第4話 魔法少女を統べる者と反抗悪魔幼女
──見せてあげるわ! これが私のっ! 私達のっ!! 絆の力だーーーっ!!!
ピンク髪の魔法少女が、光の翼を広げ黒い大地へと急降下する。
その手に持つ、自身の身長よりも長く伸びた世界樹の杖を7色に煌めかせ、地面に向かって振り下ろす。
──パアアアアアアアッ!!
──ゴゴゴゴゴゴゴゴッ!!
杖の光が直撃したのは古き悪魔の王の亡骸。光の魔力がその身体に染み渡り、眠っていた昏い闇魔力と混ざり合って強烈な波動を放ち始める。
──キ、キサマッ! 何をした!? いや、何をするつもりだ!!?
銀髪に黒角の悪魔幹部が、突然の奇行に困惑の声を上げた。
──こっうっ! するっ!! のよっ!!!
──ズゴゴゴゴッ!!
少女の力を受けて、眩い光を纏った巨大な亡骸が浮いた。
そのままの勢いで魔界の空を昇っていく。
──いっけぇええええっ!!
──ゴオオッ!! ドオオオンッ!!!
暗く淀んだ雷鳴の空に7色の大輪が咲く。光と闇のビック・バンだ。
──フォアアアアアア…ッ!!
7色爆発球から凄まじい光の奔流が溢れ出し、その強烈な熱波がドス黒い暗雲を消し飛ばした。
そのまま、枯れて荒んだ魔界の大地を暖かく照らし出し、潤し、生命力をもたらして、広がっていく。
──バ、バカ、な…。魔界に、「太陽」…!?
空は青く晴れ渡り、風がそよぎ、大地に緑が芽吹き始めた。
しばらくすれば実り豊かな土地になるだろう。
──これで地球に攻めて来なくて、済む、でしょ。
──わ、我らを、悪魔を、救おうと言うのか…??
──食べる物が無いなんて、悲しいじゃない?
──…、
悪魔幹部は呆然と空を見上げる。
空には、七色太陽が燦々と輝き続けている。
──いったい、あれは何なんだ…。キサマらの言う「絆の力」とは、何なのだ…?
──そんなの、決まってるじゃない。
見惚れる様な眩い笑顔で、『マジカルリタ』は言葉を続ける。
────「核融合反応」よ!! バーンッ!!
──嵐の向こう♪ 手を伸ばして♪
──探すんじゃない♪ 見つけるんだ♪ 皆の虹を~!♪(エンディングソング♪)
「にゃー…!!」お目々キラキラ~…!
「ええ話や…。」謎関西弁…
「正気?」
麗らかな土曜日の昼過ぎ、理多の自宅でご飯をいただいた後、録画(ブ○ーレイ)を試聴していた。
先週放送のアニメ・マジカルリタ「決戦! 悪魔軍団! これが絆の光!!」(第6期25話目)に大興奮のヒカリと僕とは対照的に、リタちゃんは絶対零度の冷めた視線を送ってくる。
「にゃにゃにゃにゃー!」ばーん!で、ドーン!で、ズバババーンッ!!なんだよー!!♪
「リタってばこのお話の凄さ、分からないの?
悪魔と人間の対立を根本から正そうと光と闇の力を少女達が結束の絆で統合し宇宙の真理を掌握、魔力なんてあやふやなものを人間の奮闘と悪魔達の切実さで絵的に表現そこに子どもでも分かる科学知識を織り交ぜること──」オタク早口…
「うるさい。」核融合が子どもに分かるかっ…
うーん、なんか今日のリタってばノリ悪いな~…。普段のツンケンとも違う刺々しさを感じる。
体調悪い日、ではないはずだけど?
「まったくこれだから原作モデル様は…、もっと原作を読まないとダメだよ──」
「」ゴツっ…
「え。」
僕の額に、いつの間にか握られたリタの魔法杖が突き付けられていた。
圧縮された光属性魔力が火傷しそうなほど励起している。ほ、本気…!?
「わたしは、悪魔・即・消滅が信念なの。知らなかった?」にっこり…!
や、ヤバ…、リタが、割りとマジギレしてる…!?
