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史上最強の4匹  作者: カイワレ大根
36/52

36話 トレーニング 休憩 トレーニング

4人は憔悴していた。先ほどの模擬戦でいやというほど叩きのめされ、焼かれ、実力差を思い知らされた。

当然一回やっただけで4人はギブアップ。すぐに部屋を出た。真司と凛花は座り、正也と宗司はなんとか立って、体を休ませている。


「どうだった?」


そう4人に聞いてきたのはアミキリだった。おそらく分身だろう。


「つ、強すぎです」

「何も、できなかった」


真司と正也がへとへとになりながら感想を述べ、凛花と宗司は治癒術で自分の体を治している。骨折ややけどなどの大きいけがはなかったため、時間をかければ彼らでも治せる。


「でもお前らも戦いの中で魔法使おうとしたり意外と長く戦えたりしてたじゃん」

「気休めはいい」


アミキリの称賛に、宗司は冷たく言い返す。


「で、この後は?」

「そうだな。たぶん今日はもう戦えないだろうから、ちょっと休んだら日課のやつやって、映画鑑賞といこう」


正也の質問に、アミキリは今後の予定を話す。


「日課?」

「筋トレと山登り。あと体力と魔力と魂力のトレーニングだよ」


アミキリの言葉に、凛花は驚く。


「そんな事毎日やってるの?」

「いや、これくらいだったら、みんなやってると思うけど」


凛花たちはそこで改めて思い知る。みんなの強さは、摩訶不思議の力のあるが、一番は地道な努力なのだと。


「っ具体的にどんなことするんだ?」


宗司は歯を少しだけ食いしばり、眉をひそめ、悔しそうな顔を一瞬のぞかせ、納得いってないかのように、具体的な内容をアミキリに追及した。


「ああ、それはね―――」


アミキリから伝えられた内容は、宗司、凛花、真司の想像のはるか上を言った。元の世界の常識で考えて、過酷すぎるメニューだった。


「そ、それ一日で終わるの?」


そのあまりの内容の多さと負荷に、凛花が当然の心配をする。


「2時間くらいで終わるよ」


しかし心配をよそにアミキリはあっけらかんと宣う。4人は信じられないものを見るかのようにアミキリの顔を見た。特に何ら特別なことを言っていない、いや、この世界のこの国の人からしたら特別なことではないので、アミキリの友達と軽い雑談しているときのような顔は正常なことではある。そんな顔をまじまじと見ている4人のほうが異常なのだ。


「そ、そんなに驚くことなの?」


4人の反応をみて、アミキリが怪訝そうに問いかける。


「元の世界じゃ、こんなトレーニングを毎日する人なんてまずいないし。そもそもトレーニングする人自体少ないから」

「俺、最近ようやく腕立てができるようになったくらいなのに」


凛花と真司がそう言って不安がる。自分たちではこのトレーニングはすぐには終わらないどころが、そもそも時間をかけたとしても、やり遂げられない。


「大丈夫だよ」


しかしアミキリは凛花たちの心配笑い飛ばした。


「これは俺のトレーニングだから。お前らはお前らのすればいいよ」

「いや、そもそもしてないっていうか、、、」


アミキリの提案は真司たちには当てはまらない。彼らは普段そう言った基礎トレーニングをしていないからだ。


「ん~、じゃあ、内容ちょっと考えるよ」


アミキリは仕方なしとばかりに、4人のトレーニング内容を考えようとしたが、正也はそれを断る。


「ああ、俺はいいよ」


アミキリを除いた3人は少し驚いて正也のほうを振り返った。


「いや、さっき散々やられたでしょ?やっておいた方がいいって」


トレーニングのあまりのきつさに、逃げようとしていると考えた真司は、先ほどの戦いをあげて正也を思いとどまらせようとしたが、それは杞憂である。


「ああ、いやそうじゃなくて。俺もう自分のやつ持ってるから。わざわざ考えてもらわなくてもいつもやってるやつやるよ」

「そうか」


正也の返答に真司は気まずそうに返答する。


「すごいな。普段からすでにやってるって」


真司がら出たその称賛は、本当に驚いたときに出る、つぶやくような称賛だった。


「俺はマツサカ先輩、、、上級生に教えてもらってるから。教えてもらってあれって言われると苦しいんだけど」


最後のほうの言葉はアミキリのほうを意識しながら言った言葉で、少し声が小さくなっていった。

しかしアミキリは感心したように正也のほうを見ていた。


「なるほど。だから、3人よりちょっと力の総量多いのか」


アミキリの中で合点がいった。上級生に教えてもらうというのはそれなりに合理的な手段だ。年が近く、似たような環境で数年を過ごしてきたため、つまずきやすいところをカバーしやすい。


