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史上最強の4匹  作者: カイワレ大根
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7話 将軍職なんて、所詮事務

町の様子はもとの世界の日本と大きく変わらなかった、と4人が思ったのは一瞬だけだった。

町にはビルが立ち並び、4人と同じような姿の人たちが歩いている。道には木々が植えられており、とても心地がよかった。もとの世界と似ているのはここまでだった。


まず、この世界では、車が空を飛んでいた。その様子は一見、好き勝手に走っているように見えたが、よくよく観察してみると2台の車が並走していたり、何台かの車が一列になって走ったり、曲がっていたりと、目に見えない道路を走っているようだった。


また、空を飛んでいるのは車だけではない。生身の人も車とぶつからないように、車よりも高い高度を飛んでいた。

そして、道には木々は植えられていたが、街灯が見当たらなかった。街灯を探そうとして分かったことだが、ここには電線も電柱もなかった。

これらは魔法によるものなのだろうか。それとも、元の世界以上の科学力が、この世界にあるのだろうか。

4人、特に男子たちは、目を輝かせながら、興味深そうに町の様子を観察しながら招待状に記されている住所まで歩いた。


最初その場所についたときに4人が思ったことは、「場所を間違えたかな」だった。

招待状にあった地図の通りに道を進み、迷ったら、道行く人に話を聞いていった。町の人たちは快く4人に道案内をしていた。どうやら、将軍はかなり頻繁に国民と会っているらしく、情報収集に苦労はしなかった。そこから見えてきた将軍の人物像は、冷静沈着で非情、しかし民のことを一番に考えている、というものだった。

そうして話を聞き、4人がたどり着いた先にあったものは、普通のビルだった。

もちろん、それは立派なものだったが、お城や豪邸、国会議事堂のような建物をイメージしていた4人は本当にここで会っているのか疑っていた。


「・・・とにかく、入ってみるか」


そう言って入っていった真司に続いて3人はビルの中に入っていく。

ビルには扉がなく、中が丸見えだった。しかし、入り口が二重になっており、4人は、一つ目の入り口と二つ目の入り口の間で一度立ち止まった。

ビルの中に入って一番最初に目についたのは中央に建てられた柱の中に埋め込まれた電光掲示板だった。その掲示板によると、どうやら将軍室という部屋は一階にある。つまり、将軍がいるのは1階のようだった。

4人は、将軍の居場所を確認すると再び、ビルの中に入ろうとした。しかし、2つ目の入り口を入ろうとしたとき、見えない壁に阻まれて、それ以上進むことができなかった。


「・・・っつ」

「・・・だ、大丈夫ですか?」


先頭を歩いていた真司は、その壁に額をぶつけてしまい、痛そうにうずくまってしまった。


「・・・なんだこれ、、、見えない、壁?」


痛がる真司とそれを心配する凛花と正也。そして真司がぶつかった壁を確認する宗司。

このままでは、将軍に会うことができないと、どうしたらよいかわからず、その間で立ち往生する4人に、どこからともなく、声がかけられた。


「入場許可証、認証ID、招待状ノイズレカヲゴ提示クダサイ」


その声は機械的な音声だった。その声を聞いたとき、一瞬びっくりした4人だったが、その声が2,3回繰り返された後に、招待状のことに気付き懐やポケットから招待状を取り出した。