「ご、ごめん…。調子に乗り過ぎた…。」
「にゃ、にゃんっ…。」
「…、」
「………、」冷や汗だらだら…
「にゃぅ………、」
「…まあ、分かればいいわ。」スッ…
冷めた目のまま、リタが引いた。
どうしよう、僕、何かやらかしただろうか。
ここでヒカリとアニメを見るのはいつものことだし、ちょっといつもよりかは気分が高揚してた自覚も有るけど…。リタも原作のこの回自体は笑って褒めてたはずだし、アニメの出来も最高だった…。
昨晩はこっち来てないから、体に触れてもないし…。最近は新しい魔法少女に(ほにゃほにゃ)もしてない。強いて挙げればこの前のカシュウちゃんと洗脳模擬戦くらいだけど、あれはリタちゃん発案だしなぁ。
う~ん、流石に怖いから魔眼開いてリタの精神を覗きみるか…?? 休日だし、リタ相手には使いたくないんだけど。“背に腹は──”
とそこで、見知った気配が接近してきた。
──ズアアア!!
「あっはっはっ! お兄ちゃんったら弱っちぃの~♪ なっさけな~い♪♪」
「にゃう!」『エリー』、おはよー!
「『エリザベート』…。出てくるなんて珍しいね。」
黒煙と闇火炎を噴き出して僕の影から姿を現したのは、僕の「下僕」の「エリザベート」だ。
天使の輪っかが出来るほど艶やかな銀の長髪に、黒曜石の様な鋭い角、血の様な紅い瞳の美幼女である。僕が呼びかけても拒否することすらある気紛れ屋さんなのだが、今日はどうしたのだろう?
「おっはよーヒカリ~。
うん、リタお姉ちゃんに呼ばれたからね~。」
「呼ばれた?」くるり…
確かにリタちゃんは僕の悪魔力を使えるから、エリ達とも闇通信できるけれど。今までそんなことはしたことなかったはず。
何かトラブルかな。
視線を向けると、リタは寒々しいほど透明な笑顔でエリザベートを真正面から見据えて言った。
「こんにちは。よく来てくれたわね──『陽子』さん。」
「!!?」
「──ア”?」
エリザベートから間欠泉の様な勢いで赤黒い魔力が噴き出した! 部屋の光魔法結界をリタが全力起動して、影響を抑え込んではいる。
そ、それよりも! リ、リタが、エリザベートを「本名」で呼んだ…!? なんで!??
「名で呼ぶなっつっただろ。死にてぇの??」ゴゴゴッ…!
「あら、私も言わなかった? ──『魔法少女に手を出したら容赦しない。』って。」
「!? エリザベート! 後輩ちゃん達に何かしたのか!?」
「…、手ぇ出してないよ。少しからかっただけ。」少し目逸らし…
「あら、火野さんの相棒を食べようとしたり店内で隠蔽魔法を壊しかけたり、挙げ句に求道さんの毒矢魔法を要求して喰らったって聞いたけど?」冷ややか真顔…
「…だ、だから、からかっただけだって…。」火炎しおしお…
本名を呼ばれた怒りよりも、気まずさが勝ってる時点で確定アウトだ…。珍しく魔法少女の様子見とか町の見回りを引き受けてくれて、感心してたんだけどな…。
まあ、「この子」が感情豊かになったのは喜ばしいが…。
「そんなことしたのか…。うん。エリザベートが悪い。ちゃんと謝っておこうか。ね?」
「いーやー! そもそも私は手助けしてあげようと思っただけだし~。」
「手助け?」何か善行…?
「そ。あのカシュウとか言う赤ガキちゃん、お兄ちゃんに惚れかけてるの! だから発破掛けてやろ~って!♪ 好きでしょお兄ちゃん、あんな可哀想な子イジめるの──」
「──陽子。」
ギロリ、と緋の視線が鋭く僕を見上げる。
「ちょっと。スクルまで何のつもり…?」
「…、」スッ──!
「」ビクッ!?
無言で伸ばした僕の腕に、怯えが怒りを超えて固まる陽子。
僕は。彼女をソッと抱きしめ、その軽い体を抱えて座った。
「よしよし…。」撫でり撫でり…
「は…???」ハテナがいっぱい?