「じゃあ、正也はそれで。ほかはそうだな。これくらいがいいかな」


そう言ってアミキリが提示したのは、回数、時間ともにアミキリの10分の1以下のものだった。それが、3人にとって、少しきついくらいの内容だった。


「そろそろ休憩も終わりにして、始めようか」


そう言ってアミキリたち5人はトレーニングを開始した。

5人並んでトレーニングをしていると、その差はかなり顕著だった。

凛花、宗司、が同じくらい、真司が一番ペースが遅い。正也は凛花と宗司の2倍くらい、そしてアミキリは正也の10倍以上の運動量だった。


「ハァ、ハァ、ハハッ。おじさんにはきついわ」


一番最後にトレーニングを終わらせた真司が座り込み、両手は背中の後ろの床につけ、天井を仰ぐようにして自虐的につぶやいた。凛花、正也、宗司は疲れてそれに返答することができなかった。宗司は胡坐をかき、息を切らせ、凛花は寝っ転がり、胸が大きく上下している。立っているのはアミキリと正也だけだった。息を切らせているのは、正也も同じだったが、他よりは多少余裕が見える。


「続ければすぐに追いつけるよ。よし、室内のやつ終わったから外行くぞ」


アミキリは真司を励ましたのち魔法で自分たちを瞬間移動させた。

瞬間移動した先で宗司たちの目の前にあったのは大きな山の山道だった。辛うじて山道に見える獣道だ。

いきなりのことで困惑し、凛花はアミキリの尋ねる。


「ここ、どこ?」

「ここは家が持ってる山のふもとだよ。さ、行こう」

「ちょちょちょっと待って」


アミキリの解答にも驚いたが、体力も回復しないうちにすぐに山登りをしようとするアミキリにさらに驚愕し、真司はアミキリを止める。


「も、もうちょっと休憩させて」


ヘロヘロな真司の声を聞いて、アミキリは休憩時間を設けることにした。アミキリと正也はもう何時でも行けそうな様子だった。


「しかし、家見た時も思ったけど、山と言い、アミキリは金持ちなのか?」


正也がアミキリに休憩がてら雑談を始めた。アミキリは正也の質問に首を振って謙遜する。


「そんなんじゃないよ。まあ、不自由ない暮らしはしてるけど、子の山とか家は昔先祖がもらったものだから。俺たちはそれを丁寧に使ってるだけ」

「へぇ~!」


アミキリの話を聞いて、正也はアミキリの先祖のことに興味がわいた。


「やっぱり山管理するのって大変?」


しかし、正也が次の質問をする前に真司が先に質問した。


「まあね。俺はまだ学生だからほとんどやってないけど、親とか船籍の人はたまに山昇って、木、切ったり、山道の手入れしたり、迷子案内したり、山の気を整えたり、曰くが出たら調査したりとかしてるよ」

「山の気?曰く?」


アミキリの話に引っ掛かり、宗司が繰り返す。


「ああ、山っていうかこの星?というか、すべての星はエネルギー持ってるんだよ。でもなんかの拍子にその力が乱れることがあるから、それをできる範囲で整えたり、ほっとくと一か所に集まろうとすることがあるから、そうやって生まれるのが霊や魔獣だし、そうやってできた力の道のことを龍脈とかって呼んでるんだけど、分散していたほうが何かと都合がいいから、そういう手入れをする」


