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史上最強の4匹  作者: カイワレ大根
50/52

50話 何でもない宴

エリュシアさん。怒りのあまりホームステイ先の壁を殴りつけるも、壁は無傷。

「すごかった!あんたがあんなに強かったなんて!・・・俺も同じ異世界から来たのに」


宗司への称賛と、自身への停滞感による悔しさを同時に吐露しているのは、宗司とともに買い物をしている正也だった。


「そこはコバンに感謝だな。あまりしたくないが」

「コバン、先輩?」


スーパーで小麦粉を探しながら仏頂面で宗司は話す。


「覚えていたか」

「覚えていたっていうか、マツサカ先輩から聞いてるだけだけど」


小麦粉、卵、天かす、その他色々を買った宗司たちは、スーパーを後にする。


「ま、そんなわけで、コバンに日夜ぼこぼこにされていたんだよ」

「すごいな、そんだけやんないとだめなのか?それにしてもコバン先輩、闇、いや陰?」


宗司は、コバンと付き合ってからの彼女の無茶ぶりとお遊びについて語った。しかしそれは皮肉にも、彼を強くすることにつながっていた。

正也は、真司がこれまで経験してきた苦痛を想像し、打ち震えている。


「どっちも正解だよ。闇属性と陰属性は時代や地域によって呼び方が変わってるだけ。歴史でやっただろ?」


正也のためらいに、ヤマメは右手で丸を作り、過去の授業を思い出すよう正也を導いた。


「整理して自分の中に落としこみなよ。先生の話を聞くだけが勉強じゃないだろう?それに話を聞く限り、魔法じゃないね。魂力由来の結界術辺りだろう」


勉強嫌いな正也にとっては耳の痛い言葉がヒラマサの口から出る。


「なんか、すみません」


正也はぺこりと頭を下げる。勉強できていないこと、頭が悪いことを、責められているような気がして。


「何に対して謝っているか分からないな。それは反省じゃないね」

「もういいだろ?ハイ」


嫌味なヒラマサの言葉をさえぎって、ヤマメはヒラマサにアイスの棒を差し出す。


「ほら、お前らも」


続いて宗司と正也にも別のアイスを渡した。


「初めて見るな。新作か?」

「そ。ゲーム内での評判や売れ行きを見て、現実で売るか決めてんの」

「美味いなこれ」

「今日は特に熱く気温が設定されてるからね。それも相まっている」


4人がアイスを食べながら歩いていると、後ろから声がかけられる。


「あれ?買い物帰り?」


4人が振り返ると、そこには凛花と、宗司のクラスメイトのチヌ、チカ、凛花のクラスメイトのアカメとカスミがいた。

皆、手に買い物袋を携えている。


「こんなところで買い食いとは、行儀が悪いですね」

「まあいいじゃないかチヌ。予定の物はちゃんと買ってんだから」


目じりが下がっており、丸い顔をしたおっとりとした見た目のチヌ。その優しく上がった口角から発せられた忠告を、ヤマメはなだめる。

それと同時に正也は、真司の言葉の証明をするように、手に持っていた袋を掲げた。

何も言わないのは、口にアイスを含んでいるためだ。


「何か話してた?」


凛花が雑談として正也に話しかけた。


「・・・ああ、うん。宗司ツエーなーって話」

「ああ、確かに。なんか、私、何してたんだろって思う、、、」

「―――そんな思い詰めなくてもいいでしょ」


話題選びに失敗し、正也と凛花の空気が重くなったが、チカが話に加わることで、解消されていく。


「でも」

「別に強くなくたって、あんたらはそのうち元の世界に帰れんだろ。気にすることナイナイ」


そう言ってチカは右手を顔の前で横に振る。しかし、二人の顔は晴れない。


「けど、他の人が私たちのために動いてくれてるのに、私たちが何もしないっていうのも、、、」

「後、俺の場合は単純に強くなりたいってのがある」

「ふーん」


凛花が他者を慮り、正也は男の子らしい野望を口にするが、それらをチカは気に留めない。

しかし、このぶっきらぼうな、なにも気にしていない態度は、二人の落ち込んだ気持ちを、多少は楽にした。

と、ここでチカから驚きの事実が伝えられる。


「ま、前提として、宗司も凛花たちもそこまで力の差はないけどね」

「「え?」」

「チヌの言うとおり、総量、出力ともに、基本的に差はない」


話を横で聞いていた宗司も、チカの話に賛同した。


「私はチカ」

「呼びました?」

「ああ、すまん。間違えた」


チカは自分の名前を訂正し、チヌは雑談を中断して宗司を振り返る。宗司はまだクラスメイト全員の顔と名前が覚えられていないらしい。覚える気が、あまりないのかもしれない。

