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石山ノ里  作者: 字楠一太
2/2

弍.

 西の空のちぎれ雲はカッと紅くなり、東の空は青々としている。陽がそろりそろりと、沈むのを感じる。


 石畳みの道を見て勘九郎は足が止まった。木々が影になり、穴蔵のようになっている。

「べらんぼーめぇ!いくっきゃねえ!」


 勘九郎は前掛けになるようにダダダッと石畳みの道を威勢良く走った。


 韋駄天、勘九郎。草木が反り返るような走りっぷりである。駆ける足音は藁ばきのシュっとしたものだが力強く、石に足跡が残るのではないか、と具合なのに身体は非常に軽やかで空を颯爽と斬るのであった。

 誰に似たのだろうか?勘九郎は足が非常に早いのだ。



そして、前方を睨んで走っていた勘九郎は徐々に「穴蔵」があるのが見えてきた。



「穴蔵」にあっと十尺(3メートル)といったところで力を抜いて止まった。

まじまじと様子をうかがっていた勘九郎の前に突風が吹く。

 その時、木陰が揺れて「穴蔵」が夕陽に照らされた。

「穴蔵」も石で出来ていて、つるりとして妙に光沢があり、日に当たったことのない女子(おなご)のような青白っぽい色をしていたので勘九郎が知っている石とは勝手がまるで違った。


 そして、もう一度夕陽が照らされた時に「穴蔵」がぬらりと揺れたように見えた。



『こっちへおいで』


 そう誘われているような錯覚が勘九郎を撫でる。

 勘九郎は一掬いの恐れを鳩尾に感じたが、それとは裏腹。妖艶な輝きに勘九郎は吸い込まれるように先へと歩みはじめた。




「いんや〜それにしてもあのトンチキ面白いよな。不気味な石ノ山なんざドキョウ試しだって入りたくねえや。俺らの後にトボトボついてこないあたりを見ると山ん中入るイクジも無いのにバカにされるのが嫌だから道草食ってんだろうな」


 与作率いる三羽烏は村へ続く道を歩きながらそんな事を話していたとさ。

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