しかし、今いるところにこれを読み込みための機械のようなものは見当たらない。

とりあえずと、正也が声のしたほうに紙を掲げてみると、


「招待状、確認シマシタ。鈴木正也様、佐藤凛花様、一条宗司様、加藤真司様、ドウゾオ入りクダサイ」


と、掲げていない人も一緒に、承認されたという声が聞こえた。

そして、真司がおそるおそる手を伸ばすと見えない壁はなくなり、手は何にも阻まられずに、入り口の向こう側へ行った。

2つ目の入り口を通り過ぎると、中はとても広く、開放感があった。

中央の柱に電光掲示板があり、横を見ると壁に2対、計4つのエレベーターらしきものがあった。

柱の向こうにも道があり、その両脇にいくつかの部屋があった。

部屋は中が透けて見えるものと、全く見えないものがあった。

部屋の中が見えるものしか見ることはできないが、この建物内に人の気配はなかった。

4人が、おそるおそるビル内を進むと、一番奥の部屋に将軍室と書かれた扉があった。

将軍室は中が透けており、中には机と大きな椅子があり、棚にはなんだつかの本がしまわれていた。

しかし、肝心の将軍らしき人の姿がそこにはなかった。

正也が疑問に思い、みんなに質問する。


「・・・ほんとに、ここで合っているのか?」

「でも、将軍室って書いてあるよ?」

「なんかの罠か?真司さん、建物、調べられます?」

「ちょっと調べてみるよ」


真司は宗司の提案を聞き、その場でしゃがみ込み、ビルの床に触れてみた。


「特に罠っぽい感じはないかな」


そういう真司の答えに、宗司は「う~ん」と考え込む。

ふと、凛花が宗司に質問した。


「その罠っぽい感じってどうやってわかるんですか?野営したときは分からなかったですよね?」

「人工的に作られたものを触ると、その性質だけじゃなくて、使い方と、それが作られた目的、現在の使われ方もなんとなくわかるんですよ。それで判断してます」

「へ~!すごいですね」


真司と凛花が話していると、今度は、正也が提案した。


「・・・とりあえず、将軍が来るまで、ここで待っていますか?」

「まあ、それしか、、、ちょっと待て、足音が聞こえる」


宗司と同じように、3人も一斉に今来たほうを振り返った。

足音はどんどん近づいていき、やがて、一人の男が姿を現した。

男は長身で、190はあろう背丈に白髪の頭、また、口をマスクで覆っていた。服装は柔道着のような服で、中に下着も来ている。また、腰にひょうたんをぶら下げている。


「待たせてすまない」


イトウさんが連絡を取ってくれたのか、男は4人がそこにいるのが当然というそぶりだった。

男は4人のそばを通り過ぎ、将軍室の扉に手をかけた。


「よくぞお越しになられた」


そういって男は4人を部屋に招き入れ、全員が入ったことを確認すると扉を閉めた。

そしていきなりしゃがみ込んで地面に手をついた。

すると、魔法陣が出現し、新たに大きな丸いテーブル一つと、その周りに四つのいすが生えてきた。

そして男は初めからあった椅子のところへ行き、


「席につくといい、座り心地が悪ければ椅子を変える、遠慮せずに申せ」


そういうと男は椅子に座り、4人の様子を観察した。

4人は、急に地面から椅子と机が生えてきたことに驚きつつも、男の言うとおりにそれぞれのいすに座った。

椅子は、座席と背もたれの角度が90度以上になっていたため、座りづらいということはなかったが、すべて金属でできているため、お尻が少々痛く、特段座り心地がよいというわけではないものだった。

4人が椅子に座り、特に変更の要望がないことを確認した男は自己紹介を始めた。


「ようこそ、異世界からの客人たち。我は海の国の第6代目将軍、ナガツカと申す」

「こ、こんにちは、私は、」

「そなたらのことはイトウ医師から聞いている」


将軍、ナガツカの自己紹介に返事をしようとした真司の言葉が、ナガツカ将軍によってさえぎられる。


「そなたらは異世界の一般市民でありながら隣国、アトキ国で召喚されアトキ国の兵として魔王とやらと戦争させられそうになった、と。隣国のことながら、同じ世界のものとして恥ずかしく思う」


そう言ってナガツカさんは謝罪の言葉を述べた。

この世界には謝罪のときに頭を下げるという文化がないらしい。

目をまっすぐ見られて謝罪されるのにはまだ慣れそうもなかった。


「い、いえ、あなたが謝ることでは、」

「謝罪は大丈夫です、それよりも私たちはすぐにでも元の世界に帰りたいです」


4人のこれまでと、4人の心情を考慮し、隣国の代わりにと謝罪の言葉を述べた将軍に、真司は自分たちの希望を伝えた。

凛花と正也は将軍の謝罪の言葉に、なんと返してよいか分からず、正也は目を泳がせて黙り、凛花はたしどろもどろになった。

それに対し真司は冷静に将軍と話した。宗司も落ち着いて将軍の目をまっすぐ見ていたが、何から話すか迷ってしまい、結果的に沈黙していた。そして、ここは真司に任せたほうかよいと宗司は判断した。


