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今世こそは幸せな結婚を目指します! ~前世を思い出した元聖女は生まれ変わった魔王様に溺愛される~  作者: 乙原 ゆん


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7.朝食の席で

 朝食は、昨夜の晩餐と同じ席に着いた。


 すると、新鮮な牛乳、ゆで卵とウィンナー、ハムを添えたサラダ、ヨーグルトとフルーツ、そして焼きたてなのか香ばしい湯気を立てるパンが運ばれてくる。


「朝食も豪華なのですね!」

「食べなければ体が動かないからな。シャルロットは食べられそうか?」


 その心配は、食が細い女性もいるからだろう。


「はい。私も朝食も沢山食べる方ですので。食べておかないと、浄化魔術を思い切り使えませんし」


 なるほど、とノエル様は頷き、その後はお互いに食事を食べ進めた。

 ノエル様は魔術もお使いになると聞いているし、納得いただけたようだ。

 魔術師は魔力を使うのに体力が必要なため、見た目の割に沢山食べるのだと知られている。

 ふと、ノエル様が口を開く。


「話は変わるが、副騎士団長からも正式に謝罪をしたいと言われている。あわせて、騎士団の物にもシャルロットを紹介しておきたいのだが」

「気にしないとお伝えしましたのに」

「彼らの心のけじめのため、付き合ってもらえないだろうか」


 副騎士団長達のために真摯に願うノエル様に、私はつい頷いてしまう。


「その言い方はずるいです。わかりました。私の今日の予定はどうなっているのですか?」


 ノエル様は、部屋の端に控えているトーマスを見る。


「トーマス、説明を」

「はい。奥方様のご予定は、調整可能でございます。本日は城内や辺境伯領についての説明を考えておりましたが、こちらはいつでも可能ですので、騎士団の方を優先していただく方がよろしいかと。マナーの講師は、旦那様がかつて教わった方にお願いするよう手配しているところですので、少なくとも一週間はお待ちいただく必要があるかと存じます」


 頷くと、ノエル様はほっとした様子だ。

 昨日の件があるので、私が副騎士団長と顔を合わせるのを嫌がると思われたのかもしれない。


「では、食後、一時間程したら迎えに行く。いいだろうか」


 頷くと、ノエル様が少し言いにくそうに言う。


「こちらの都合ばかり押しつけて申し訳ない」

「いえ。私のお願いはこうして叶えてくださっておりますし、歓迎してくださっているのが嬉しいです。旦那様は領主としてのお仕事と騎士団長としてのお仕事もあるのですから、やることも少ない私が合わせるのは当然かと」

「だが、同じ城内にいて、一緒に食事をするのは夫婦ならば当然だ。事情があるなら別だが……。シャルロットは何か私にして欲しいことなどはないだろうか。私に叶えられるものならば何でも聞こう」

「そんな、構いませんのに」

「私が構う」


 少しすねたように言うノエル様に、自然と微笑みが浮かんでしまう。

 とはいっても、ドレスは沢山準備してくださっているし、さらに作ると言われていた。

 それ以外でとなると、と思考を巡らせると、ふと、昨日晩餐の時の会話が思い出された。


「なら、町に行きたいです。昨日おっしゃっていた焼き栗の屋台に連れて行ってください」

「そんなことでいいのか?」


 言ってしまってから、屋台で買い食いをねだるなど、はしたなかったかもと思う。けれど、ノエル様は気にされた様子はなかった。

 ならばと、力強く頷く。


「私、町歩きデートというものをしてみたいのです!」

「そうか。なら、日程を調整しておこう」


 少し嬉しさをにじませるノエル様に私も嬉しくなりながら食事を進めるのだった。



 食事を終え、自室に送ってもらった後。

 約束通りにきっかり一時間後にノエル様が迎えに来てくださった。

 今度は自分の足で歩いて、騎士団の建物がある方へと向かう。

 そして、昨日と同じ部屋へと通された。

 既に副騎士団長と、受付で対応してくれた騎士が待っている。

 私とノエル様が部屋に入ると、さっとその場に跪いた。


「本来は我々が足を運ぶべきところ、本日は、お越しくださりありがとうございます。昨日は、団長の奥方様と知らず失礼な言動をしてしまい、大変申し訳ありませんでした。にもかかわらず、広い心で浄化魔術を惜しみなく使い、騎士団の騎士を救ってくださったこと、感謝を捧げます」


 副騎士団長の言葉に、もう一人の騎士も黙って頭を下げている。


「顔を上げてください。昨日もお伝えしましたが、私は気にしておりません。むしろ、あのようにしっかりと受付の所で部外者を確認してくださっている姿に、これからここで過ごす者として安心感が増しました。これからも、どうぞしっかりと職務を果たしてください」

「我々を許すばかりか、そのように言ってくださるのですね」

「もちろんです」

「なんということだ……! 浄化魔術が使えるというだけではなく、人としての器の大きさも素晴らしい……!」


 驚く副騎士団長に、ノエル様が何故か頷いている。


「そうだろう。私のシャルロットは聖女どころではない。天使のように愛らしく、女神のように器が広いのだ」

「ノエル様。私のってなんですかっ! それに、褒めすぎです」

「そんなことはない」


 ノエル様の言葉に副騎士団長達が頷いて、私は一人いたたまれない気持ちだ。

 その横で、ノエル様はさらに副騎士団長に対して話を続ける。


「万が一、私が不在となった時は、私に代わり、しっかりシャルロットを守って欲しい」

「どうぞ、お任せください。身命に賭しても、必ずお守りいたします」

「わっ、私も、不審者は絶対にこの建物には通しません!」

「うむ、頼んだぞ」


 満足げなノエル様と、決意を決めたような二人に、余計なことは言えないと、私は口をつぐむのだった。

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