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005

 先日星音さんが営む魔女の店を訪ねてから数日、とんでもないことが発覚した。そう僕の魔女登録をすっかり忘れていたのだ。イロイロ話を聞いたり、結界の実験したりで割と充実した時間を過ごしてしまったことでそのことが完全に頭から抜け落ちていた。まあこのことに関しては、誰か一人が悪いとかではなくて全員が悪かった。ただそれだけのことである。

 そんなこともあり、またしてもお店まで出向くことと相成りました。そこでアリスさんが提案したのが、僕一人で行って来いということだった。魔法の練習も兼ねて、何でも良いから魔法を使って店まで行くようにと指令が下った。

『怜君、君ももう魔女だ。まだ一人前とは言えないけれど。だから練習も兼ねて魔法を使って行ってね』

 回想終わり。

 というわけで、現在星音さんのお店目指して空中浮遊をしている最中なのだ。見つかると面倒なので、陽炎みたいな感じで気づかれないようにしているけど。っとそろそろお店のあたりだ。降りるか。

 事前にお店の結界については訊いているので問題なく入店した。

「いらっしゃい。そろそろ来る頃だと思っていたわ。怜君。先日はごめんなさいね。すっかり登録するのを忘れてしまって」

 申し訳なさそうにする星音さんがすぐ目の前にいた。驚愕である。

「……ずっと扉の前で待ってたんですか?」

「い……いえそんなことは。ほらささっと登録してしまいましょ。今度は忘れないようにね」

 登録の仕方はとても魔女らしかった。置いてあった水晶に数滴の血液を垂らすだけのものだった。それは数秒のことだったが、すごく不思議な時間だった。血が水晶に垂れた途端、ふんわりと光りだし部屋の中を眩しくない不思議な光で包まれた。

「はいこれで終了。これで何かあったときに身分の証明にもなるし、一人前だと認められれば依頼も入るようになるの。あと危険が迫っていることを知らせてくれることがあるから、もし直ぐに行けそうだったら行ってあげてね」

「はい、わかりました。お手数をおかけしました。あとこれ、僕が作ったものですけど、どうぞ」

 登録が終わったので、先日のお茶のお礼として僕の作ったクッキーを渡した。

「お口に会うかは分かりませんが、アリスさんに教わって作った魔女印のクッキーです」

「あら、ありがとう。どうせなら一緒に食べない? 今は新人も少なくなってるから話してて新鮮だしどう?」

「すいません。至極魅力的なお誘いなのですが、これからすぐに館に戻って使い魔のことについて学ぶんです。なので早く帰ってこいとのことなので。また次の機会にお願いします」

「あら、残念。振られちゃったわ。今度来るときは使い魔さんも見せてね。ちなみにあたし使い魔は、フクロウの九朗さんよ。よろしくね」

「ええ、それはもちろん。どんなのが出るか不安ではありますが、期待も同じくらいしてますね。楽しみです。では星音さん、九朗さんごきげんよう」

 ちょっと恥ずかしい感じのセリフを言ってみたりしながらお店を後にした。やべえ、なんであんなこと言ったんだろうか。マジで恥ずい。

 いやそれより使い魔だ。どんなのが出てくるのか。定番どころでいけば、黒猫、鴉、梟などだけれどほかに種類はあるのだろうか。楽しみだ。今あるすべてを使って速攻で帰るのだ。

「ただ今戻りました。早く使い魔召喚したいです。どこですか?」

 帰ってきたら、アリスさんがいつもの部屋にいなかった。どうかしたのだろうか。ん、書き置きがある。

『使い魔召喚の準備で庭にいる。戻りしだい来るように』

 どうやら前もって準備をしてくれていたらしい。これは以前から思ってはいたが、アリスさんは僕に甘い気がする。手とり足とりとまでは言わないけれど、割と甘やかされてる感がある。悪い気はしないけれど。しかし、僕も男である、甘えっぱなしはあまり良いとは言えないだろう。男として。なので早く一人前として自立したいところではある。なんて自問自答しているとすでに庭に着いていた。

「おかえり、怜。準備はできている。後は君の覚悟次第だ。どんな奴が出てきても心を強く持て。気をつけることはこれくらいかな。じゃあがんばってね」

 アリスさんは、お店から帰って以降僕のことを呼び捨てで呼ぶようになった。前君付けも良かったけれど、今は少し認められたような気がして少しうれしい気分である。

「では、始めます。準備ありがとうございます」

 僕は、準備された陣の真ん中に立って血を一滴垂らして、祝詞を上げる。

「魔のモノ、我が血を対価に姿を示せ。そして我との契約を望む」

 言い終わると同時に陣が光りだした。それは、つい見惚れるくらい綺麗で暖かい光だった。っと意識をしっかりと保たなくては。

 光が晴れるとともに、召喚されたモノの姿がはっきりとしてきた。それはそれは、綺麗な黒い艶をした黒猫であった。そう黒猫。魔女の中では割とポピュラーな使い魔である。

「お前様が私を呼んだのか。チカラは……あるな。質も悪くない。良いだろう契約を結ぼう」

 猫がしゃべった! 猫がしゃべった !大事なことである。一大事である。さすがの使い魔、言語に関しても問題ないとは恐れ入った。しかもなんだかすごく不遜な態度を取っているが、随分と上級に位置するモノなのだろうか。いや、こんなことを考えている場合でなはい。

「……ええ僕が、僕がお呼びさせて頂きました。来ていただきありがとうございます。ぜひ契約を結ばせて頂きたく」

「契約は、汝が私に名を与え縛ることで成立する。故に良い名を頼むぞ。我が主様」

 なかなか難度が高い契約だった。下手な名は付けれないしどうしたものか。

「コルネリウス、コルネリウスはどうでしょう? 様々な偉人の、偉業を成したものたちの名です」

 正直パッと浮かんだ厨二的な名の中で、一番ましだと思えるものであった。気にいるだろうか?

「よかろう。私はこれよりコルネリウスである。よろしく頼むぞ我が主様」

 そうして僕に、随分と頼りになりそうな使い魔が出来た。それもとても尊大な、それでいてどこかかわいらしい使い魔が。

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