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 その後、エディアルドにお願いして、シアナに手紙を出すことだけ許可をもらった。


 さすがに何も言わずにいきなり姿が消えたとなると、どれだけの心労があるか、計り知れない。引きずられて体調だって崩してしまったらと思うと、気が気でない。いきなり手紙だけ届いた状況も、かなり怪しむと思うが、知らせないよりはずっとマシだ。


「書いた?」


 エディアルドが横から顔をのぞかせる。


「ええ、できたわ」


 私は簡単に書き記した手紙を見せた。


「シアナへ

 急に招待を受けて、友人の家に遊びに行くことになりました。しばらく留守にするけど、心配しないでね。薬はじゅうぶんに用意してあるから、ちゃんと飲んでね!  リゼット」


 一言も、エディアルドの名前を出していない。仮に私を探してハモンド家を訪ねていっては悪いからだ。友人から招待と受けたということにしておく。これでもじゅうぶん怪しい言い訳だが。


 外は日が沈みかけている。いったい、どれぐらい眠らされていたのだろう。

 今頃、シアナは帰らぬ私を心配していることだろう。


「これ、急いでお願いしたいの」

「わかった」


 封書に入れた手紙をエディアルドに渡した。


 夜は豪華な食事を出され、エディアルドと二人、部屋でいただく。


「リゼット、美味しい?」

「ええ、とっても美味しいわ」


 お世辞抜きで、今まで食べた中で一番柔らかなお肉に、味は高級だった。


 こんな誘拐まがいで連れてこられて、よく食べる気になると自分でも思うが、こんな時だからこそ食べないといけない。いつ、どうなるかわからないのだから。

 エディアルドはなにが楽しいのか、上機嫌に私が食べるのを見守っている。


「これ、あげる。こっちも」

「ええっ、エディアも食べなよ」


 エディアルドはポイポイと私の皿に乗せるが、お腹は空かないのだろうか。私ばかりが食べている。


「人と食べるって楽しい。いつも一人で食べることが多かったから」


 あ……。

 カーライル公爵閣下は多忙なうえに、領地を回っていることが多く、カーライル公爵家では一人で過ごしていたっけ。


 だから好んで、ジェラールについて回っていたのか。

 寂しい日々を過ごすことが多かったのだろうな。だからと言って、やっていいことと悪いことはあるけれど。


 ここにいる間は、せいぜい楽しく過ごせるようにしよう。きっと二、三日だと思うから。エディアルドが私に飽きて解放するまで。


 限られた時間、エディアルドと楽しい思い出を作ろうと心に決めた。


 夜になり、湯を浴びると部屋でエディアルドが枕を抱え、待っていた。


「こっちの部屋で一緒に寝よう」


 一緒と言われ、ドキッとする。

 今は魔法で性別を偽っているため、成長は止まっているが、本来なら十七歳の男性だから。だがエディアルドからは純粋な好意を感じるが、嫌らしい感じはしないので、そこらへんの心配はないだろう。


「ほら、このベッドなら、二人で眠れる」


 エディアルドが私にもベッドに乗るよう、手招きをする。


「お邪魔します」


 ふわふわのベッドは寝心地が良く、二人で並んで横になった。


「わぁ、素敵……」


 天井を見上げるとガラス張りになっていて、満天の星空が見えた。ほのかな光が差し込み、あたりを静かに照らす。


「ほら見て。綺麗な流れ星」


 指をさしてエディアルドに顔を向けると、私に笑顔を向けていた。


「リゼット、お話ししよう」


 嬉しそうに声をかけ、私の手をギュッと握った。


「そうね、なににしようかな?」

「なんでも。リゼットの話なら、なんでも聞きたい」


 この状態はパジャマパーティーとでもいうのかしら。

 そこから、取り留めもない話を続け、いつしか眠りについた。



「おはよう、リゼット」


 目覚めるとすぐ横には美少女の顔があった。


 ああ、そうか。私は――。


「おはよう、エディア」

「リゼット、寝相が悪い。夜中に蹴られて、何度も目覚めたよ」

「嘘っ!?」


 思わぬことを言われ赤面する姿を、エディアルドは笑っている。


「ごめんね、やはり別々のベッドの方が良かったわね」

「いや、一緒がいい」


 エディアルドは断固として言い切ると、ベッドから下りた。


「朝だよ、リゼット。朝食を食べたら、外に行こうか」


 エディアルドに手を引かれ、私もベッドから下りた。

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