その話を聞いて、宗司はあることに気付き、指摘する。


「力やエネルギーはほっとけばそのうち分散するもんじゃないのか?」

「普通はそうなんだけど、たまりやすい地形とか条件ってのがあるんだよ。世界中の気温は一定じゃないだろ?」


アミキリの説明に、宗司はそういうものかと納得する。


「曰くっていうのはそのまま。何か山でトラブルや妙な噂が立ったときにそれを調べて処理する。それも、山の持ち主の責任だから。さ、そろそろいいだろ」


一通り説明して3人の体調の回復を確認したアミキリは、山登りによる自給力向上のトレーニングを開始するように呼び掛けた。


「俺が先頭で道案内するから、後ろついてきて。きつくなったら言えよ。山の事故は危ないから」


そう言ってアミキリは走り出した。そう、走り出した。

4人は慌ててアミキリの後を追った。しかし5分も走れば当然へばってくる。


「呼吸と体勢を意識して。体育でやったでしょ」


そんな4人にアミキリはペースを落として4人の横で走りながら、アドバイスしてくる。息は当然切れていない。


「体力はまとうんじゃなくてなじませる感じで!そうすれば、筋力や持久力が上がるから」


体力、魔力、魂力は人間、生物が生身で操作できる、操作できる器官を持つ特殊な力。その力の使いようは多岐にわたる。そのうちの一つが、他の力として使うというもの。例えば、筋肉にまとわせて筋力や持久力をあげたり、物体にまとわせ、分子間力を強め、物体をより強固にしたりなどだ。治癒力や持久力も例外ではない。

しかし、ただまとえば効果のある強度や耐性と比べ、持久力や瞬発力などは、向上させるのにコツがいる。この山登りは、それも目的として含まれているのだろうと宗司は考えている。


「もうちょっとで頂上だ。より呼吸と体勢、力を意識して」


延べ1時間強。山頂についたときには4人は当然ヘロヘロだった。

普段鍛えている正也も座り込み、凛花も宗司も気に寄り掛かって休息をとる。真司は寝っ転がっている。みな服が汚れることも、擦り傷が付くことすらも気にしていない。


「お疲れ」


そんな4人を息一つ切らしていないアミキリは労う。


「横で、ハァハァ、ずっと、、、うるさいんだよ・・・」


そんなアミキリに宗司が息も絶え絶えになりながら愚痴を言う。


「あぁごめんごめん。いっぺんに言われてもできないよな」

(この野郎・・・)


アミキリはただ頭の売り素をかいて軽く謝る。その様子に、宗司は若干の殺意を覚える。


「ほかの奴は山登んないでその辺ランニングしてんだよ。でも俺はこれがあるから山登りしてる」


そう言ってアミキリはある方向に目をやった。

4人もそれにつられてそちらを向けば、そこには絶景が広がっていた。


「おお、、、」

「すげぇ」

「・・・」

「きれい」


山の頂上からの景色、青々とした自然とポツンとある村、集落、どこまでも広がる空、遠くの方に海まで見える。鳥も気持ちよさそうに飛んでいる。空気も澄んでいて気分がいい。高いとこから見る遠くの景色はなぜこんなにも素敵なのか。4人は一様に見惚れている。


「あそこ、あんなことにも人住んでんだね」


正也が村のほうを指さして話す。


「ああ、結構いろんなところに住んでるよ。瞬間移動で買い物とかできるから」

「「ああ!」」


正也と真司が納得し、左の手の皿に右こぶしを乗せる。


「ん~?」


そんなやり取りをしている横で宗司は遠くのほうを見て首をひねった。


「どうした?」


宗司が難しい顔をしていることに気付いた真司が宗司のことを気にかける。


「・・・いや、なんでも、、、」

「なんだよ!気になるじゃん!」


特に重大なことではないとして違和感を振り払おうとした宗司に、正也が絡みつく。さっさと答えないとさらにめんどくさくなると考えた宗司は、自身の感じた違和感を口にする。


