第二話 妹の一面
二人は聖慈の住んでいるマンションに着いた。
聖慈の住んでいるマンションは3Fだてのマンションで聖慈の部屋は2Fの壁際にある。
「うっわ〜、きたな〜い」
「しかたないだろ。そんな暇ないんだから」
雫は聖慈の部屋に入るとすぐに顔をしかめた。
一応眠る場所だけは確保してあるが汚いのは確かだ。
聖慈は元々綺麗好きな性格だがそんな気も起こらないほど毎日疲れてるのだろう。
「雫がやってあげるよ」
「いいよ。自分でやるよ」
「いいから先に材料買ってきてよ。冷蔵庫の中身空っぽなんだもの」
「もう一週間ぐらいかえってないからな」
雫は冷蔵庫の中を見ながら言った。
聖慈の冷蔵庫の中にはお茶類しか入ってなくこれではさすがにどの料理人でも料理を作ることができない。
聖慈はこの一週間、ドラマのロケ等の打ち合わせなどもあり家には帰らずロケ現場の近くに住んでいる他の人の家に泊まりこんでいた。
近いのと料理をしなくていいという二つの点から聖慈はその選択肢を選んだ。
「その間雫が掃除しててあげるから」
「しかたないなぁ」
聖慈は近くのスーパーに雫に頼まれた材料を買いにいった。
スーパーまでは片道5分と近場だが聖慈はあまりスーパーに買いにいくことがなかった。
自炊をしないので帰り道のコンビニで弁当を買うからだ。
聖慈は雫に頼まれた材料のメモを片手にスーパーの中を歩き回った。
普段使用しないのでどこに何があるか分からずあっちこっちを歩き回らないと材料を集められなかった。
聖慈がやっと全ての材料を買って部屋に着くと雫の手によって別の部屋のようになった聖慈の部屋が出迎えた。
「あ、お兄ちゃんお帰り」
「うっわ〜、お前そういうところはしっかりしてるなぁ」
「えっへん」
「お前が家にいたら助かるんだけどなぁ」
「え・・・」
雫は床に落ちてる服をきちんとたたみ、本も本棚にアイウエオ順にならべていた。
ここまで綺麗にしてるとは聖慈も思っていなかったので驚いてた。
「こういう家政婦でもいたらなぁ〜」と思って声に出しただけで特に深い意味はないのだが雫の反応がおかしかった。が雫を気にするよりも自分の腹の減り具合のほうが勝った聖慈は雫に材料を渡した。
「腹減った。早く飯」
「あ、うん。ちょっとまっててね」
雫は台所に材料を持って料理の仕度をはじめた。
聖慈は雫の後姿と自分の部屋の変わり具合をみて自分の妹の意外な一面を発見した気がした。
(雫こういう家庭的なとこがあるんだな)