34.お茶会準備2
まずは一種類目の紅茶、いつも飲んでいるものにオレンジを浮かべたものだ。
「まずは、こちらをいただきましょう」
紅茶の香りがオレンジで華やいで、逆にオレンジの酸味は感じられなくなっている。
いつも飲んでいるものとは違う紅茶みたいだ。
私はこのままでも美味しいと感じたが、甘みが足りなければお砂糖を入れてもいいかもしれない。
「これは、美味しいな。レモンを浮かべるようなものだと思っていたが、味も随分違う。思っていたより苦みが少ないのもいいな」
ノエル様の言葉にほっとする。
シンディとトーマスも頷いている。
「こちらも、試してみましょう」
別のカップに同じように紅茶を注ぎ、今度は輪切りでは無く、カットしたオレンジの果肉だけを入れてみる。
「味は変わらないな」
「そうですね。でも、見た目は最初の輪切りを浮かべる方が華やかに見える気がします」
ノエル様の言葉に、私も頷いた。
「僭越ながら、私もお茶会という場でしたら、輪切りの方が華やかに見える気がいたします。カットした物は、ガラスポットでお出しするとよいかもしれません」
「なるほどな」
「私も、最初の輪切りの方がよろしいかと」
シンディの提案に、ノエル様も頷いている。
トーマスも輪切りの方が良さそうという判断のようだ。
「では、折角用意してもらったけれど、今回は輪切りの方で進めましょう」
皆、頷いてい賛成を示してくれた。
「では、こちらにクリームを足してみます」
私は、紅茶に浮かぶオレンジの上にクリームを載せ、口にした。
他の三人も同じようにしている。
「あら、意外と合うわね。さすが料理長だわ」
「そうですね。こちらも美味しいです」
クリームを入れると、紅茶の味がまろやかになる。
オレンジの味と喧嘩をするかと思ったが、紅茶に浮かべたオレンジからは良い具合に香りだけが移っているため、香りが良いミルクティのような感じになっている。
「意外といけるな」
「私もです。最初はどうかと思いましたが美味しいですね……」
ノエル様とトーマスにも好評のようだ。
「なら、乗せてみた方がいいかしら」
「そうですね。見た目は、クリームがあった方が華やかですし、良いと思います」
「なら、この紅茶で行く場合は、クリームを乗せましょう。では、次の紅茶にいってみましょうか」
シンディが別のポッドに新しく紅茶を入れてくれて、それぞれ新しいカップを注ぐとフレーバーティに輪切りを浮かべる。
香りを嗅ぐと、こちらの方が癖が強いようだ。
オレンジの香りとぶつかるかもと思っていたけれど、そんなことはない。
「美味しいけれど、好みが分かれるかしら」
「そうですね。私は、先程の方が飲みやすく感じました」
「私は、どちらも好きだな」
「私もです」
この茶葉は好みが分かれるようだ。
女性ばかりのお茶会でだすには要検討、といったところだろうか。
クリームも浮かべてみたが、最初に飲んだ物ほど合わなかった。
一応、保留にして、最後に、スモーキーな香りがするお茶の準備をしてもらう。
「こちらは、少し渋めのお茶なのね」
クリームを入れてみて、もう一度味わう。
「うーん、こちらも、合うと思いますけれど、やはり私は一つ目のお茶が一番飲みやすいです」
「シンディもそうなのね。私も、この中だと最初のが飲みやすく感じたわ」
シンディの言葉に頷いていると、ノエル様達は違う意見のようだ。
「あぁ、これはいいな」
「私も好きですね」
ノエル様が言い、トーマスも頷いている。
「そういえば、こちらにはブランデーを垂らしてもいいかもしれないと料理長が申しておりました。一応、少し持って来ておりますが」
シンディが、小瓶を手のひらで示す。
「私は遠慮しておこう。トーマス、折角だから試してみたらどうだ」
「私も職務中でございます」
「お前が気に入るなら、客人が来た時に晩餐の後に振る舞ってもいい。それに数滴で酔うほど弱くもないだろう」
「では、僭越ながら」
トーマスは一度は断ったものの、今後客人に振る舞うためと言われてカップを差しだした。
シンディがトーマスのカップに数滴、ブランデーを垂らすと良い香りが部屋に漂う。
「これは、味に厚みが増すといいますか、美味しいですな」
「なるほど。なら、料理長に調整してもらうとするか」
盛り上がる二人に、私はシンディと二人で話す。
「流石料理長ね」
一通り飲んでみたが、私は最初の個人的な好み的には最初のものだ。
「全部飲んでみたけど、他の方にも広く受け入れてもらうのなら最初の組み合わせが一番かしら。お茶会には、最初のものにクリームを乗せた物でいこうと思うわ」
「シャルロットの決定に賛成だ」
ノエル様が頷き、シンディとトーマスが頷く。
紅茶を飲み過ぎてお腹の中はチャポチャポしているが、一つ先に進めた。
「シンディ、トーマス、ノエル様、今回は協力してくださりありがとうございました」
「もったいないお言葉です」
「また、いつでも声をおかけください」
シンディとトーマスが頭を下げる。
「私こそ。次もあるのなら、今度は声をかけてほしい」
「次回があれば、その際は声をおかけしますね」
「楽しみにしている」
そして、今回の会は終わった。




