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幸運の護衛獣と愉快な少女達(仮)  作者: 直木
2章 エルフ少女と護衛獣
9/12

エルフとの出会い

 城下街で馬を一頭購入する。

 こちらの馬はでかい。

 大人が2、3人乗れそうだ。

 その馬に荷物とモミジが乗る。

 10歳で馬に乗れるとかすごいと思ったが、こちらの馬は気性が穏やかで、大抵の人はすぐに乗りこなせるそうだ。

 因みに俺は乗らない。

 剣が重いので、やめといた方がいいからだ。


 西門で門兵と少し話して門を出る。

 目指す先はマルクト。


「というか、マルクトまでどう行けばいいんだ?」

 歩きながら尋ねると、モミジは手に持っている紙を示した。

「簡単な地図があるから、これ通りに行けば着くわ」

 道は分かる。

 でも、もう一つ心配事がある。

 それは、馬に載せた食料が多い事。

「どれくらいでマルクトに着くんだ?」

「んー。このペースだと、2、3週間って所かしら」

 モミジは簡単に答える。

 いや、俺にとっては長く感じるが、この世界では普通なのだろう。

 でも、テントなんて買ってない。

 つまり、雨ざらしの中野宿――。


 日が落ちてくると、近くの森から枝を拾ってきて集める。

 暗くなる前に火をつけないと危ないらしい。

 魔物も野生動物も、火を恐る様だ。

 火はモミジがつける。

 布切れに油を染み込ませ、枝の下に入れる。

 そして火付け石を2つ、かつんかつんと叩き合わせると火が付いた。

 あまりにも手際が良かったので、経験があるのかと尋ねると、モミジは初めてやったと答えた。

 天才肌ってやつかな。

 夕食は豆のスープと干し肉、それに硬く焼いたパン。

 城での食事に比べるとかなり質素だが、冒険者みたいな食事で、キャンプファイヤーを楽しみながら食べれたおかげか、美味しく感じた。

 2、3日の間は。

 モミジは食料全て、同じ物を買ったようだ。

 朝昼晩と、全く同じメニューが続く。

 長くて3週間この食事なのかと考えると嫌になってくるが、買い物をモミジに任せっきりにしたのは俺なので何も言えない。

 森で動物を狩ればいいのだが、魔物かもしれないので生き物の気配がすると、とりあえず逃げていた。

 果物が、何種類か実っていたため、助かっている。

 そんなこんなで1週間、移動を続けて来たのだが、まだ魔物や盗賊には出会っていない。

 しかし、それよりも恐ろしい者に出会ってしまった。


 この辺りは自然が豊かで、森が多い。

 だが、森の中は危険なので、いつも迂回している。

 今日も、目の前には大きな森が立ち塞がったが、いつも通りに迂回する。

「この森、迷いの森って言うんだって」

 モミジが地図を見ながら言う。

「入った人は出てこれないって噂よ」

 元より入るつもりは無いから問題ない。

 いや、薪集めに入るのも危ないという事か。

「分かった、入らないようにしよう」

 森の方に意識を向けていたせいか、前方に現れた集団に気付くのが遅れた。

 鎧を着た集団。

 肩には鷹のマーク。

 向こうが先に気付き、剣を抜いていた。

 黒髪だ、異世界人だ、という声が聞こえる。

 男達の声に混じって、女の子の泣き声も聞こえる。

「どうする?」

 俺は剣を抜き、モミジに尋ねる。

「どうするも何も……貴方なら全員切り捨てられるんじゃないの? ついでに、兵士の後ろで泣いている女の子も助けるわよ」

 モミジはレイピアを抜いて答える。

 全員倒すつもりの様だ。

「了解」

 俺はそう答えて、兵士の方に駆け出した。


 戦闘は呆気ない程あっという間に終わった。

 兵士は遅いし、俺の動きに付いてこれていなかった。

 剣で防いでも、剣と共に兵士を切る事が出来たのが大きい。

 剣を右、左、と9回振るだけで、9人の兵士が全滅した。 

「ふう」

 剣を鞘に収める。

 分厚い鎧を着ているので、人を殺した感覚があまりない。

 機械を切っているかのようだ。

 女の子の方を見ると、怯えた表情でこちらを見ていた。

 金髪を肩まで伸ばしていて、まるで妖精の様だ。

 髪から突き出ている尖った耳もまたキュートで……。

 耳が尖っている。

 もしかして、エルフなのでは無いだろうか。

 そう思っていると、モミジが隣にやってきた。

「エルフね、まだ子供みたいだけど」

 子供が子供に子供と言っている。

 まぁ、いいけど。

 それにしてもやっぱりエルフなのか。

 視線を下にさげると、ボロボロに破れた服を、手で押さえて――。

 ガツン。

「ジロジロ見ない!」

 モミジに殴られた。

 モミジは馬から降りて、着替えの服をエルフの子に羽織らせると、ぎゅっと抱きしめた。

「怖かったね。でも、もう大丈夫だからね」

 エルフの子はまた、大きな声で泣き出した。


「おや? 僕が居ない間にみーんな死んじゃってる」

 モミジがエルフの子を慰めていると、場違いな明るい声が聞こえてきた。

 まるで嬉しいかの様な声だ。

 慌ててモミジ達の前に出る。

 道の向こうから来る人物は、焦げ茶色の髪の色をした、こちらの世界では全然見かけない、アジア系の顔立ちをしていた。


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