第五話「エマの変化」
生きてます!!!
それから数日後、エマは来た当初よりもダリスに恐怖心を抱いているのか、一層口を開く事は無くなり、顔を俯かせたまま上げる事は無くなった。
ダリスが数日間エマの為に生活を合わせようとした結果である。
まず食事、人間が食べる物をダリスはあれやこれやと調理しエマの前に出したが、一口たりとも食べなかった。元の食材が何であったか分からなくなる程真っ黒になるまで焦がされた物など到底口にする筈などなかった。料理を食べないので代わりに林檎等の果物を出す事が毎回の流れになっていた。だが回数を重ねる毎にダリスの苛立ちはほんの少しづつ、わざと大きい音を立てて皿を置いたりする形で表れていった。
風呂事情は人間と魔族で違いは無く、入る分には問題は起きなかった。ダリスがエマの髪を代わりに洗うと言い出しさえしなければ。
力加減の出来ないダリスはエマの長い金髪を無駄に力強く洗おうとした。エマの頭が前後左右に振られ思わず「痛い!」と叫んでしまう程であった。
「止めるか?」
とダリスが聞いてもエマは何も答える事は無かった。
結果ダリスが力加減を変える事は無かった。
二人の生活が始まり一周間が経ったある日、エマに些細な変化があった。
「ほら、飯だ」
何時もの如くダリスは滅茶苦茶になった料理をエマに出した。
どうせ今回もまた一口も食べないのだろう、そうダリスは思っていた。
「……ん」
エマが初めて料理を口にしたのだ。またも真っ黒なその料理を。一口だけに留まらず黙々と食べ続け、遂には完食してしまった。
「完食したか、今日も食べないかと思ったのだがな」
その言葉をエマが嫌味と捉えてしまったかも知れない、なんて事をダリスが自覚する事は無い。
寧ろエマがようやく生活に順応しようと努力を始めた、自身の計画の出発点に遂に立ったと、ほんの少し愉悦に浸っていた。
食事を終え風呂での一連の流れにも、エマは声を発さず痛がる素振りすらも見せる事なく、為されるがままだった。
月が昇り、魔王城の不気味な雰囲気に拍車を掛ける頃。
「それじゃ、さっさと寝るんだぞ」
今日一日上機嫌であったダリスはエマを寝室に連れて行き、その一言だけ伝えると寝室の戸を閉めた。
エマが使用している寝室は少女一人が寝るにはベッドも、外が見える窓も、部屋自体も、余りにも大きく、そして暗かった。
ベッドに横たわったエマは直ぐ様身体を限界まで縮こまらせ、眠りに入ろうとした。
そうしなければ、食べた物を全て吐き出してしまいそうだったから。
そうしなければ、ぐしゃぐしゃになった髪に触れて痛みを思い出してしまいそうだったから。
そうしなければ、孤独と周囲の不気味な雰囲気から来る恐怖で震えが止まらなくなってしまいそうだったから。
「……うぅっ……ひっく……」
眠ろうとしているのに涙が止まらない。一日我慢していた物を全て解放した様に溢れかえって来る。
結果、殆ど眠る事なくエマは次の日の朝を迎えてしまった。
勢いに乗れば勢いだけで書けるとそう思いたいです。
当然本文も勢いなのでどうなっているか分かりません。
でも生存報告出来るならいいですかね()
あるんだよほんとにあるんだよついったー
@GS70_freedom