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今世こそは幸せな結婚を目指します! ~前世を思い出した元聖女は生まれ変わった魔王様に溺愛される~  作者: 乙原 ゆん


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20.緊急事態


 騎士団のテントでは、今後の話が行われた。


 まず、討伐する魔獣についての情報の共有がされる。

 今回、混沌の森から出てきた魔獣は、爪と牙にも毒を持ち、大きな特徴として喉に毒腺があり、縄張りを主張するため口から毒液を吐くという。

 そして、群れで行動しており、狼よりも一回り大きな個体が一体と、狼くらいの大きさの取り巻きが確認されている。

 群れの半数は、昨夜ノエル様達で討伐を行ったため、今夜、夕方から夜半にかけて残りの群れとボスを狩る、ということらしい。


 ノエル様は、現場にいる騎士団のうち、半数を群れの討伐に、残りを村の警備に残すようだ。

 魔獣の群れはこの村を縄張りにしようとしているらしく、魔獣がこちらにやってきた場合は防ぐ必要がある。


 私は村に残る方の隊に分けられ、先程怪我人を治療した村長の屋敷で待機することになった。

 私が怪我をすれば毒を治療する人がおらず、また、どこにいるか分からなければ、重傷人が出た際の対応に遅れが生じる。

 くれぐれもその場を動かないように念を押された。


 会議が終われば、夕刻の集合時間までは休憩時間となる。

 騎士団の方で準備した昼食が振る舞われ、その後は仮眠を取ったり、体を休めたりと皆思い思いに過ごすようだ。


 会議が終わってすぐは込んでいたため、少し村の様子を見て回った。

 毒液の被害を受けた土地の浄化は、全ての魔獣を討伐してからになる。

 今、浄化しても今夜の戦闘で再度被害を受ける可能性が高いので、土地の浄化は最後にと言われていたが、今の段階でどれだけの被害を受けているのか見ておきたかったのだ。

 シンディと共に、騎士が警備に立つ場所まで行くと、魔獣に荒らされた畑が見えてくる。


 毒のせいで、畑の植物は枯れている。それに、直接毒がかかっていない植物も茎が折れたり、踏み荒らされていた。


「かなり酷いわね……」

「土地から毒を除いても、これでは収穫は厳しいかもしれませんね」

「折角、育っていたのに……」


 実際に目にしてしまうと、会議の時に、今夜の討伐まで土地の浄化は待つようにいわれたのに、今すぐにでも、土地を浄化したいと思ってしまう。

 その気持ちを押し殺していた時だった。

 後ろから聞き慣れた声がかけられた。


「ここにいたのか」

「ノエル様、それに副騎士団長様も。もうお話し合いはよろしいのですか?」


 二人は会議の後も残って個別に打ち合わせをしていた。


「あぁ、終わった」

「早かったのですね」

「細かい確認だけだからな」


 もっと時間がかかると考えていたが、そうでもなかったようだ。

 そして、はっとして二人の姿を見比べる。


「ノエル様、もう遅いかもしれませんが、私が着いてきた件で、副騎士団長様へのお咎めは私がお受けしますので。副騎士団長様、改めてご迷惑をおかけしました」

「大丈夫だ。シャルロットの件は私にも責があると言っただろう」

「団長のおっしゃるとおりです。奥方様が気になさるようなことは言われておりませんので、ご安心ください」


 よかったと胸をなで下ろしていると、副騎士団長が付け加える。


「そうだ。それと、しっかりと奥方様の啖呵もお伝えしておきましたからね!」

「たっ、啖呵などきっておりませんがっ」


 慌てる私に、副騎士団長はいい笑顔だ。


「『浄化魔術を役立てるために来た、守られるために嫁いで来たのではない。連れていってもらえないなら勝手に後を追う』ってね。いやぁ、本当、良い方にきていただけましたと感動しました」

「ふ、副騎士団長様!」

「マルク、それくらいにしておけ」

「はい!」


 ノエル様の一言に、副騎士団長はピタッと口をつぐむ。

 恨めしげにその姿を見ていると、ノエル様に名を呼ばれる。


「それより、シャルロットこそ、昼食は? 姿が見えなかったから、探しに来たんだ」

「まだ、ですけれど。先程は人が多くて」

「ならば一緒に行こう。もう大方の者は皆食べ終わっている」


 そして、四人で食事に向かった。



 休息を取り、夕方。

 混沌の森の縁、魔獣を討伐する騎士とノエル様を見送り、私は村長の屋敷で待機する。

 村には、副騎士団長が残るらしい。


 朝方治療した村人は、目が覚めたのかそれぞれの家へと帰り、騎士も皆、元気を取り戻し、人がいない部屋の中はがらんとしている。


 村の奥まった場所にある村長の屋敷には、ざわついた気配は届くけれど、それ以上のことはわからない。


(魔獣の討伐は順調に進んでいるのかしら……)


 しきりに村の外のことを気にする私に、シンディが言う。


「ご心配ですか?」

「……そうみたい。皆様が高い実力をお持ちだということは頭ではわかっているつもりなのに」


 前世では、魔王を討伐に行く前にも、浄化魔術の訓練をするためや、勇者との連携を高めるために魔獣の討伐に参加することもあった。

 その時でさえ、こんなにも怖いと思うことはなかったのに。

 どうしてか、胸騒ぎが抑えられない。


「私も、このような場所にまで来たことはありませんが、辺境伯様も騎士様達も、今までも沢山の魔獣を討伐してこられています。だから、今回も、きっと大丈夫ですよ」

「……そうよね。ありがとう。私が動揺していてはダメよね」


 そんな会話をしていた時だった。


「奥方様!」


 伝令が駆け込んでくる。


「緊急事態が生じました。急ぎ、広場においでください」

「どうしたの……?」

「詳細は副騎士団長から話がありますので、どうかっ」

「わかりました」


 私はシンディと共に、伝令の案内で広場へと向かった。

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