第三話『答えは三つあって一つ』
色々な事で忙しくなり、なんとか落ち着いたので戻ってまいりました。
ダリスの考えはエマを自身の手で育てると言うものだった。
エマの身体を見れば劣悪な環境にいたのは明白。このまま同じ環境に居続ければエマの身も心も壊れてしまうだろう。そうなってしまっては戦いを欲すダリスとしてはとても良くない。
「さて、返事は?」
エマは首を横に振った。
「ふむ、拒否するか。その様子を見ると俺が町を消した事も理解している様だが?」
エマは今度は首を縦に振った。その肩は小刻みに震えている。
だがダリスは不敵に微笑んだ。エマは必ず自分と共に来ると確信していた。
そうならざるを得ない状態だと思ったからだ。
「なら仕方ないな、それは諦めるとして、代わりにお前をジルドの元まで帰してやろう」
「ッ!?」
「俺と来ないのだろう?だったらせめてと考えたのだが」
エマは何も言わずに震えながら首を横に振った。
「それも嫌か? ならどうする? ここに一人でこのままずっと居る気か? お前以外に誰もいなければ誰も助けに来ないであろうここに」
それはエマにとっての極限の選択を強いている事になる。またあの劣悪な場所に戻るのか、町一つ容易く消してしまう力を振るった目前のダリスの元へと行くのか、はたまたこの場に残り何も出来ず孤独に生きるのか。
この世に生を受けてまだ5年、あまりにも重すぎる選択肢だった。
「うう……」
たまらず頭を抑えて蹲る。
「ちなみに俺と来れば訓練はうんと楽になる。酷い事をする事もない。今までより断然よくなる事を保証しよう」
見据えた様に紡ぎ出されるダリスの一言。嘘等ではなく本当に実行するつもりでもある。
「本当……?」
「ああ、本当だとも」
顔を上げたエマの表情は、まだ葛藤している様にも見えるが希望を見つけた様にも見える。
「さぁ、そろそろ決めろ! 俺から言う事は何もない、後はお前が一歩踏み出す、それだけだ!」
畳み掛ける様にダリスはエマに語りかけ、手を差し出す。自分と来いとそれだけで伝える。
目の前に立つダリスは町を消してしまう怖い人。そんな人が一緒に来いと言っている。行きたいとは思わない。だからと言って父親の元に帰るのも絶対に嫌であった。
酷い事はしないと言っていた。もしかしたら思っているよりも怖い人じゃないのかもしれない。少なくとも実の父親のジルドよりは。
様々な思いがエマの中を交錯し、惑わしそして――
エマはダリスの差し出された手を小さな手で掴んだ。
まーた間が空いての投稿です。
それでも暖かい目で見てくれたらなー……なんて
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