第四話『魔族と人間の食文化の違い』
この小説の需要は友人にはどうやらある様です。
尚人数は5人にも達していないと思います。
エマが手を掴んだ様子を見てダリスは一つ頷いた。
「賢明な判断だ。ではエマよ目を閉じろ」
ダリスに言われるがままにエマはきゅっと目を瞑った。
「『我が城へと我らを帰せ』」
ダリスがそう紡ぎ出すと、二人を白い光が包み込んだ。
白い光はそのまま宙に浮くと、高速で移動を開始した。
白い光が動きを止めて降り立ったのは高くそびえ建つ城の前だった。
周囲に不気味に生い茂る森林や曇天の空は、まさに魔王の城であると演出している様だった。
白い光が弱まり、再び二人が姿を現す。
「さて、着いたぞ」
ダリスの一言でエマは目を開く。
「ひっ」
「我が城へようこそエマよ」
「まずは、飯だな……」
城の中を歩きながらダリスはそう呟いた。
ちなみにエマは外で見た光景が余程怖かったのか、未だにダリスの手をぎゅっと掴んで一緒に歩いている。
「ごはんたべるの?」
「ああ、腹も空いてきたしな」
エマもまたお腹をくーっと鳴らしながらダリスに案内連れられるがままになった。
やがて、食卓のある部屋に着くと、ダリスはエマを椅子に座らせた。
「ここで待っていろ、何か適当に持ってきてやる」
ダリスはそれだけ言い残すと奥の部屋へと入っていった。
壁掛け時計が重い音を立てて時の経過を刻む。
一人残されたエマが座る食卓はあまりにも大きかった。10人、20人が利用する様なものよりも更に大きく。
数百程の席が二列に分けて並んでいた。
以前は多くの者達で利用されていたであろう。
「おい、飯を持ってきたぞ」
目の前に置かれた物を見てエマは顔を青ざめさせた。
果たしてそれは料理と呼ぶべき物なのだろうか。
スープと思わしき紫色の液体は皿に盛られた今も沸騰している様にボコボコと音を立て、メインディッシュなのだろう黒い物体はやけに刺々しい丸の形をしていた。
無論、ダリスからすれば魔族の鉄板と言っていい程の料理だった。
マンドラゴラをじっくりと煮込んだスープと、コクジンドリの卵焼き。
大好物とまではいかないが、それでもダリスは充分に堪能した。
「……ん?」
ダリスはふと気づく。
エマが両方一口ずつ口にしただけで手を止めている事を。
「どうした? まだ残っているじゃないか」
「……もういらない」
「いらないとは何だ。しっかり食べないと大きくならんぞ?」
「もうお腹がいっぱいだから食べられないのか?」
「……うん」
「……口に合わなかったんだろう?」
エマが静かにこくりと頷く。
「……はあ、もういい。今は我慢しろ、明日の朝別のを用意しとく」
小さく溜め息を吐き、少し苛立ちを含んだ声でダリスは言い放ち、エマの前の皿を下げ、自分の皿と共に奥の部屋へと入っていった。
エマは俯き、その表情はエマの長い金髪で隠れ見えなかった。
「人間と俺達では食べる物が全然違うのか……」
書物のページを捲りながらダリスはそう呟いた。
文句言わずに食べるのであれば好都合なのだが、残念ながら他の魔族の料理を出した所でエマは食べる事はないだろう。
餓死させる訳にはいかない以上、ダリスが人間の食に合わせる他手段はない。
捲っていた『息子必見! 人間と我ら魔族の違い』を閉じたダリスは得た情報を胸に刻み、明日の朝町へ食材を確保しに行く事を脳内にメモするのだった。
文字数が相変わらず短い。
ずっとこんな感じで約1000文字の投稿が続くかと。
時にはもっと長く、もっと短くなるかも。
ついったー
@GS70_freedom