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史上最強の4匹  作者: カイワレ大根
49/52

49話 よそ者同士の戦闘

勇者一行、真面目に刑務に励む。刑務所はかなり快適だ

弾丸を投げる行為、もともとそれ自体に意味はなかった。

元来自然の中で、何にも頼らず、己が身一つで生き抜くこと。何にも頼らず、孤高であることが、エルフたちの本来の美徳であった。

それが時代が進むにつれて、少々歪んでしまったところもある。

そんなエルフたちにとって、身を守る何かを持つことは恥であった。

しかしどんな種族でも、壁には当たるもの。エルフたちは己の身を守るため、武器を隠し持つようになっていった。そんな武器が見つか多とき、彼らは言った。


『これは私のものではない。あなたに必要だろうからわざわざ持ってきただけ』


これが弾丸を投げる行為の由来だ。

だが、現在この由来を知っているものは少ない。武器も文明の利器も、かなり前からエルフたちは利用している。ただ形式的に、持ち運びやすい弾丸を持ち歩く風習が残っているだけ。決闘の申し込みも風化した風習の一部。


「おい、流石に言いすぎだ」


そんな風化されかけている決闘を申し込まれた宗司は、クラスメイトから先の態度を嗜められていた。


「ああ言うやつははっきり言わないとわかんねえんだよ」

「だからって、言い方があるだろ。なんであんな挑発するような」

「そうすれば、向かうから突っかかってくるだろ?」


宗司の言葉に、皆一瞬驚き、そして溜息を吐いた。


「大体なんで俺だけ言われなきゃいけないんだ」

「向こうにも数人行ってる。お前の行動を責めてるわけじゃない。口が過ぎてたっとことを分かってほしいだけだ。あれじゃお前が悪者だ」

「・・・ハッ」


クラスメイトのカイワリの言葉で、宗司はなぜ今こうして囲まれているのかの理由を理解した。

しかし、宗司は別に、ただムカついたから、事を起こしたわけではない。


「俺がやらなくても、やったろ?」


それが、誰のことを指しているのか、クラスメイト全員が気付き、口を紡ぐ。


「心配ない。うまくやる」


最後にそれだけ言って、宗司はクラスメイトの包囲から抜ける。


「・・・なんであいつ、あんなに自信あるんだ?」


そうつぶやいたのは、真司だった。

宗司と同じく異世界から来たものとして、自分は彼女に勝てる自信はない。それほどまでに、彼女の魔力量は桁違いだ。ただ、体力や魂力は、総量も出力もお粗末だ。

しかしそれを抜きにしたってあり余る。


「何か仕込む気なのか?」


決闘日はその場で決まった。明日の放課後だ。

宗司は頭がいいし、合理的だ。基礎知識量もあろうがこの世界に来て数ヶ月で、ここの学生と遜色ないほど、この世界の理論や常識、知識を蓄えている。わからないことがあれば、彼に相談するときもある。ここの学生がだ。

また、自分の決めたことに従って、効率的に、合理的に動く。彼の目標が何かは分からないが、少なくとも、彼には芯があると真司は考えている。そして、芯がある人間はなんだかんだ強い。


「でも、心配だ」


もちろん、これらはただの真司の妄想。実際とは違う場合もあるだろう。

真司は年上として、純粋に宗司を憂いた。

そんな真司の憂いを無関心に、宗司は頭の中で整理する。


(エルフ。この世界のエルフは基本的に高慢かつ自信家。自分の力、種族に絶対の自信があり、それゆえに、他社を見下す。またその性格上、他の所属と関わることなどほとんどない。いや、逆か。他者との関わりが無いから、あそこまで傲慢になれるのだろう。他者との関わりがあれば、少なくとも表面上は、友好的にするだろう)


これは、宗司の持論だ。経験と知識からくる、宗司の理論だ。


(お互い本気でやれば、十中八九俺が負ける。が、全てのものは、100%の力は出せない。今日の様子を見る限り、フェルナリエルは体力や魂力を疎か、というか、それらに価値を見出していない。それだけで、本来の1/3だ。それでも総量だけ見ればあちらが上。総量だけ見れば。、、、対策しておくか)


