第十七話 兄の事情
雫の高校の文化祭から数週間後たった。
あれから聖慈と雫は特に何の関係の変化もなく日常を送っている。
聖慈は今営業から会社に帰ってきて食堂で食事をとっている。
いつもは雫が弁当を作ってくれるが今日は仕事で朝早かったので弁当はない。
食堂で食事をとっていると友人の彰人が聖慈の方に近づいてきた。
彰人は中学、高校と一緒で大学は離れたがまた会社で一緒になった友人だ。
「よぉ、伊集院。社食とか珍しいじゃないか」
「たまにはいいだろ」
彰人は軽口をたたきながら聖慈の隣の席に座った。
「お前に頼みがあるんだが…」
「俺に?」
彰人が聖慈に飯を食べながら頼んできた。
この態度を見る限り大事な頼みごとではなさそうなので聖慈は頼みの内容を聞いてみた。
「俺にできることならいいよ。で、何を頼みたいんだ?」
「お前今週の金曜日暇か?」
聖慈は週末の予定を思い出した。
土曜日か日曜日は大竹と智子にもお願いを頼まれているが金曜日は特に何もなかった気がする。
「あぁ、今のところは特に何もないけどどうした?」
「実は金曜に合コンがあるんだが…」
「却下!」
聖慈は彰人の口から『合コン』の言葉が出た瞬間に返事をした。
聖慈は合コンが大嫌いだった。
以前にも大学のときに合コンに出たことはある。
が、女性陣が付きまとってくるのが聖慈には耐えれなかった。
それ以来合コンには行かないことにしている。
「なぁ、頼むよ。お前今彼女いないんだし前の彼女だって合コンで知り合ったんだろ?」
「それとこれとは別問題」
確かにその合コンで聖慈は一人の女性と付き合うようになった。
その女性は皿を片付けたりする何気ない仕草が誰かに似てたので好感を持ったのだ。
だが交際を始めてすぐにその女性は聖慈を束縛しだした。
付き合いだして一ヶ月持たず聖慈はその女性と別れた。
聖慈をどうしても誘いたいのか彰人は引き下がらない。
「お前が来ないと女性陣が来ないらしいんだよ。ほら、前に一回俺の友達と街で会っただろ?」
「あぁ、そういえば…」
聖慈はそのときのことを思い出した。
その日は聖慈は彰人と昼飯を食べに外に出た。
そのときに彰人の友人にバッタリ出会わしそのまま一緒に食事をとった。
写真も撮られた覚えがある。
「あいつの友達や知り合いにお前の写真を見せたらしいんだ。そしたらお前が来るなら合コンしていいって言うんだよ。なぁ、頼むよ」
「やだね」
「頼むって。俺もその中に好きな子がいるんだ。だからチャンスが欲しいんだ。頼む!」
彰人はそういって頭を下げた。
聖慈はその姿を見て悩んだが、仕方無いとため息をついた。
「分かったよ。ただし条件がある」
「聞く聞く!来てくれるならなんでも聞くぜ!」
「少しでも気にくわないことがあったら俺はすぐに帰るから。それに二次会があっても俺は一次会で帰る。いいな」
「あぁ、いいよ」
そういって聖慈は合コンの詳しい場所と時間を聞いて食事を終え仕事に戻った。
彰人はその後姿を見送って安堵の表情を浮かべた。
大仕事を終えた感があるのは間違いではないだろう。
そして、金曜日の朝。
いつもどおり聖慈と雫は一緒に朝食を食べている。
聖慈は雫にまだ合コンのことを言ってないことに気づき雫に今日のことを伝えた。
「雫。今日俺夕食いらないから」
「え?どうして?」
「今日メンバー合わせの合コンに参加することになってるから。合コンたって言っても俺は酒を飲んで食べるだけど」
「ふぅ〜ん。分かった。帰りは何時ごろになりそうなの?」
「遅くても10時には帰ってくるよ」
「分かった」
そしてまた聖慈と雫は食事を続けた。
そしてその日の仕事終了後、彰人は聖慈のところにやってきた。
「おい、伊集院!早く行くぞ」
「そんなに慌てるなって」
彰人は聖慈を急かす。
反対に聖慈は彰人をなだめながらゆっくり準備をしている。
準備を終えた二人は合コン会場に到着した。
合コン会場は会社近くの居酒屋だ。
聖慈と彰人はのれんをくぐり予約していた席に向かった。
他の男性陣は主に彰人の大学の友人達だそうだ。
聖慈と彰人が一番遅くに到着したらしくすでに他のメンバーは座っているらしい。
聖慈と彰人の姿が見えたのか見た覚えのある女性が二人を呼んでいる。
「彰人遅い!早くこっちよ」
「悪い悪い。こいつが遅くて」
と彰人は聖慈の方を指差して言った。
聖慈はムカッときたが彰人の顔が「頼む」というような顔をしてるのでとりあえず聖慈は謝った。
「遅れてごめんね」
聖慈は心にも思っていないことを言いながら今日の相手を見渡した。
そこには見たことのある顔が二人いた。
特にビールを持っている一人に聖慈の視線は釘付けになった。
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