表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
幸運の護衛獣と愉快な少女達(仮)  作者: 直木
2章 エルフ少女と護衛獣
10/12

絶体絶命の護衛獣


「ん?」

 焦げ茶色の髪の男は、俺を見ると表情を驚きに変えた。

『もしかしなくても、君も異世界に召喚されたくちかい?』

 耳慣れない言語。

 でも、どこか聞き覚えがある。

『おっと、日本語が分からない?』

 男は困ったように肩を竦めた。

 そう、日本語だ。

「分かる。でも、それじゃあ、俺が話してる言語は……」

『ダアト語、と呼ばれるやつだね。説明されなかったのかい? 召喚された者は、言語が分からないと不便、だから母語を記憶の隅においやり、ダアト語を植えつけるのだそうだよ』

 男は羨ましそうに語る。

『僕の召喚主様は、力が弱くてね。ダアト語も日本語も頭に残ってしまってるんだ。優秀な召喚主様でよかったね』

 気付かないうちに、洗脳の様な事をされてしまっているのだろうか。

 確かに、彼と俺の話してる言語は違う。

 そして、彼の話す言語は日本語だ。

 そこは、彼の言うとおりなのだろう。

 後ろを振り返ると、モミジは不安そうな顔で俺を見上げている。

 よく分からない言語で意志が通じてる事が見て取れたのだろう。

 男は続けて笑顔で提案する。

『君はそこの女の子に騙されているんだ。女の子とエルフの子を僕に渡して、僕の方につかないかい? 色々教えてあげれるし、厚遇を約束するよ?』

 モミジは、確かに隠しているのかもしれないけど、悪意があるわけじゃないと俺は思う。

 そして何より、この男、胡散臭い。

 剣を構えなおす。

 そこから俺の意思を汲み取って、男はより嬉しそうに笑った。

『よかった。騙し討は本望じゃないからね。これで遠慮なく殺せる』

 男も剣を抜く。

 黒く光る剣は、俺の剣と同じ鉱石が使われている事を、ありありと分からせた。

『僕の名前は桜井桐谷さくらいきりや。君を殺す者の名前だよ、ちゃーんと覚えてね』


 桐谷が俺と同じ地球から来たのだとしたら、俺と同じように早く動けるだろう。

 力に関しても、俺と同じ種類の剣を持っている事から、同程度あるだろう。

 いや、正直言って、向こうの世界で凡人を地で行っていた俺が負けている可能性の方が高い。

「もし俺が危なそうなら、二人で森の中に逃げろ」

 モミジにささやく。

「わ、分かったわ」

 モミジは頷いてくれたようだが、果たして本当に分かってくれているのだろうか。

 でも、信じるしかない。

 先手を取られたら、防げる気がしない。

 だから、先手を取りに行く。

 20m程の距離を2歩で詰める。

 そして、右から左に剣を振る。

『甘い甘い』

 桐谷は下からすくい上げるようにして受け流す。

 上げた剣で袈裟斬りを放ってくる。

 思っていた以上に遅い。

 ギリギリの所で後ろに下がって避けた。

 俺はいっぱいいっぱいだというのに、桐谷は余裕そうだ。

 ジリジリと移動しながら、森を背後に取る。

 モミジの方を見ると、森の中に逃げ込んでる所だ。

 俺も逃げようと、タイミングを計る。

 丁度よく、桐谷が上段から剣を振り下ろして来た。

 後ろにステップを踏んで、この隙に逃げよう、そう考えいたが――。

 下ろしたままの剣で、突きを放ってくる。

 咄嗟に剣で防ぐ。

「がはっ」

 剣は防いだが、勢いまでは殺せず、吹き飛ばされて、背中を木にしたたかに打ち付けた。

 桐谷はつまらなそうにこちらを見ている。

 もう終わりか?

 そう言いたげだ。

 まだ死にたくない!

 気力を振り絞り立ち上がる。

 体の奥底から力が湧いてくるようだ。

 剣を構えて足に力を込める。

 桐谷はにやりと笑って剣を上段に構えた。

「やーーー!」

 俺は大声と共に体を反転させ、力いっぱい、進んだ。

 森の中へ。


 幸いにして、桐谷が追ってくる事は無かった。

あれ?エルフの出番が少なすぎる……いやいや、次話からが本番ですって。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