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第24話 大猿王

 

 

 

 

 龍楽は大妖、“金剛=きんごう”の背に乗って大海原の遊覧飛行を楽しんでいた。時刻はだいたい“未の刻=午後2時頃”。明け方に金剛と問答した後に眠りについた龍楽は“三刻=6時間”ほどの睡眠をとって目を覚ました。体調が回復した龍楽に金剛が笑顔を向ける。2人の間に確かな友情が芽生えていた。


 「これはなんとも、優雅な気分だ。」金剛と共に宙を舞う龍楽がワッハッハと愉快そうに笑いながら叫んだ。すると金剛が言う。「龍楽よ。お主は大した度胸だよ。これからあの怪物とやり合いに行くのに。」呆れ顔の金剛が心配そうに呟いた。「大丈夫だよ、金剛。それより、あの火の山までよろしく頼むよ。」龍楽は金剛の不安を払拭するように言い放った。そう、これより向かうは大妖、“悪業=おごう”が住むという火を噴く山である。龍楽は固唾を飲み込むと震える左手に右手を添えた。


 到着したごろごろと火山岩が無数に転がる山の麓で金剛は龍楽を下ろした。「生きて戻れよ。」金剛は心配そうに龍楽の無事を願った。「ああ。終わったら狼煙を上げるから、また迎えに来てくれ。」龍楽は頼もしい一言を金剛に告げると勇んで大妖、悪業の元に向かった。


 足場は灰で歩きにくい。踏みしめた地面は尖った岩がぼろぼろと崩れた。「悪業の住む山は死の山か。なんと荒涼とし、まるで地獄のようだ。」前に進む龍楽はのどの渇きに耐えかねると携えた水筒の水をがぶ飲みした。次の瞬間、火の山は激しい爆発を上げ溶岩をまき散らすと周囲に岩石の雨を降らせた。とっさに龍楽は襲い来る火の粉を次々と交わした。


 ボガンと、龍楽の眼前に巨大な岩塊が降ってきたかと思うと大地が揺れた。そして、その岩塊は立ち上がるとこの世の物とは思えない雄叫びを上げる。「我こそは灼熱の大猿王、悪業。非力な人間よ、ここに何をしに来た。」地鳴りのような声が龍楽に呼び掛ける。龍楽が言った。「我は龍楽。旅の僧侶。悪業よ、貴様を退治に参った。」今し方、龍楽を非力と言った悪業は大声を上げて笑った。身の丈はゆうに“2丈=6m”はある。「卑小な人間よ、貴様がワシを退治するというか。出来るものか。ワシはいつか世界を征服する者。貴様ごとき、相手にもならんわ。」悪業の傲慢な口上に、今度はそれを聞いた龍楽が大きな笑い声を上げた。「なんだ。貴様、何を笑う。」機嫌を損なった悪業が怒声を上げる。龍楽が言った。「いやいや、失礼した。悪業殿はまだ世界の征服を成し遂げておられぬのかと思ってな。」語り終わると龍楽がまた大きな笑い声を上げた。


 ドガンと、大地を割る豪腕が唸りをあげて地面に突き刺さった。悪業が言う。「なんだと言うのだ。ならば、貴様は世界の征服を成し遂げたとでも言うのか。答えろ。」怒り浸透の悪業の漆黒の顔が紅潮していた。龍楽は不敵に笑って悪業に言う。「それは私“が”お主に勝てば教えてやろう。」龍楽の意味深な言葉が口火となり、2人の熾烈な闘いが幕を開ける。「かかってこい、悪業よ。いざ、尋常に勝負だ。」龍楽の挑発に大猿が牙を剥き襲い掛かった。




自作小説『Dime†sion』 =第24話=



つづく




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