は電話を切った。


「なんだあいつ?」


電話を終わったのを確認してから雫が心配な顔をして聖慈に近づいてきた。

やはり忙しくて手が離せないというのは嘘だったようだ。


「お兄ちゃん?優慈兄ちゃんなんて?」

「しらねぇ。すぐにきったからよくわかんねぇ」

「そう・・・」

「それよりも飯まだか」

「もうすこしだからちょっとまってて」

「やれやれ」


雫が台所に向かったのを確認して聖慈はまたTVを見だした。

聖慈がTVを見始めて10分ぐらいたってから雫が料理を持ってテーブルに近づいてきた。

どうやらメニューはオムライスのようだ。


「は〜い、おまたせ」

「遅いんだよ」

「なに、その態度」

「いいからはやくよこせよ」

「はい、どうぞ」


聖慈は雫が作った手料理を口に含んだ。

かなりおいしい…

味が母親の味に似ているので家で母親に教わってるのだろう。

10歳が作ったとは思えないほどおいしかった。


「どう、雫の手料理?」

「うん、まぁまぁかな」

「え・・・」


正直言っておいしいのだが聖慈はからかうつもりで『まぁまぁ』と答えたのだが雫は本気に思ったらしくかなりショックを受けている。聖慈は慌ててフォローをした。


「うそうそ。かなりうまい」

「ほんとに?」

「ほんとほんと」


雫は少しの間、聖慈の顔をじっと見ている。

まだ、疑っているようだ。

だが、聖慈の手が止まらないところを見て安心したように自分も食べ始めた。

その姿を見て聖慈は笑みを浮かべた。


「あぁ〜うまかった」

「久しぶりに家庭の味を食ったな」

「じゃあ風呂沸かしてるから風呂はいってきていいわよ」

「じゃあお先に」


雫が洗い物をしている間に聖慈は風呂に入った。

一体いつの間に風呂を沸かしたのか全然気が付かなかった。

聖慈が買い物に行ったときにはまだ風呂を沸かしていなかったので食事の間に沸かしたのだろう。

聖慈はTVを見ていた自分が恥ずかしかった。


「あぁ〜、いい湯だった」

「じゃあ雫入るね」


雫が風呂に入ったので聖慈は雫の寝床を作ることにした。

聖慈の部屋は聖慈が普段寝ている部屋と先ほど料理を食べた部屋、それに加えて友人達が来たときに泊まれるような部屋がもう一部屋あるのでそこに雫の布団を敷くことにした。

雫が風呂からあがってきたので聖慈はその部屋に雫を連れて行った。


「雫はこの部屋使えよ」

「え・・・」

「どうした」


雫が少し寂しそうな顔をしたので聖慈は聞いてみた。


「お兄ちゃんと同じ部屋がいい」

「だってベッドひとつしかねぇぞ」

「そう・・・」


さらに雫が寂しそうな顔をしたので聖慈はため息をついた。

確かに雫は10歳だが家ではもう一人で寝ている。

一体何が寂しいのかは知らないが普段一緒に寝てやる機会が減ってるのは確かなので雫の願いを聞いてやることにした。


「・・・じゃあお前俺のベッド使えよ。俺床で寝るから」

「え、いいの?」

「仕方ないだろ。お前がわがままいうから」

「ごめんね」

「さ、早く寝るぞ」


聖慈はそういってこの部屋に敷いてある布団を自分の部屋に敷きなおした。

それから聖慈は布団に入った。17歳が寝るには少し早いが10歳の雫には遅い。

雫に合わせて聖慈ももう寝ることにした。

雫は聖慈のベッドにうれしそうにもぐりこんで聖慈のほうを見ている。

聖慈は雫の視線に気がついていたが目をつぶって寝ようとした。

5分ぐらいしてから寝息が聞こえたので雫のほうを見てみるとすでに雫は幸せそうな顔をして夢の中に入っている。

聖慈はその顔を見て笑みを浮かべて聖慈も睡眠をとった。


朝、7時ごろに聖慈は目が覚めた。

『何故自分が床で寝ているのか』

最初疑問に思った聖慈だが昨日雫が泊まったことを思い出した。

雫が眠っていた自分のベッドを見てみるとすでにもぬけの殻だった。


「あれ、雫?」


聖慈はとりあえずリビングのほうに出てみた。

すると雫がすでに食事の仕度をしていた。

扉の音に気づいたのか雫が聖慈のほうを向いた。


「あ、お兄ちゃん。おはよう」

「お、朝飯か」

「うん。味噌汁はおにいちゃんの好きな豆腐だよ」

「お。やったー」

「さ、早く食べて準備して」

「ゆっくり食べさせろよ」

「もうそんな時間はないわよ」


確かにゆっくりする時間はない。

二人はすぐに食事をして家をでた。


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