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第28話 暗雲

 

 

 

 

 龍楽と“悪業=おごう”と“金剛=きんごう”。夜通し続けられた宴も終わり、一夜明けて龍楽は金剛の背に乗り出発した村まで送り届けてもらう道中であった。別れ際、悪業が龍楽に言った。「龍楽よ。お主が教えた世界とはワシが知るより遥かに広いようだ。必ず迎えに来いよ。その時こそ、共に世の中を旅しよう。」龍楽の人柄に惚れた悪業と金剛は一時別れた後に合流し、龍楽の一行に加わる事を決めた。ひとまず龍楽は村に戻り事情を月代と千鶴に伝え、愛馬の桃を迎えに行く。行きには“五刻=10時間”もかかった道のりも金剛の飛翔の力を使えばひとっ飛びであり、“四半刻=30分”もかからなかった。


 「龍楽、どこに下ろせば良いか。」村が近づいたので金剛が尋ねると龍楽は「あそこで良い」と言い指をさした。「わかった。」金剛は龍楽に言われるがままに着陸するとそこは村のど真ん中である。途端に村人の悲鳴が上がり周囲は蜘蛛の子を散らすように誰もいなくなった。「これで良かったのか。」着陸場所の指示に疑問を抱いた金剛が問うと「良い良い」と龍楽は軽く答えた。「これでこそ私が大妖、金剛と友になったという証しだ。すぐに魔物退治成功の一報が村中に知れ渡るだろう。」的を射た答えに金剛が「おぉ」と納得した。


 「それでは、私も一旦帰る。龍楽よ、必ず迎えに来いよ。私も皆で行く旅を楽しみにしているからな。」周囲に強い風が渦巻いて、龍楽と約束の言葉を交わした金剛がふわりと浮き上がる。「あぁ、必ず迎えに行く。その時こそ、この荒れる浮き世の鬼退治だ。」にっこりと微笑みをたたえた2人が拳を突き出しあった。しばらくして一陣の風が吹いた途端、龍楽の眼前から大妖、金剛は姿を消した。「行ったか。」龍楽は少し寂しげに呟くと、それまで脱いで手に持っていた龍骨の兜を頭へかぶった。


 「小太郎。小太郎よ、来い。」月代の待つ犬神神社に向かう前に龍楽は頼もしき友である白い山犬、小太郎の名を大声で呼んだ。すると、ずっとそばにいたかのように小太郎が龍楽の前に姿を現す。「小太郎よ、元気にしていたか。」牛ほどもある大きな山犬の頭を龍楽が撫でると小太郎は嬉しそうに目を細めた。するとそこで龍楽が小太郎に言う。「小太郎よ。お主に命令を出す。これより犬神神社と私の愛馬、桃に近付く者を見張れ。不審な者は怪我をさせない程度にこらしめるのだ。」龍楽の指示に小太郎の表情がきりりと引き締まる。「よし、小太郎。行け。」龍楽の合図の下に小太郎が走り去った。「さて、真相はどうであるか。」その後、不可解な言葉を言う龍楽。今、彼の目は猜疑心に染まり村の上に立ち込める暗雲を見上げていた。



自作小説『Dime†sion』 =第28話=



つづく




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