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今世こそは幸せな結婚を目指します! ~前世を思い出した元聖女は生まれ変わった魔王様に溺愛される~  作者: 乙原 ゆん


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26.川の浄化

 結局、私はその日一日で村の畑に浄化と祝福を行う作業を終わらせてしまった。

 予想より早かったようでノエル様には心配されたが、無理はしていない。


 翌日は村の外、川の上流に向かうこととなった。

 村の外に出るうえ、足場も良くないからと、先日、ノエル様を森に探しにいった時に借りた騎士団の制服をまた借りている。

 この制服は城に戻ってから洗濯して、返却予定だ。


 朝、昨日同様に騎士団のテントに向かうと、顔を上げたノエル様から驚いたような表情を向けられた。


「おはようございます」

「おはよう」


 挨拶をしても、じっと見つめられてしまって困惑する。

 嫌ではないが、落ち着かない。


「どうかなさいましたか?」

「シャルロットが私のところの隊服を着ていのが新鮮で……」

「ノエル様を森に迎えに行った時も着ていたではないですか」

「そうだったな。だが、あの時は、それどころではなかったから。こうして改めて見ると、……うん、似合っている」

「ありがとうございます。私も、騎士団の一員になれたようで、隊服を借りられて嬉しいです」


 そして、ふと思いついたことを尋ねた。


「そうだ、隊服を借りている間は、ノエル様のこと、団長って呼んだ方がいいですか?」

「……それもいいな。いや、だが、シャルロットからは名前で呼ばれたい」


 悩むノエル様に、私はこらえきれず笑いを漏らした。


「ふふ、では、間をとってノエル団長というのは?」

「それもいい――」

「あっ、やっぱりだめです。今のは無しでお願いします」


 言葉を遮った私に、ノエル様は怪訝な表情を浮かべている。


「どうしてだ?」


 尋ねられて、私は迷いながら口を開いた。


「……私が、ノエル様って呼びたいので」

「?」

「だって、ノエル様って呼ぶことができるのは、私だけですから」


 呼んでみないとわからなかったが、団長って付けると、私だけのノエル様という感じが薄れてしまうと思ったのだ。


「ノエル様?」


 ノエル様から反応が無い。


「私の妻がかわいすぎるのだが……」

「な、なんでそうなるんですかっ」


 ぽつりと聞こえた言葉に、逆にいたたまれなくなった私は、そろそろ出発しましょうと出発を急かすのだった。



 川上に向かう途中も、瘴気が溜まっている場所が多々あった。


「混沌の森が近いからでしょうか。意外と瘴気が溜まっている場所がありますね」

「そうだな。あの魔獣達が暴れた後だろう」

「浄化をしておきますね」

「助かるが、大丈夫か?」

「はい! これくらいでしたら」


 予定になかったところも浄化しながら進んでいったが、お昼前には目的の場所に着いた。


「この場所だ」

「確かに酷いですね」


 川から少し離れた木々の奥に毒だまりができ、周りの木々が枯れている。

 幸いまだ川までは流れ込んでいないが、大雨が降れば川に流れ込んでしまうだろう。


「早速、浄化を始めます」

「頼む」


 ノエル様に見守られながら、浄化魔術の文言を唱える。


「悪しき息吹、神の御手にて清められん」


 気合いを込めて魔力を込めたからか、一気に体から魔力が減る。

 他の土地よりも多くの魔力を費やして、ようやく手応えらしきものを掴んだ。

 そして、ゆっくりと土地が清められていく。


「……、でき、ました……?」

「十分だ。ありがとう」


 はっとして辺りを見回すと、毒だまりは消え、瘴気の気配も消えている。

 ノエル様の指示で、護衛に付いてきてくれていた騎士が周囲の確認に向かう。


「騎士が確認に行ってくれている。確認が終わったら帰ろう」


 騎士達の確認で問題も見つからず、私達は村へと戻った。



 村へ帰ると、広場に騎士と村人が集まっていた。

 私達の姿を見つけた副騎士団長がやってくる。


「これは……?」

「マルク、何かあったのか?」

「問題はありません。団長と奥方様に村の者達から伝えたいことがあるそうです」


 副騎士団長に促されて村人達の前に向かう。

 そこには私達以外にも、今回この村にやってきた騎士達もあり、彼らも整列していた。


「領主様、奥方様。この度は、我々の村の危機を救ってくださり、誠にありがとうございました。また、駆けつけてくださった騎士様方にも、心よりの感謝を申し上げます」


 村長をはじめとして、村人一同が頭を下げる。


「頭を上げてくれ。私は領主として必要なことをしたまでだ」


 驚くばかりの私と違って、ノエル様は一瞬で動揺を抑えたように見える。

 その姿に、私も冷静さを取り戻した。


「私も、できることをしたまでです。皆様の危機に間に合うことができて幸いでした」


 ノエル様と私が答えると、村人達からは一様に尊敬の籠もった視線を受ける。


「領主様方が動いてくださらなければ、我々は家族を、村を失うところでした。このご恩、一生忘れません。満足なおもてなしもできませんが、騎士様方より食材を賜りましたので、今夜は村の者達が腕をふるいました。どうぞ少しでも疲れを癒されてください」


 そうして、その夜は、騎士団が持って来た食料を使っての宴会が行われたのだった。

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