「我々もできればすぐにでも君らを元いた世界に戻したいと思う。が」

「難しいですか」

「申し訳ない」


宗司と正也は特に気にしていないが、凛花はあからさまにがっかりした。


「やはり、禁忌だからですか?将軍という職業は位の高い職業だと思いますが、あなたでも行うことはできないんですか?」


ナガツカさんは真司の言葉を肯定した。そして、それは権力は関係ない、と付け加えた。


「確かにこの世界では異世界に渡すことは禁忌とされている。しかし理由なく禁忌としているわけではない。今から理由を話そう」


その言葉を聞き、4人は将軍の話に注目した。


「異世界へ渡ることは、その危険性から禁忌とされている」


その理由に宗司が質問した。


「危険性って、未知のウイルスや微生物のことですか?」

「もちろんそれもあるが、それ以上のことがある」

「・・・?」

「前提から話そう。それぞれの世界は、惑星のように自転や公転のような動きをしている。ものすごい速さでな。よって、ほかの世界に行きたいとなったら前提として、莫大な計算が必要となる。それに加え、世界を渡るための膨大なエネルギも必要だ」

「・・・そんな」


異世界へ行くことの困難さを教えられ、凛花が絶望の表情を浮かべた。


「さらに、これが一番の鬼門だが、すさまじい精度も要求される」

「・・・精度・・・ですか?」


さらに異世界へ行く条件が追加され、困惑する真司。それを気にせず、将軍は続ける。


「そうだ、そなたらは異世界の、小さな星に戻りたいのであろう。別の世界の、広い宇宙の中の小さな銀河にある、小さな星に的確に君らを送り返すということは、飛んでいる鳥に住んでいる特定の寄生虫を吹き矢で殺すことよりも難しいのだ。もし、いずれかでも失敗すれば・・・」

「・・・失敗すれば?」

「君らは世界の間に放り出され、そこで想像するのも恐ろしい死に方をするだろうな」


絶望的な状況を告げられ、4人は何も言えず固唾を飲んで将軍の話を聞いていた。しかし、ふと宗司が気になる点を将軍に投げかけた。


「・・・アトキ国は僕たち四人を正確にこの世界、アトキ国に召喚しました。なんで逆はできないんですか」

「召喚術の原理は皆同じだが、仕組みは大きく分けて二種類ある。ある特定の人、モノを呼び寄せる電話型、完全に無作為な落とし穴型と、よく言われている。おそらくアトキ国が行ったのは異世界召喚は後者。術者から一定範囲離れたところに任意の数、大きさの空間の歪みを起こす魔法陣を発生させ、そこに触れたものを強制的に術者の指定した場所に呼び出す。これならば、必要なのは術の知識とそれに見合った魔力量だけでよい」

「・・・要するに、私たちは本当にたまたまだったということですか?」


将軍の説明を聞いて、凛花が、何とも言えない悲しみに満ちたような声で質問した。


「・・・電話型には分かりにくいが必ず目印が必要だ。君らに特に目印は見当たらなかった。つまり、そういうことだ」


その言葉を聞き、元の世界に戻りたがっている凛花と真司はこぶしを握り締め、歯を食いしばった。

また、正也も、心なしか落ち込んでいる。

3人は、心のどこかで期待していたのだろう。この世界に召喚されたのにはきっと、特別な理由があるのだろうと。特に、凛花と真司は、そう思うことで元の世界に戻れない不安や怒りをごまかしていたのだろう。

しかし今、その理論は否定された。4人が召喚された理由は、4人がたまたまそこにいたからだ、と

ただ、その4人の中で、宗司は無感動だった。


「・・・君は冷静だな。一条殿」

「・・・慌てたら、元の世界に帰れるのですか?それに、今の話を聞くと、条件さえ満たせば、元の世界に帰る方法があるといっているようにも聞こえます」


一瞬、自分の名前が知られていたことに驚いた宗司だったが、そもそも招待状を送ってきた時点で今更な話だったと思いなおし、さっきの将軍の話から読み取れたことを将軍に指摘する。