宗司が謝ると、チヌはヤマメとの雑談に戻った。これからやる宴のことや、学校のこと、その他について話している。

ヒラマサは、さっきまで棒アイスを食べていたはずが、カップアイスを黙々と食べている。


「いや、そんなわけないでしょ。俺あの試合みて何にもわかんなかったよ?」

「私も、たぶん戦ったら一瞬で殺されてた」


正也と凛花が先ほどの話を否定する。しかしその返答を、宗司とチカが否定する。


「それは情報の差だ。俺は奴の固有回路を知っていたし、エルフや精霊の特徴も知っていた。そんだけ」

「そうそう。寧ろ精細さや洗練さで言えば、あんたらのほうがいい。宗司は雑」

「フンッ」


痛いところをつかれて、宗司はすねた。


「そう、かな?」


正也は自分の腕を見回し、嬉しそうに返答する。


「ああ、あんたらクソ真面目だろ。寝る前とが風呂上りとかに、学校でやった精錬、トレーニングやってんだろ?」


自分たちの習慣を言い当てられて、二人は若干驚くが、それよりも努力を認められた気がして、うれしさが勝り、無意識に胸を張った。


「まあ実際、こいつらは知識がなかっただけで普通教科のほうも標準レベルになってるしな」


勉強を教えるついでに、凛花、正也の成績について情報を得ていた宗司は、二人の実力を評価していた。


「テメエは変則的なんだよ。そんな雑なのに美味いぐわいに運用できてるから、どうダメなのかも教えづれえ。ある意味一番たちわりい」


上から語る宗司に、チカは容赦ない評価を下す。そんな評価を下された責任を、宗司は他者に擦り付ける。


「・・・コバンのせいだな」

「ついたね」


意図的ではないが、宗司の独り言にかぶせる形でヒラマサが自分たち一行が目的地にたどり着いたことを通知した。


「もう皆来てるか?」


ヤマメがそんなことを言いながら門口を通り、皆も後に続く。インターホンをならせば、出迎えに来たのは家主であるツチフキだった。


「いらっしゃ~い。上がって上がって」


玄関には個性の出る靴どもが、性格の出る並べ方で配置してあり、ここに新たに7足の靴が追加される。


「こっちこっち」


外見とは似合わぬ広さを持った家を、家主の案内で歩き回り、彼の私室にたどり着く。

やはり外からは想像できない広さを誇っており、多くのクラスメイト達が、すでに宴を始めていた。


「はあ?!なんだそれ!?反則!反則!」

「いやこれ運だし、コトヒキじゃあるまいし」

「・・・」「・・・」

「どお?テトラ?コトヒキ強い?」

「・・・」

「無視はカナシーヨー(泣)」

「お!おかえり」

「ツチフキお帰り~。ねえこの本の続きどこ~」

「どうだったかな。それ途中から画面に変えちゃったんだよね」

「え~」

「あ、サヨリごめん、それ僕が読んでる」

「ラッキー、じゃあチョウハン、読み終わったら貸して~」


ずいぶんにぎわっていた。

正也たちは荷物を中央のテーブルの近くに下ろすとまたワイワイと人が集まってきた。


「よし。じゃ、ちゃっちゃか作ってくるわ」


そう言ってタカベは小麦粉の類を持って部屋の外へ出た。台所へ行って、仕込みをするらしい。


「じゃあその間に、シロワニ!焼きそば作って」


チョウハンがシロワニに催促するが、シロワニは不満げだ。


「え、なんで俺?」

「お前料理うまいじゃん」

「いやそうでもないぞ?」

「そういうのいいからさっさと作れ」


あまり乗り気でないシロワニに、ハッカクが有無を言わさずといった雰囲気でやらせる。


「・・・わかったよ。文句言うなよ!」

「お!シロワニの焼きそばか。楽しみだ」


自分の腕に自信無さげなシロワニだったが、周りには彼の料理は好評だ。

トウジン、カワヒラ、真司は待ちきれず、シロワニの料理の様子をじっと見ている。

カラスがシロワニの隣でサポートをしている。


「負けました」

「勝った」


そんな料理の最中に、コトヒキとテトラの王盤が終了した。

王盤とは日本で言う将棋のようなものを指す。が、ルールはかなり複雑だ。初期配置が決まっている駒と決まっていない駒があり、先手と後手なのは変わらないが、条件を満たすと、条件に当てはまっている駒を、自分の番のすぐ後に動かすことができる。将棋とターン制スマホゲームを組み合わせたようなものだ。ちなみに発売されたのは20年ほど前。


