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幸運の護衛獣と愉快な少女達(仮)  作者: 直木
1章 銀髪ヨウジョと護衛獣
5/12

誘拐されたお姫様

「あれ?」

 振り返って周りを見回しても、どこにもモミジの姿は無い。

 お忍びで、との事だったので、今日はドレスではなく、街娘の格好をしている。

 だから見つけきれないのだろうと、慎重に探すも、どうやら近くには居ないようだ。

 突っ立ってても仕方ない。

 数歩来た道を戻った所で気付いた。

 右側に裏道がある。

 まだ昼だというのに、暗く、じめじめとした雰囲気の裏道。

 証拠は無いが、俺の勘はこの先だと確信していた。


 勘を頼りに、右に行き、左に行きしていると、城門の前にたどり着いた。

 どうやらここは、東門の様だ。

 東門は騒然としていた。

 近くの人に話を聞くと、外套を羽織った騎馬の一団が静止を振り切って東方面に走っていったとの事。

 モミジと無関係とは思えない。

「兵は追って行ったんですか?」

「いや、隊長らしき人が、追うなと命令してたな。しかも、通行止めだとよ」

 人が集まって騒いでるのは通行止めされているからか。

 俺一人でも、モミジを追わないと。

 そう思い、人垣を分けて前に出る。

 門兵が槍を交差して道を塞いできた。

「今は通行禁止だ。下がれ!」

 兵の言葉を無視して駆け出す。

「お前!」

 凄まじい勢いで迫る俺に、兵は警戒感をあらわにするが、遅い。

 滑り込んで槍の下を通過した。

 体勢を立て直して、かなりの距離を走った所で後ろから声が聞こえる。

「待て! また門破りが出たぞ!」

 俺は気にせずに走った。


 こちらに来てずっと感じていた事だが、恐ろしく体が軽い。

 ふわふわと浮くようにすら感じる。

 そのおかげか、元いた世界では足は速くなかったが、こちらではかなりの速度で走れている。

 飛ぶ鳥を置き去りにする程の速度だ。

 このスピードなら追いつくかもしれない。

 そう思った俺の視界に、小さく騎馬の集団が入った。


 集団は全部で10騎。

 一番後ろの馬には、外套を来た人間の前にうつ伏せに乗っているモミジが居た。

「あと少し!」

 距離を縮めていく俺の存在に気付いたのか、3騎がこちらに向かって馬首を返した。

 しかし俺はスピードを落とさずにテットを鞘から抜いて、すれ違いざまに2人切りつけた。

 たいした手応えは無かったが、落馬する音が後方から2つ聞こえる。

 それを見て、2騎がスピードを落として左右に並んでくる。

 左の騎手がロングソードを振り下ろしてくる。

 それにテットを打ち合わせると、ロングソードは簡単に折れた。

 折れた先が右側の馬に当たり、右側の騎手が落馬する。

 折れたロングソードを投げてきた。

 顔すれすれを折れた剣が通る。

「うらあああ!」

 ヒヤッとしつつも、左側の騎手を声をあげながら切り捨てる。

 残り5騎!

 そう考えながら前を見ると、4騎が馬を横にして道を塞いでいた。

「どけえええええ」

 叫びながら、真ん中の馬にスピードはそのまま、体当たりをくらわせる。

 馬も騎手も上空高く吹っ飛び、悲鳴を上げながら、森の中に突っ込んでいった。

 すぐに、モミジの乗っている馬に追いつく。

「くそ!」

 騎手が悪態を付きながら剣を振り下ろしてくる。

 それをスピードを落とす事で、避ける。

 お返しとばかりに、背中に向けて、テットを突き刺した。

「ぐっ」

 騎手は短く呻き声を上げると、モミジの上に倒れ込んだ。

 俺はテットを鞘に戻して、手綱を引いた。

 ゆっくりとスピードを落としていく。

 完全に止まると、騎手を落とそうと外套を掴んで引っ張る。

 びりびりびり。

 そんな音と共に外套が破け、中の鎧が露わになる。

 肩の所には、鷹のマークが描かれていた。

 仕方なく、鎧を掴んで引きずり落とす。

 その後、ゆっくりとモミジを抱き上げる。

 すごく軽い。

 目は閉じていたが、微かに呼吸している音は聞こえる。

 よかった、生きていた。

 ほっと息を吐くと同時に、どっと疲れが押し寄せてきた。


 帰りはモミジをお姫様抱っこして、歩いて帰った。

 騎馬の生き残りが襲ってくる事を警戒していたが、生き残りはおろか、死体までも消えていた。

 時刻は夕暮れ時。

 かなりの距離を走っていたようだ。

 長い時間をかけて、ケテル国の近くまでやってくると、ようやくモミジが目を覚ました。

 目を覚ました途端、暴れだした。

「離しなさい、無礼者!」

「モミジ、俺だよ俺!」

 必死に声をかけると、モミジはジッと俺の顔を見た後、ホッと息を吐いて俺の腕に顔をうずめた。

「幸也が助けてくれたの?」

 モミジの声は、少し震えているように聞こえる。

「うん」

 俺が返事をすると、ぐすっと、すすり泣く声が聞こえてきた。

「ごめんなさい。ありがとう」

 モミジは泣きながら、何度もごめんなさいとありがとうを繰り返した。

 俺が追放される事に対して、相当負い目を感じていたようだ。

「私は貴方を見殺しにするも同然な事をしようとしていたのに、貴方は命懸けで私を助けてくれた……感謝してもしきれないわ」

 王様が下した事だから、モミジが責任を感じる事は無いと思うんだけどね。

 言葉の代わりに、ギュッとモミジを抱きしめた。


少し、更新スピード落ちます。学校始まるので。。。

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