その指摘を聞いて、凛花と真司はいったん、宗司のほうを見た後、すがるような目つきで将軍のほうを見た。


「君の考えは正しい。確かに、条件さえそろえばそなたらを元いた場所に戻すことは可能だ。・・・しかし」

「なら、その条件をそろえる作業、私たちも手伝います。なので一刻も早く、私たちを帰してください」


将軍の言葉を遮り、凛花が声を上げた。元の世界に戻るため、どんな困難でも迎え撃つ覚悟をした凛花だった。その凛花の言葉を聞き、口を閉ざし、しばらく凛花を、いや、4人を見ている将軍。


「他のものはどうする」


しばらく黙っていた将軍からのその言葉に、真司がすぐさま反応した。


「もちろん、手伝わさせていただきます」


元の世界に一刻も早く帰るため、できることは何でもやる。凛花と真司はそう覚悟を決めた。

将軍はその言葉を聞き、残りの2人のほうを見た。

宗司は元の世界にそれほど未練はない。しかし、好奇心、知識欲の強い男だった。元の世界で成績優秀だったのも、親が塾へ通わせたこともあるがそれ以前に、その好奇心ゆえ、勉強が苦ではなかったことが大きかった。そんな宗司が


「僕もぜひ、手伝わせてください」


と返答するのは自然なことだった。

宗司が返答し終わると自然と、将軍を含めた4人の視線は最後の正也に集まった。


「俺もやります」


正也も、そのように答え3人は将軍のほう振り返った。しかし、将軍は先ほどとは違い、正也のほうをしばらく見ていた。

正也が耐え切れず、目線を泳がすと、将軍も目線を外し4人のほうを見た。


「こちらから頼むのは忍びなかったので、君らから言ってもらえるとありがたい」


その言葉を聞き、4人は得意げだが、将軍は「と、いいたいところだが」と話を続けた。


「知識や技術に乏しい君らは、本質的に異世界転移の術に携わることはできんのだ。よって、君らにはまず学業に勤しんでもらい、その傍ら材料集めなどの雑用をしてもらうこととなる」


その言葉を聞き、凛花、真司、宗司の3人は不服そうな顔をしたが、「まあ、当然だな」と思い、将軍の言葉に従うことにした。

一方、正也が学業にいそしんでもらうといわれた時に特に嫌な顔をしたことを、将軍は見逃さなかった。

しかし、そのことには触れずに、今後について話し始めた。


「戸籍のほうはすでに作成済み、しばらくの宿泊所も手配してある。今からそこに案内しよう。明日は朝9時ごろに迎えに行く。その後、君らがどれほどのことができるのかの試験をする。今日はしっかり休め」


そう言うと将軍は席を立ち、部屋から出ていった。それに4人も付いていった。

どうやらそこへは徒歩で行くようで、4人は将軍の後ろをカルガモのようについていった。


将軍は海の国の民から本当に慕われているようで、道行く人道行く人皆将軍を見つけると「お疲れ様です」とねぎらいの言葉をかけたり、手を振ってきたり、子供でも、握手を求めたりしてきた。そして将軍は、それら一つ一つに応えていた。


正也は町の様子の観察をし、宗司は将軍と国民の様子を観察していたため気にならなかったが、凛花と真司は、なんだか親が子供と連れているようなこの状況に恥ずかしさを覚えていた。

しばらく歩いていると、将軍が4人に話しかけた。


「それにしても、よく一国から逃げ出せたものだ。魔法も何も使えなかったのだろう?」

「いえ、この世界に来るときに翻訳、地図、時計の3つの魔法、まあ、魔法の使い方がわからないので自動で発動している翻訳しか役立っていませんが。それと4人それぞれ違う一つの固有魔法というものをもらってそれはなぜか使い方がわかったのでそれで逃げられました。固有魔法はそれぞれ」