「やったー!」

「カーッ、マジか」

「よっしゃっ、よくやった」


当事者がひどく冷静なのに対し、一部のクラスメイトが盛り上がっている。


「何回目だよ!もう素寒貧だよ!」

「お前賭け事向いてないって。諦めて奢れ」


どちらが勝つか賭けていたらしい。タカサゴがアミキリを慰め、オイカワがコトヒキを抱きしめ、歓喜のあまりゆすっている。コトヒキは若干鬱陶しそうだ。


「いいのか、あれ」


そんな狂喜乱舞の絵図を見て、正也が真司に尋ねる。


「ま、いいんじゃない?奢る程度の賭けだし。・・・止めたって聞かないし」

「ハハッ」


真司の諦めたような声に、正也はただ笑うしかなかった。


「ほい、ただいま」


そうこうしているうちにタカベが戻ってきた。具材と、タコ焼き器を持って。


「なんだよ、言えば迎えに行ったのに」


手にいっぱいの荷物を持って帰ってきたタカベに、シラウオは水臭いとばかりにタカベの荷物を減らす。


「あ、そうすりゃよかったな」


タカベの頭からは完全に抜けていたらしい。『画面』操作程度ならば、もう指を使わずともできるということを。というかそもそも、指を使ったって汚れはしない。


「ま、いいか、焼くか」


タカベはタコ焼き器をコンセントへつなぎ、材料を投入する。


「俺好きな焼き方あるから、自分で焼く」


そこへ宗司が横から入ってきて材料を要求した。


「わかった。はい」

「俺タコ嫌いだから、ウインナーよこせ」

「これ、そういうこと?」


タカベは宗司に生地と、タコの代わりにウインナーを渡した。ウインナーはまだ切れていない。


「お、腸詰。おいしそうだねぇ。ボクにも分けてほしいなぁ」


ウインナー焼きを作ろうとした宗司に横からツチフキが顔を出す。


「ん?腸詰?」

「ん?何かおかしなこと言ったかな?」

「いや、ウインナーじゃないのか?」

「うん、だから腸詰」

「・・・翻訳機能はまだよくわからないな」

(ハンバーグはそのままだったのに)


まだまだ世界には未知のものがある、こんな身近に。元の世界でも、そうだったのだろうか。宗司はこちらに来てから、元の世界に早々に見切りをつけ、付かず離れずで過ごしたことを後悔することが多くなった。