そっかそっか。
新しい魔法少女が増えて自分の居場所が減るかもって不安になったんだね。大丈夫大丈夫、そんなことないから。
「なっ…!! 違うわよ! 暇だったからちょっと遊んでやろうって──んっ。」
固い角の根元を揉み解す様に指を滑らせるとヨーコの動きが止まる。
いい子いい子、ヨーコヨーコ。
カシュウちゃんはヨーコとキャラが近いもんね。
取って変わられるって思った? それとも自分みたいになるか心配した?
もしくは──人間のまま救われた彼女が、羨ましかったかな?
「だ、誰が羨むなんてッッ!! あと名前で呼ぶなっ──!!」口裂け目血走り…!!
まったく…。嘘が大嫌いなくせに自分の心は偽るの? 子どもだなぁ。
「こ、子どもじゃ、な──!」黒炎励起──!
「にゃう。」ぽてん! ぽみゅぽみゅ…
「ヒカリ! 肉球押しつけんなぁ!! ぽむぽむすんなぁっ!!」励起停止っ…!
「にゃー。」にくきゅーは、いやしーなんだよー…
「卑しいのはお前だー!」『癒し』でしょうがー!!
いくら怒りの炎が燃え盛っても、仲良しのヒカリを攻撃はできないよね。うんうん。
僕の腕の中でヒカリを頭に乗せたヨーコは、抵抗虚しく、撫で撫で&肉球の海に溺れていったのである…。
──完…。
──────────
「」ぜぇ…ぜぇ…けほっ… チ~ン…
「にゃ~ん。」正義は勝つ、んだよー…
「ま。その子には『恥ずか死刑』がお似合いかしらね…。」杖収め…
20分以上構い倒されたヨーコは、精神許容を超えたらしく沈黙した。
それをずっと冷めた目で見守っていたリタだったが、雰囲気からいくらか険が取れている。
姿勢を正し、床に正座。三つ指付けて、頭を下げる。
「リタ。本当に、ごめん。うちの『エリザベート』が迷惑を掛けた。」
「…、まあ、いいわ。」
ややあってからリタから赦しの言葉が掛けられた。
「いや、この子は本当に危険な存在だ。少し甘やかし過ぎてたかも。締め付けを強める。」
「別にいいわ。『陽子さん』を抑え込めるのはスクルだけなんだから、ちゃんと構ってあげなさい。」
「え、いやでも。」
「そもそも、その『人間悪魔』がこの程度の悪さしかしてないのは平和の証でしょう。これまで通りでいいのよ。」
「…、流石に、無罪放免って訳には…、」
「そうね。なら、働きで返してちょうだい。」
「うん、もちろんだよ。」
さて、どうするのが一番穏当かな。
「まずは次の次元門解放をエリザベート1人に任せよう。ヒカリをお目付け役として付けて…。
僕はタカネと一緒に、ニホン全国を回ろうか。あちこちの魔法少女や魔法騎士の支援──」
「スクルはそこまでしなくていいわ。普段からしてくれてるのだし。普通に後輩達を助けてくれたらいい。」
「え、でも…。カシュウちゃんには何か食べ物を贈るとかするけど、ユミちゃんには難しくない?」
僕のことを心から拒絶している高校生アーチャーちゃんは、何も望まないと思う。だからここ万間市の外のあれやこれやを引き受けようと思ったのだけど。
「そうね、求道さんには戦闘訓練をしてあげれば良いんじゃない? 脳内映像じゃなく実体で、弓の的に徹する形で。」
「な、なるほど…。」毒矢の嵐を延々回避か…
あの子の矢、割りと怖いんだよな~…。魔法少女なのに肉体を本気で鍛えてるから、膂力が全然違うし。お詫びの戦闘だと洗脳して終了する訳にいかないし。
毒は焼いて防げるけど、「熱で変性して揮発毒になる毒液」を生み出したとか思考してたしな…。
まあ、罪滅ぼしにはいいか。たまには死闘レベルの刺激を受けないと勘も鈍るし…、
「あと、そうね。
火野さんには──、デートしてあげたらどう?」
「──え。」
え…??
次回! 悪魔と少女の恋模様!? 新たな下僕誕生なるか!?
「いやいやいや! いやいやいやいや!!?」
皆様、良いお年を~。