「いや、こんな高い山に上っているとはいえ、こんな遠くまで見えるものなのか、と」


そう言われて正也たち3人は改めて景色を見るが、言われてみれば?、という感覚で、違和感を覚えるほどではなかった。


「もしかしたら、元いたところとは、星の大きさが違うのかもね」


頭をひねっている3人に、アミキリは自身の考察を語る。


「星の大きさ?」


アミキリは、正也の質問を繰り返す。


「そ、星の大きさ。元の世界で君たちが住んでいたところは、どれくらいの大きさだったの?」

「えっと確か、一周が4万㎞だったと」

「直径約1万2千8百㎞の球体」


凛花が何とか思い出した星の大きさを、宗司が補足して説明する。


「そうなんだ。こことはちょっと違うんだね」

「ここはどれくらいの大きさなの?」


正也がアミキリに質問する。


「わからないんだ」


しかし返ってきた答えは不明瞭なものだ。


「わからない?」

「そ、わからない」


宗司が聞き返しても、答えは変わらない。


「なんで?これだけ発展してるんだから、自分が住んでる星の大きさくら簡単にわかりそうなもんだろ?」


正也が当然の疑問を口にするが、アミキリは首を横に振る。


「違う違う。これだけ発展しても、破界の一部すら明らかになっていないんだ」

「ハカイ?」


初めて聞く言葉に、真司が首をひねる。


「ハカイって何?物を壊すことじゃないよね?」


凛花の疑問に、アミキリは一から説明を始める。


「ここにはね、俺たち普通の生物がすむ生界と未開の地、破界の二つがあるんだ」

「未開の地?解明しにいかないのか?」


アミキリの説明に、真司が疑問を口にする。


「したくてもできないんだよ。今までたくさんの国や個人、探検家、冒険家、勇者、英雄、海賊、盗賊団がそこに行って、帰ってきたのはほんの数人。その数人も、まともに会話ができなくなったり、早死にしたり、別の何かがそいつに化けてたこと持ったな」


アミキリの説明に、正也は息をのむ、他の3人も、黙って話を聞いている。


「化けて出てきたやつは周りに災害を起こしながら死んでった。死因は衰弱死。そんな事件から破界の生物がこっちに来ないのは、単純にここがあいつらにとって薄すぎる環境だからってことが分かった。中には窒息死したやつもいたらしいから」


アミキリの説明はまだ続く。


「それでもその数匹が死に際に起こした災害は多くの死者を出し、向こう数百年は一切の生物がすめないのではといわれるほどあれ、対処に世界中が頭を抱えていたんだ」

「ん?過去形?」


終わりの句に違和感を覚えた宗司はアミキリにそれを指摘した。指摘されたアミキリは、待ってましたとばかりにニヤッと笑った。


「大体100年くらい前かな。不可能と思われていた破界からの生還を成し遂げた人がいたんだ。その人こそ、かの伝説の禍津日(マガツヒ)!」


興奮しながらその名を口にしたアミキリだったが、4人はまるでピンと来てない。


「・・・だれ?」


正也がぼそってそんあ言葉を吐いた。


「ああごめん、この人とその弟子の乾兄弟は英雄として有名だし、いろんな話に出てくるから」


つい興奮してしまったと謝罪し、説明を再開した。


「禍津日はそれまで問題だった破界からの災害を数ヶ月で解決させた後、獣人の国の獣人民共和国、略して獣人国で数年過ごして、乾兄弟を破界で鍛えたんだ。で、乾兄弟は破壊から持ち帰ったもので、その世界をさらに発展させる手助けをしたんだ。例えば万病を治せる薬の材料や、意思と思いやりを持つ人工知能に必要な回路を作るための金属、節足動物のみに有害な油とか」

「えっ、すご、、、」


アミキリの説明に正也が思わず感嘆の声を漏らす。

宗司は一瞬考え、疑問をアミキリにぶつけた。


「それ破界の解明できてるんじゃないの?」


宗司の指摘にアミキリは顔の前で手を振る。


「いやいや、彼らが言うにはそれらを取ってきたのは破界の表層部分らしい。彼らが言うにはさらに奥にはより素晴らしいものをより恐ろしいものと恐ろしい環境が守っているらしい」

「へぇー!」


話を聞き終わった正也は感動し、他の3人も、それなりに興味がわいた。

だが、アミキリはそのあと少し遠くを見て静かに話しだした。


「ただ、乾兄弟たちはこの話をしたことを後悔しているらしい」

「え、なんで?」


アミキリが疑問を投げかけた正也のほうを見る。


「そのせいで今まで以上に多くの人々が破界を赴き、全員帰らぬ人になったから」

「・・・」


その言葉に、正也だけでなく、その場の全員が、声を発せなくなっていた。鳥の声や木々のせせらぎだけが、優雅に響いている。


「さ、そろそろ帰ろうか。また後ろついてきて」

「「「「えっ?!」」」」

「・・・なんだその驚いた顔は」

「いや、瞬間移動とかで帰らないの?」

「なわけあるか。トレーニングだぞ?麓まで走るわ」


真司の提案を無慈悲に切り捨て、先頭を走りだすアミキリ。くだりはくだりで、また別の種類の地獄を4人は見ることになった。

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