こんな素朴なことからも思うことになるとは、宗司も思わなかったが。


「あ、台所ありがと。使いやすかったわ」

「ボクが作ったわけじゃないけどね。こっちこそ野菜ありがとうね」

「焼きそば出来だぞ」

「・・・」


カラスが真っ先に紙皿を持ってスタンバった。読んだ瞬間に、音もなく真横から皿を差し出されたもので、シロワニは肝を冷やした。


「「「うめ~!!」」」

「「「うっマ」」」


シロワニの秋そばを食べた面々は、感激の声をあげながらバカ騒ぎを始めた。

特に騒いでいるのはカジキとカジカ、そしてアミキリだった。


「代わるよ。お前も食べな」

「オウ、頼むわ」


そんな彼らとは対極的に、カラスとシロワニはお互いの役割を交換した。カラスは野菜と麵を炒め、シロワニは自分で作った焼きそばを頬張る。


「そっちのタコ焼きはどうだ?」


先ほどまで焼きそばでワイワイしていたカワヒラが、今度はタコ焼きに興味を示した。


「そんなすぐに焼けねえよ。オイカワー」

「どしたー?」


焼きそばを食べながら、オイカワがタカベの近くに歩み寄る。


「暇?」

「ひまひま~」

「これあとぶっちゃけ焼くだけだからさ、お前の固有回路でいい感じにしてくんね?」

「おけおけー。波!」


二つ返事で了承した後、オイカワはすぐに焼きそばを胃袋に収め、勢いのある掛け声とともにタコ焼きに手をかざした。

その姿は圧巻のものだったが、それ以降はただのギャルがタコ焼きに手をかざすだけという、シュールかつ退屈な絵面が続くだけだ。

が、オイカワの固有回路『電磁波』により、遠赤外線を当てられたタコ焼きは、通常より速いスピードでおいしく完成する。


「ふ~。地味にキツキツ」

「ありがとな、ほら」


額の汗をぬぐいながら、一仕事終えた顔をしているオイカワに、タカベは傑作を爪楊枝に指して差し出した。


「あーん、、、うっま」


焼きそばのときと同様、幸せそうな顔をしながら噛み締めている。


「うし、タコ焼きもできたぞ」


その表情を見たタカベは、タコ焼きの出来を判断して皆にふるまった。

宗司はオイカワに頼らず、地道に見極めをしている。


「いやぁ、楽しいねぇ」


タコ焼きを食べ、友達と遊び、時に賭け、時に語る、この部屋の藹々とした雰囲気を感じ、ツチフキは不意に言葉を漏らす。


「少しうるさいがな」

「「うおあー!!!」」


宗司の不満を肯定するように、レースゲームを行っている幾人が叫ぶ。


「カイチとか、タカサゴはそういう雰囲気が嫌いみたいだから来なかったけど、ボクは好きだからね。キミは違うのかい?」

「・・・意外と悪くねえ」


宗司はツチフキからの質問に、ウインナー焼きをひっくり返しながら答える。


「上がりー!」

「あ~!」

「これの続き、そっちにある?」

「これ」


真司と正也はカードゲームに興じ、凛花は漫画をあさっている。


「全員じゃないとはいえ、4クラス分集めて、後片付け大変じゃないか?」

「何言ってんの。多少はキミたちにもやってもらうさ。元の場所に戻すとか、ごみをゴミ箱へとかはさ」

「それくらいはするけど、中には素知らぬ顔で帰る奴もいるだろ?」

「そうかな?そう言う人、あまりいないと思うけど」

「・・・こっちではそうだったな」


もしそんなやつがいたら、そいつがどうなるかは、宗司は何度か見聞きしている。それを思い出せば、素知らぬ顔などできようはずもない。宗司はもともとしない性格だが。


「ふう」


先ほどまでゲームをしていた正也が、宗司の近くに来て足を崩して座った。


「美味そうだな、俺にもくれ」


それと同時にアジアキも机に近づき、タコ焼きを要求した。


「ところで、これなんで集まったの?」


休憩中の正也が素朴な疑問を口にした。


「最初エルフの歓迎会かと思ったけど、いつまでたっても来ないし」

「あ?エルフの歓迎会?」


正也の言葉に、理解不能といった様子で返すアジアキ。


「これはタカベが規格外の野菜をもらったからみんなで食べようってなって、それだったら俺の貰った規格外も、とか、じゃあほかの奴も呼んで遊ぶか、ってなったパーティーだろ?」

「それに、エリュー、じゃなかった。フェルナリエルさんは療養中だろ?」


アジアキとタカベがこの集まりの開催経緯とあのエルフの行方を説明した。


「療養?まだ?」

「そうなのか?大丈夫かな」


真司がそれを聞いてタカベのほうに振り返った。ゲーム観戦を中止し、詳しく話を聞こうと机に近づいていく。


「プリッキングと電撃が加減できなかったみたいでな。後遺症は残らねえみたいだが、しばらく安静らしい」

「あんな雑に魔力ぶっ放した後に食らったんだ。そうなるよな」


正也は無言で宗司のほうを見る。宗司は無言で正也から目をそらす。話す気がないというように、ウインナー焼きを頬張る。ウインナーはうまく切れている。


「そっか。・・・ん?なんで知ってるの?」


エリュシアの症状を聞き、ひとまず安心した真司は、タカベがどこからその情報を仕入れたか疑問を抱き、尋ねた。


「そりゃお前、ホームステイ先に果物持っていったからよ。お見舞いお見舞い」

「ほーん」


答えは至極単純だった。実際に見て、聞いた。ただそれだけ。


「ホームステイ先って知り合いなのか?」

「いや別に。ただクラスメイトですって伝えただけ」

「・・・いいのかそれで」


真司とタカベの話に出てきたホームステイ先の安全管理体制に、宗司はぼそっとツッコミを入れた。

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