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第7話 ディメンジャー

 

 

 

 兎神 真也は誕生日の夜、不思議な夢を見た。それは見慣れたいつもの通学路の風景。前を行く親子は彼と共に信号が変わるのを待っている。信号が青に変わると少年が勢いよく横断歩道へ駆け出した。後からゆっくりと歩き出した母親は「危ないから待ちなさい」と子供に声をかけた。横断歩道の中ほどまで進んでいた少年は「はーい」と返事をすると母の元に戻る。その瞬間、親子は赤い影に呑まれた。


 兎神 真也はその瞬間、白昼夢を見た。夏休みが終わろうとする日の午後だった。眼前には恋人の瑠奈が自身に対する怒りをあらわにしていた。彼は彼女を落ち着かせようとするが耳を傾けてはくれない。その最中、事件が起こる。突如、真也の後方から飛来した野球の硬球が瑠奈の顔面に直撃したのだ。瑠奈はこの出来事で女の命である顔に重傷を負う。後に傷は癒えたが二目と見れない姿となった彼女は自らの命を絶った。


 「お前が見たその光景は“ヴィジョン”という。本来、お前自身に訪れるはずだった未来そのものだ。」鷲尾 総司はうずくまる兎神 真也にそう聞かせた。「俺達能力者は“ディメンジャー”と呼ばれる。いや、まだ呼ばれないな。なぜなら、“ディメイション”の能力はごく最近開花した物だ。“ディメンジャー”とはそれに伴って生まれた新生呼称だからだ。」いつからその“ディメンジャー”となったかわからない鷲尾 総司。正体不明のその男は真也が目覚めたという“ディメイション”について語り出した。


 「“ディメイション”はいつ覚醒するかはわからない。深い悲しみの底、死の淵、決まった時間、小さなきっかけ。その可能性は全ての生命が持っている。」真也はまだうずくまっていた。うずくまったまま、鷲尾の声に耳をすます。「“ディメイション”の根源は“アーカーシックレコード”から流れ込む無意識下の情報だ。知らず知らずに欲する未来の映像がアクセス可能者の脳裏に投影される。それが“ヴィジョン”。」意味不明な単語に真也は顔をあげた。そして問う。「“アーカーシックレコード”とはなんだ。」


 鷲尾はニヤリと笑った。それは上を向いた真也の瞳に光が宿っていたからだ。鷲尾は続ける。「“アーカーシックレコード”はこの世界の始まりから終わりまでに起きる全ての出来事を納めた言わばデーターバンクのような物。これは選ばれた人間に素晴らしい英知を授けるコントロール不能な巨大な力だ。人はそれを“イマジネーション”と呼ぶ。」不可解な言葉に真也は眉をひそめた。「イマジネーション、つまり想像力がなぜそんなものからもたらされるんだ。」真也はすでに平静を取り戻していた。そして、抱いていた疑問への答えを知る人物に怒りにも似たその感情はぶつけられた。


 「革新的な出来事は偶然に出現するのではなく常に必然の中で誕生する。魂は熟すのだよ。成長した鳥が空を飛ぶように。卵から孵化した稚魚が大海を泳ぐように。生命のある点で、魂はその生に必要とする情報をアーカーシックレコードから得る。想像力とはその表現の一角であり、その意味を同じくする物は無限にある。」鷲尾の言葉は難解であった。真也は適わない知能レベルで必死に食い下がる。鷲尾は続けた。


 「科学や化学に必要な定理や摂理はすでに存在している。言わば“未発見”な状態なだけだ。現在ある文明の発展はその“未発見”をいかに探し出すかどうかの繰り返し。“発見”し、“開花”するイマジネーションはアーカーシックレコードからの選ばれた魂への“提供”なのだよ。」鷲尾の言葉に頭がかゆくなる思いになった真也は困惑の表情を浮かべた。鷲尾はニッと笑うと締めくくるように口を開いた。


 「つまり、俺達二人はそのアーカーシックレコードに自在にアクセスし情報を得る事が出来る存在なんだよ。未来の情報すらも自在に。考えてみろ。未来を自在に作り変えられる能力。無敵だよ。」真也は鷲尾の言葉の数々について行けなくなっていた。鷲尾はそんな真也にお構いなしに続けた。


 「理解しろ、兎神。お前は死ぬはずの親子を親友の命と引き換えに救った。未来を変えた。そして、だからこそ月上 瑠奈と出会ったのだと。」真也は鷲尾に言われて初めて気付いた。変えた未来だからこそ、瑠奈と出会ったのだと。そして真也は鷲尾の言葉に息を飲んだ。


 「覚悟を決めろ、兎神。そして責任を持て。お前は未来を自分の為に2度変えた。つまり、2度世界を破壊したんだ。」真也は青ざめる。その責任の重さに。鷲尾は真也に告げた。「お前がやった“事象改ざん”は“タイムパラドックス”って言うんだ。宇宙の理に反する大罪だ。しかし、それでこそお前には価値がある。誇れよ、次元破壊者という大犯罪人の汚名を。さあ、同志“兎神 真也”君。俺と世界をぶっ壊そうぜ。」鷲尾は愉快そうに笑い声を上げ、その声は止む事はなかった。



自作小説『Dime†sion』 =第7話=



つづく




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