宗司は珍しく自分から、ある人物に連絡を取る。


「もしもし」

『珍しいね!君から連絡くれるなんて』


画面の向こうでその人は、嬉しそうな声で話す。


「教えてほしいことがありまして、今暇ですか?」


宗司のその口調に、通話相手は不機嫌そうに、薄い唇を少し尖らす。


『なんかよそよそし~。私きみの彼女なんだよ?』


そう言いながら宗司の彼女、コバンは椅子から立ち上がり、自分のベッドにダイブした。

画面は自動でついていき、その小柄な体が軽くはずむ様子が写される。


『ふぅ』


彼女は仰向けになる。その滑らかな金髪が枕いっぱいに広がる。その様子を見せつけるために彼女は画面を操作して、ベッドの真上に移動させる。その後、徐々に近づけ、遂に顔と肩まわりのみを写す距離になった。


『エルフの子かな?』

「!」


突然の話に、宗司は内心ひどく驚いたが、それを表にはかろうじて出さなかった。


『あ、当たった~』


が、彼女、というか、この国の人には意味がなかった。


「はぁ。・・・ええそうですよ」

『え~、ど~しよっかな~』


彼女は明後日の方向を見ながら微笑む。それだけ見れば、きっと何人もの人が、宗司に嫉妬しただろう。だが彼はそれどころではない。


『教えて♡コバンちゃん♡って言ったら、教えてあげる』

「じゃあ結構です。将軍辺りに教えてもらいます」

『あー!嘘嘘嘘!』


コバンはベッドから跳ね起き、慌てて宗司を止める。


『でも私彼女だからさ、恋人らしく、名前で呼んでほしんだよ、ソウジ』


彼女は髪をかき上げながら、少し真面目な口調でそう言った。


「・・・」


宗司は逡巡し、そして口を開く。


「コバン。おれに教えてくれないか?」


それは元の世界で、宗司が今までの彼女たちに見せていたものだった。


『フフッ、アハハハハハ』


それを見て、コバンは笑った。目が潤むほど。


『ふぅ、それも好きだけどね~。いつか普通に聞きたいね~」

(・・・普通?)


コバンは涙をぬぐいながら願望を口にする。

宗司は不機嫌だ。羞恥と理不尽、その他言い表せないもの色々。普通の意味も分からない。


『じゃ、すぐ行くから、待っててね~』


コバンがそう言うや否や、通信が切れた。

そしてその直後、通知が来た。この寮からの通知だ。今回は、来客を伝えている。


「相変わらず、どうなってんだよ」


宗司が画面を開くとそこには、笑顔で手を振っているコバンの姿があった。

服装も変わっている。より動きやすいものへと。しかも可愛さも兼ね備えている。宗司が気付いたのは、前者についてだけだったが。彼に可愛さがわからないわけではない。まだこっちの流行に乗り切れていないだけだ。


「じゃ、はじめようか!」


部屋に招いたコバンが、嬉々として結界を展開する。これからのことを考えると少し憂鬱だったが、あるに越したことはない。

それは一日中続いた。

翌朝、宗司はいつも通りの時間に起き上がろうとして、できなかった。


「?」


筋肉痛ではない。引っ張られる感覚。

ふとわきを見ると、コバンが彼の腕を抱いて寝ていた。


「フー、スー」

「・・・」


穏やかな寝息を立てているコバンに遠慮せず、宗司は自分の腕を引き抜いた。

そして起き上がり、服を着ていると、今度はコバンが起き上がる。

彼女は宗司を見つけると、嬉しそうに破顔した。


「昨日はすごかったよ♡ワタシの手ほどきをあんなにすぐにマスターして♡的確に突いてくるんだもん♡ワタシじゃなかったら、何もできずに逝っちゃうよ♡」

「寝ぼけてんのか?」


その艶めかしい声色に、宗司は昨晩のことがフラッシュバックして、ひどく不機嫌になる。

宗司はそのまま、洗面所へ消えた。


「アハハ。ゴメンゴメン。でも、ホントだよ?体も見違えるほどになったしね」


コバンは宗司の後を追って洗面所に顔を出す。


「・・・寒くないのか?」


コバンの身なりを見た宗司はつい、そう口に出してしまったが、そう言えば自分で体温調節できることを思い出して愚問だったと後悔した。


「昨日のほてりがまだ残ってるからね~」


が、その後悔も、コバンのふざけた返答により吹き飛ばされた。


「・・・はぁ」


宗司は身支度を整え、学校へ赴いた。

いつも通り、エリュシア以外のクラスメイトが宗司と挨拶し、エリュシアだけが、まるで親の仇かの様な目で睨んでくる。


(単純)