気まずさと恥ずかしさに耐えられなかった凛花が、それらをごまかそうとすごく饒舌に話している途中で、将軍は「待て」といって話を遮った。


「そう簡単に固有魔法を話すものではない」


その静かでありながら、威圧感のある声に、体をこわばらせた凛花。その凛花に変わり、真司がおそるおそるその理由を尋ねる。


「・・・ど、どうしてですか?」

「魔法に限らず、固有の能力は一つの切り札だ。それをむやみに公開していれば、いずれ後悔することになる」


そう言って、将軍は静かになってしまった。固有能力をひけらかして後悔した人を思い出しているのだろうか。

しかし、将軍は、すぐに話を再開させた。


「確か『時計』の魔法が使えたのだったな」


話は、4人が共通して使える魔法に戻った。


「いえ、ステータス画面ってわかりますか?」


真司は、自分たちが使えない魔法を知っている理由を話し始めた。


「無論、知っている」

「アトキ国に来た時にそれを見せられて、そこに書いてあったんです。でも結局使い方がわからなくて」


真司の話を聞き終わると、ナガツカさんは顎に手を当てて考えた。


「どうやら、かなり基礎から教える必要があるな」


将軍はそう言ってふーっと、小さなため息をついた。

どうやら明日の試験はかなり絶望的なようだ。


「すみません」


そんな将軍を見て、その言葉が凛花の口をついて出た。すると、将軍は不思議そうな顔をしながら凛花を見た。


「なぜ謝った?不思議な奴だな」


それだけ言い、すぐに前を見た。そして、歩きながら話をつづけた。

その後、凛花と真司と将軍、途中から宗司と正也も加わって雑談をしていると、


「着いたぞ」


将軍は立ち止った。その前には、元の世界でもよく見た、ビジネスホテルがあった。

しかし、中は違った。

広々としたロビーにシャンデリア、床にはきれいな絨毯が広がっており、大きなエレベーターが4つ設置されていた。


「これが君たちの部屋の番号だ」


そう言って将軍は4人にカードキーを渡した。まだホテルに入って1分もたっていないというのに、いつの間に手続きをしたのだろうか。と思っていたが、どうやら朝に一度来ていたらしい。


「夕食は今から4時間後。部屋の中で注文すれば部屋で、いつでも食べられる。朝食は一階で、朝7時からだ。金は我が持つ。もしわからないことがあれば従業員か案内機が使える。では、また明日9時に」


そう言って将軍はホテルから出て行った。

部屋は1人1つわり振られており、中もリゾートホテルほどではないが広々としていた。

宗司がふと部屋を見渡すと、壁に扉付きのドリンクバーのような機会が取り付けられていることに気付いた。横にはボタンがあり、書かれている文字は読めるが、それが何なのかは分からなかった。

試しに一番上のボタンを押すと、30秒後、扉が開き、中から麺料理が出てきた。

これがおそらく部屋での注文というものなのだろう。面の味も良好で、出汁がよくきき、もちもちでコシのある食感だった。


今は昼過ぎ。暇になった宗司は情報収集と、明日の試験対策のために図書館へ赴いた。受付に尋ねたところ、意外と近くにあった。

ちなみにほかの3人は、食事をとったり、湯船につかったり、テレビを見たりしていた。

宗司は、図書館につくと、とりあえずはと、入り口近くの本を手に取ってみたが、書いてあることが難しすぎる。

どうしようかと困っていると、子供用の図鑑や絵本が目に入った。さすがに子供用とあって、宗司にも理解できた。

そこには、フィクションのものもあっただろうが、魔法と科学が入り混じったこの世界で何がフィクションなのかは分からなかった。そこで宗司は、本の内容を軽く頭に入れつつ、この世界の文化や価値観を知ろうと努めた。

宗司は結局、閉館時間まで子供用の本を読み漁った。

夜、ホテルに戻ると、ちょうど夕食時間だったが、宗司は大勢で食事をとるのが好きではなかったので、昼間と同じように部屋で注文した。

すでに凛花は部屋で寝ており、正也はテレビの前から離れたくないらしく宗司と同じく部屋で食事をしていたため、食堂に下りたのは真司一人だけだった。

その後3人は、風呂や歯磨きなどを済ませ、偶然にも同じタイミングでベットにもぐり、眠りについた。

時刻はもとの世界基準で、11時ごろのことだった。

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