第二話『傷跡の多い未来の希望』
サイレント削除、サイレント失踪。
のこのこと今更の投稿です。
勇者の子供がいるという事実が本当であるのならば、必ず大切に育てられている。人間にはほとんど浸透していないとは言え、勇者一派の人間が強力な保護魔術を施しており、不測の事態が起きても大丈夫な様にしているというのがダリスが出した結論だった。
町諸共住人を飛ばした魔術はそれを逆手に取って勇者の子供をあぶり出す事が出来ればそれでよかった。
平野と化した町の跡地をダリスは見回した。
そして見つけた。ダリスの立っている位置から少し離れた所でへたりこんだ一人の少女がいるのを。他に誰もいない事から勇者の子供であるのは間違いない。間違いない筈なのだ。
近づき改めてその姿を見たダリスは眉をしかめた。
白いワンピースのみを身につけたその少女の目には一切の光もなく、どこかぼうっとしており、まだ状況を飲み込めていないようだった。長い金髪はくすんでおり、酷く乱れている。極めつけに手足等肌の見える部分には痣や青タンが痛々しくあった。
「これが勇者の子供だと……?」
信じられないという表情をしたダリスだが、少女の腕に付けられた黄金の腕輪という勇者の子である証を見て軽く溜め息を吐いた。どうやら本物らしい。
「お前、名前は?」
ダリスはしゃがんで少女の目線と同じ一まで顔を下げるとそう問いただした。
少女の方はと言うと突然意識が覚醒したようにはっとした表情になり、直ぐに目の前にダリスの顔があるのに驚いた。
「ひっ」
引きつった声を少女は小さく吐く。怯えてまともに話せないらしい。
どうしたものかとダリスが眼前の少女を見つめながら考えていると、少女の腕にきらりと光る腕輪を見つけた。
腕輪は何一つ装飾が施されていなかったが鮮やかな黄金色をしており、よく見ると文字が彫られている。
「……エマでいいのか? お前の名前は」
腕輪に彫られていた文字を把握したダリスは確認を取る様に問いただした。
「……うん」
エマは怯えながらも名が正しい事を示した。
――妙に沈黙した時間が流れ始める。名前の確認をした後の事をダリスは全く考えていなかった。
正確には考えていた事はエマの姿を見た時に既に没案として扱っていたのだ。
本当はエマと戦う気満々だったダリスだが、痛々しいその姿を見て愚策と考えた。
強引に始めた所で一方的なつまらない展開しか生まれない事が容易に想像出来たからである。
とは言え勇者の子供である以上何か起こしてくれるかと淡い期待を抱いて接触したものの、結局何も起こらなかった。だからこそ現在のこの状況にダリスは非常に困っている。
「お前は今……一人だ」
困った末にでた言葉がそれかと、ダリスは心の中で溜め息をついた。自分自身が作り出した状況なのだから当たり前だろう。
しかしその言葉を発し、状況を再確認した事でダリスはある事を閃いた。
この考えなら自分の目的、全力で戦い合う事が最終的に出来る。
閃いた考えを瞬時に纏めたダリスは一つ咳払いをしてエマに言った。
「エマよ、俺と来い」
(ちゃうねん、ちゃんと書いててん……中々思いつかんかっただけやねん……)
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