宗司はエリュシアをそう評し、HR、授業に臨んだ。

そして放課後、二人はリングの上にいた。


「・・・」


これは宗司には予想外であった。てっきり、学校側は止めに入るものと思い、学生だけで、適当な空き地、またはゲーム内で行うものと思っていたが。


「ではルールと報酬を確認する」


学校側が積極的に運営するとは。

審判は数学の教授、アイン先生だ。


「相手を行動不能にするか、範囲から追い出したものの勝利とし、フェルナリエルの勝利時はこの条文にサインをすること」


そうして横にいた体力基礎担当、車椅子のオグマ先生が条文を、双方に見えるように掲げる。

そこにはエリュシアが圧倒的に有利かつ宗司の人権がギリギリ残存しているかというような条件がびっしりと書かれていた。これは事前に先生、宗司も確認済みで、ともに了承したものだけを並べたものだ。結果的に元の半分はどになったが、まだ小冊子程度の量がある。


「そして宗司の勝利時は、フェルナリエルは毎日挨拶をすることとする。双方異論はないな」


気だるげな声が、つつがなく進行していく様を、リングの周りにいた全員が見届けている。


「結構」

「ありません」


双方の確認が取れたアイン先生は右腕を高く上げた。


「ではここに、フェルナリエルと宗司の決闘」


凛花、真司、正也の緊張感が高くなっていく。


「はじめ」


合図と同時に、エリュシアの背後から一匹の虎が出現した。全身が黒と青の炎でできており、体高は2メートルはあるだろう。牙が口から出ており、やる気満々で宗司を睨んでいる。


「神獣か」

「シ、シンジュウ?」


近くにいたアジアキの聞きなれない単語に凛花は反応する。


「知らねえか。まず霊ってのがいるんだよ。そいつらは決まった肉体を持たない。ただエネルギーでできてるって共通点がある。精霊は魔力でできていて且つ人に友好的なものをいうんだ。んでその中でんで国単位で恩恵をもたらすやつを特に神獣もしくは聖獣ってんだ」

「死なない程度に、やりなさい」


アジアキの説明が終わると同時に、エリュシアは黒虎に指示する。

すると虎は唸り声をあげながら宗司に突進する。


「宗司!逃げろ!」


正也と凛花が、神獣の威圧感と迫力に圧倒される中、真司だけが、宗司に向かって必死に叫んだ。

―――そして、決闘場入り口に寄り掛かっていたコバンが一言。


「ハハッ、なめすぎ」


場外へふっ飛ばされた。神獣の虎が。

虎はそのまま観客を巻き込んで壁へ、は行かない。寧ろ飛んできた虎を観客が生えでも叩き落すかのように捌いた。

神獣の虎は、観客の足元で横たわる。


「・・・呆けた顔してどうした」

「!、なに?!」


宗司の声に、ただ呆然と神獣の行く末を見ていたエリュシアが我に返る。


「まさかおれが、あの程度に勝てぬのにお前に喧嘩を売ったとでも思っているのか」


霊は実態を持たない。干渉するためには、同じエネルギーを用いる必要がある。

霊は実態を持たない。ゆえに、どんな物理攻撃も透過する。

霊は実態を持たない。そのため、どんな傷でも、エネルギーさえあれば、瞬時に修復する。

けして、蹴りの一発で、場外に吹き飛ばされ、あまつさえ、そのままダウンすることなど、ありえない。

エリュシアが召喚した虎、神獣二グリスは、全身が炎でできている。けして消えぬ炎で、けして癒えぬ火傷を負わせる。

お灸のつもりで、彼女は宗司の右腕を使えなくするつもりだった。

エリュシアの脳裏に、故郷の母の記憶がよみがえる。


『エリュシア。本物を見てきなさい』

「ッ!、、、なるほど。なら少し、本気を出してあげましょう」


次の瞬間、宗司の真上から光の柱が降り注いだ。


「は?」


光の柱は、舞台を貫通し、大地を消滅させ、なお進み続ける。

その衝撃的な光景に、正也はただ唖然とするしかなかった。


「これがエルフの真価。精霊術よ」

「・・・せい」

「・・・れい?」


凛花と正也の問いに答えるように、自慢げにエリュシアは説明を続ける。


「普通は見えない精霊と契約、もしくは盟約を結ぶことで精霊に魔法を行使させる。精霊は大気中の魔力を自由に使えるため、出力に限界はあれど実質無限に魔法を行使できる。また魔法にぞ系が深く、エルフですら解明しきれていない最上位クラスの魔法を予備動作なしで放つこともできるわ。そこに私の異能『貫通』を付与したわ。『貫通』は対象までの障害、妨害、すべて術、物を貫き、確実に対象まで届かせる異能。その異能が付与された魔力を与えることで必中必殺の一撃となる。どんな人間だろうと避ける術すらないわ。確実に消滅よ」

