第二十六話 兄の選択
雫の熱愛報道から数週間たった。
聖慈も雫もあれからいつもどおりの生活を送っている。
聖慈もあの悪い予感は気のせいだったのだと思い生活していた。
ある日の朝、雫は朝早く仕事に出かけ聖慈は一人で雫が準備してくれていた朝食を食べている。
いつもどおりTVをつけて食事をしていた聖慈の耳に驚きのニュースが聞こえてきた。
『伊集院雫さん、一緒に暮らしている兄は実の兄ではない!?』
聖慈はその報道に耳を疑った。
どこから自分のことがバレたのだろう…
聖慈がそのニュースに呆然としていると携帯が鳴り始めた。
相手は『優慈』と出ている。
「もしもし、優慈か?」
「兄貴!ニュース見たか?」
「あぁ、丁度今見てるよ」
「雫は?」
「今日は朝一の仕事が入ってるからもう出てるよ。頼みは向こうでこれを聞かないことだよな」
「あぁ」
聖慈はそれから一言二言話して電話を切った。
携帯をテーブルの上に置こうとしたがその前に違う相手から電話がかかってきた。
相手は朝倉だ。
「聖慈君?さっきのニュースはどういうこと?」
「えっと…あのままなんですけど」
「聞いてないわよ。雫も何も言わないし」
「え!?雫もあのニュース見たんですか?」
「いえ、雫はまだ見てないけどどうしたの?」
「雫はこのことをまだ知らないんです」
「え!?じゃあ雫は聖慈君のことを」
「ええ。本当の兄だと信じてます。詳しい事情を話したいので今から会えませんか?雫にはバレないように。それと雫にはこの報道を見せないようにしてください」
「分かったわ。じゃあ…」
それから聖慈と朝倉は会う場所と時間を決め電話を切った。
聖慈は上司にも電話を入れ、今日は休むことを伝えた。
大竹夫妻と彰人も心配してるだろうと思い、大丈夫だという事をメールで伝えた。
それから1時間後、聖慈と朝倉は近くの喫茶店で会った。
雫は事務所に待たして報道を聞かせないようにしている。
「聖慈君。早速だけど詳しい事情を聞かせてもらえる?」
「はい。親父が言うには…」
聖慈は朝倉に全てのことを包み隠さず伝えた。
聖慈と優慈、雫が血のつながりが無い兄妹だということ。
聖慈が託児所から引き取られたこと。
聖慈と優慈はこのことを知っているが雫はまだ教えていないこと。
朝倉はこのことを聞いて驚いている。
聖慈と優慈、そして雫は仲のよい兄妹とばかり思っていたのでいざ本当のことを聞かされても信じれなかった。
だが、聖慈の顔を見ると本当にことだと信じるしかなかった。
「やっぱりそう簡単には信じれないわね」
「ですよね。でも本当のことなんです」
朝倉がそのことを頭の中で理解するにはやはり時間がかかった。
それほど聖慈達が実の兄妹だと疑えなかったのだ。
「とりあえず雫のことだけど」
「雫にはまだ伝えないでもらえませんか?」
「え?どうして?」
「自分勝手なお願いかもしれませんがまだ雫には話す時期ではない気がするんです。今回の報道があったから話すんではなく、雫が落ち着いて聞ける状況のときに俺の口から伝えたいんです」
「でも…」
「お願いします」
聖慈は頭を下げた。
朝倉は正直困った。
このまま雫に今回の報道のことを聞かせずに生活させるのは不可能に近い。
だが、聖慈の気持ちも分かる。
朝倉は少し悩んだが聖慈の気持ちに答えることにした。
「分かったわ」
「ありがとうございます!」
「ただし、今回の報道が収まるまで雫は外国の両親のところに行くこと。これが条件よ」
「え?」
「日本にいるとどうしても今回の報道が耳に入る可能性がある。でも、外国だとその可能性はグンと減るはずよ」
「…」
「あとは聖慈君が決めることよ」
朝倉は席を立とうとしたが聖慈に止められた。
「待ってください。俺の答えはもう決まってます」
「そんなに時間をあげることはできないけどもう少し考えてもいいのよ」
「いえ」
そして聖慈は朝倉に自分の答えを告げた。
朝倉は聖慈の答えを聞き、事務所に電話をかけた。
そして、電話を切って聖慈に目配せをした。
聖慈もうなずき雫が待つ事務所に向かった。
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