「使い手がよければな」


エルフ、精霊、そして自分が、いかに優秀で、特別なものかを語っていたエリュシア。

しかし、彼女の想定外、意識の外、後方から声と、衝撃が来た。

宙を舞うエリュシアの体は、そのまま光の柱のほうへ転がってゆく。慌てた精霊たちは魔法の行使を中止し、辛うじてエリュシアがたどり着く前に柱は消え去る。

エリュシアの体は舞台の上に残り、右腕だけが、壇上にできた穴に垂れ下がる。


「なぜ、、、ッ!?」


その声、その姿、それは紛れもなく、今しがた消したはずの宗司のもの。

混乱しつつも体勢を立て直さねばと動こうとしたエリュシアは、自分の体が、指一本すら動かせなくなったことに気付く。


「プリッキングだよ。脊髄の特定の場所に的確な衝撃を与えることで全身を麻痺させる。かなり高度の技術で、道具なしだとかなり難しいから、昨日コバンに死ぬほど教えてもらったよ」


昨夜のことを思い出し、宗司は遠い目をする。何度コバンにプリッキングを決められ、遊ばれ、叩きのめされたことか。

エリュシアのピンチに、精霊が自発的に動く。

雷、氷、炎、礫、数多の魔法が宗司に襲い掛かる、が、全て外れる。


「あんたの固有回路が付与されていない単調な魔法なんて、避けるのは簡単だ」


宗司は固有回路を用いて、一瞬でエリュシアの首元を掴む。

すると、精霊たちは魔法の弾幕を止めた。


「そうそう、お前の魔法を回避した方法だけど、これだよ」


そう言って宗司は、伏しているエリュシアの前に自分の左足を見せた。

彼の左足は、無事であることが一目でわかる。なぜなら、靴のつま先が消滅し、素足があらわになっていたからだ。


「はあっ?!」

「わからないか。お前が貫通の対象物として指定したのは、『宗司』だろう。だから俺はあえてつま先だけを魔法に当て、対象物に当たるという条件をパスした。もし対象が、『宗司の脳』みたいな、重要な器官だったら、俺の敗北はほぼ確実だったろうな」

「嘘でしょ?!私の異能を知らないのに、そんな命がけの賭け、正気じゃ―――」

「お前の固有回路なら知っていたさ」


宗司の言葉に、エリュシアは耳を疑った。その驚愕は、魂や力の揺らぎを観察せずとも、眼を見れば明らかだった。


「あんたは生まれつき才能にあふれ、そしてそれを揮っていたらしいからな。情報は先輩から、友人から、十分に入手できたよ。ここまでうまくいったのは、あんたがこれまで単純戦法で勝ち続けられてしまったからだろうな」

「ッ!・・・何してるの!早くこいつを撃ちなさい!」


エリュシアはやけになり、精霊たちに命令する。

精霊たちは命令に従い、宗司に魔法を撃った。

しかしその前に、宗司は魔法陣を展開し、瞬間移動する。


「こんな、魔法陣を展開しなければ満足に魔法を使えないやつに、、、!」

「無駄なあがきだ」


瞬間移動で難を逃れた後、宗司はエリュシアの首筋に電撃を流し、彼女を気絶させ、場外へ放り出した。


「そこまで。勝者、宗司」


気だるげな声が、試合の終了と、勝者の名を告げる。

が、精霊は構わず魔法を放とうとする。

彼らは場外から来た魔法に焼き払われた。


「ふう」


アミキリは精霊が消えたのを見ると安心して手を下ろした。


「殺したのか?」

「表面をあぶった程度では、精霊は死なない。ただ彼名の体を構成する魔力を吹き飛ばした。しばらくはまともな魔法は撃てないよ」


宗司の問いに、アミキリは丁寧に答える。


「・・・怒っているのか?」


宗司は学んだ。アミキリか丁寧な口調で話すときは、たいてい何かに怒っているときだ。


「君の戦い方に少し、フェルナリエルの態度にだいぶね」

「・・・とりあえず、保健室に行ったほうがいいだろ」

「そうじゃな。二人とも来なさい」


待機していたムジカ先生は予備動作なして、二人を保健室へ転移させた。

残った者たちは、今の試合の感想を言いあったり、先生方の後片付けを手伝うことにした。

ただ、凛花、正也、真司は感情が追い付かない。

―――誰も、勝利の喚声をあげない。まるで、こうなることが、当然かのように。

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